作品
Dreams of Christmas~Another story
※打鶏肉の世界観に初代たちも紛れ込んだもの、という前提でお読み下さい。
なお、初代は黒親子宅とは別のところに家を構えております。
「相変わらず、上手そうな料理だな。まさか菓子類までお前が作るとは思わなかったが」
「小さいのがいるから、一つ二つくらいはあってもいいと思ってな。
滅多に作るものでもなし。
……で、何であんたまでここにいるんだ? 呼んだ覚えはないが」
「随分だな。せっかくの祝いの日だから、と手土産に狩って来たばかりの肉まで持参したのに不満か?」
玄冬が、最初の玄冬をちらりと睨みつけているが、相手の方はどこ吹く風と涼しげだ。
やれやれ。どうも玄冬は最初の彼に対して、対抗意識を持ってしまっているな。
この子は人に対して、一線おいてしまいがちなところはあっても、こんな風に敵意のようなものを剥き出しにするのは珍しい。
同じ『玄冬』でも、こくろに対してはそういう部分を持っていないように思うのに。
だが、祝いの日にギスギスした空気は頂けない。
こんな日はとことんまで楽しむべきなのだから。
軽く吐息一つを零すと私は二人の間に割り込んだ。
「あー、はいはい。ストップ、ストップ。そこまでにしておきなさい。
何もせっかくのクリスマスにそんな険悪ムードになることもないだろう。
こういうことは多い人数で祝った方が楽しいわけだし」
「だが」
「……玄冬」
窘めると、少し拗ねたような表情になってしまった玄冬の頭をそっと撫でる。
この子も、今の原因は自分が一方的に突っ掛かっていたからだという自覚はあるらしい。
それ以上私は何も言わなかったが、ばつの悪い表情でぽつりと呟く。
「…………悪かった」
「気にしてない。何か手伝えることはあるか?」
「……そっちにある菓子類の盛り付けを頼む。適度に分けてくれ」
「ああ」
諍いを終結させた玄冬が二人、台所の方に向かう。
今までもそうだが、一度落ち着いてしまえば、玄冬同士通じるところはあるらしく、あれで結構上手くやりとりしているから大丈夫だろう。
そっと安堵の息を吐くと、何時の間にか傍に来ていたこくろが、大変だな、とだけ小さく呟いた。
「んー、まぁ大変と言われるほど、大変でもないけどね」
「お前、少し大きいおれを過保護に育てすぎたんじゃないか?」
あまり否定できる要素を見つけられなかったから、その言葉には苦笑を零すのみだった。
***
「君も妙なところで子どもっぽいよね」
「……悪かったな」
四人で宴を楽しんだ後の深夜。
部屋に戻って、二人でベッドに腰掛けつつそう言ったら、玄冬が少し気落ちしたようにぽつんと零す。
何が、とは言わなかったが、瞬時に何についての話かは察したらしい。
そんなところも可愛く思えて、身体を引き寄せて抱きしめた。
逆らわずにそのまま身を預けてくるあたり、結構落ち込んでいるのかも知れない。
おそらくは、自分でもつい最初の彼に対して、あんな風に接してしまう面があるのを戸惑ってしまっているんだろう。
根はどこまでも優しい子だから、本当は不本意なのに違いない。
「彼が苦手かい?」
「……苦手になりたくはないけど、な。本当はもっと色々話もしてみたいと思う。……ただ」
「うん?」
「お前の話が出ると、どうしても色々意識してしまう。
自分でも……どうしたらいいのか」
「困ったなぁ」
「……すまん」
「ああ、君のことじゃないよ。誤解させてすまない。
困った、というのは私のことだ」
「お前の?」
「ああ」
抱きしめた腕に力を籠めて、玄冬の耳元で囁く。
「君がそうやって、自分でも戸惑うくらいに意識してしまうことが嬉しくて仕方ない。
君が私を想ってくれているのはわかってはいるつもりだけど、それを口にしてくれることはそうあるわけじゃないからな。
だから、その片鱗を覗かせた、熱烈な告白が聞けるのがたまらない」
「……っ!」
そのまま耳を甘噛みすると、腕の中の身体がびくりと震える。
この反応も、彼を意識させてしまうのも、全て自分に起因していると思うと、嬉しくないわけがない。
本当は玄冬と彼の間をもう少し取り持つべきだと思うのに。
「さて、私は君がそんな意識を持ってしまう余地を与えないように、とことんまで慈しむべきか。
それとも、君がまたそんな告白をしてくれるように加減しつつ、抱くべきか。
……ねぇ、どうするべきだと思う、玄冬?」
「……お前に加減が出来るのか?」
私の前髪に伸ばされた玄冬の指が、誘うように踊る。
口調もどことなく誘惑しているように聞こえるのは気のせいだろうか。
「……珍しいね。もしかしてクリスマスプレゼントかい」
「偶には、な。不服か?」
「まさか。君も中々言うようになったものだ」
やれやれ。さっきまでの落ち込みようはどこにいったのか。
この余裕を含んだ口調と言ったら。
まぁ、いいか。
組み敷いて、その余裕を突き崩していくのも悪くない。
夜はこれからだ。楽しませてもらうよ、玄冬。
私が貰うクリスマスプレゼントは君の全てなのだから。
2006/12/26 up
先にあげていたDreams of Christmasの別バージョン。
2006年クリスマス話その2。
二代目玄冬が初代玄冬に向ける嫉妬の図が、何とも楽しくてですね!w
この打鶏肉家族&初代玄冬の組み合わせは機会あれば、また書きたい話です。
- 2008/02/01 (金) 00:01
- 番外編