作品
W玄冬
「大きいおれ、これはこんな切り方でいいか?」
「ああ、それで大丈夫だ」
玄冬とこくろが二人並んで台所に立つというのは妙な気分だが、微笑ましくもある。
玄冬が小さかった頃に毎回外食するくらいなら、俺が料理を覚えて作る、といったのは幾つくらいの頃だっただろうか。
あれを思うと懐かしい。
「玄冬、こくろ。今日の夕食は何だい?」
「「野菜炒め」」
「……っ!」
二人で綺麗にハモった言葉に身体がつい硬直する。
そういえば、この匂いは確かに。
今のうちに逃げようと席を立ちかけたところで、いつのまにか傍に来ていた玄冬にがしっと押えられる。
「……な、何かね、玄冬……?」
「逃げようとしてもそうはいくか。今日こそしっかり食わせてやる。
こくろ。黒鷹は俺が押えておくから食わせろ」
「ああ」
「なっ! ちょ……ちょっと! 二人とも待ちなさい!
二人がかりだなんて、卑怯だとは思わないのかね!?」
「「思わない」」
二人の笑顔が悪魔の微笑みに見えた瞬間だった。
ああ、私は育て方を間違ったのかも知れない……。
2005/10/13 up
一日一黒玄でやっていたものから。
花帰葬+Pで10のお題配布所(閉鎖)が配布されていた花帰葬+Pで10のお題よりNo8。
少なくとも食事については、勢力がほぼ二対一なので黒鷹の分は悪いw
- 2013/09/14 (土) 00:01
- 番外編