作品
執着
「いい……加減に離せ……っ」
「出来ない」
「…………っ……!」
椅子に玄冬を縛り付けて、身動きが取れないようにし、既に3回精を放ったものに、また口付ける。
開放させては、追い詰める。
その繰り返し。
強く漂う生々しい匂いに焦がれ、執着している私。
その癖、興奮しているかといえば、寧ろ冷静だ。
「……本気で抵抗すればいい」
「…………っ……あ…………!」
「私だって、傷の治りは常人よりずっと早い。
傷つけることを恐れずに抵抗してみればいいじゃないか」
わかっている。
この子は自分以外のものを傷つけることを極端に嫌う。
まして、私が相手だ。やれるはずがない。
抵抗の出来る子なら最初からこんなことなどしない。
再び熱を持ち始めたそれに舌を這わせながら、行為に至る前のやり取りを思い出す。
***
「どうしても、俺は自分では死ねないのか」
「出来ないよ。例外はない。
君は『救世主』以外によっては死ぬことはできない」
「……そうか」
「玄冬」
「……自分で死ねるのなら、あいつに辛い思いをさせることもないだろうにな」
***
よくも言う。
その言葉を私がどう感じるか。
そんなところを君は見えてはいない。
いや、無意識に見えないように閉ざしているのか。
幾度も抱いて、愛した。
触れられる場所で知らないところなどどこにもない。
縋る腕も立てられる爪も汗ばむ肌も全て愛しい。
私本人でなく、快楽に対してだって構わない。
それが生きる執着に繋がってはくれないだろうかと。
人は一人で生きられない。
誰かと繋がりあって生きる。
『玄冬』だから、何だというのだろう。
君だって、『人』であることに違いはないのに。
***
「……なのに、あんなことを言うんだからね」
「…………ひ……あ!」
自ら『人』であることを放棄するように。
こんなに愛しいのに。
死なせたくなんてないのに。
中に残っている精液を啜り上げるように、強く吸う。
零れる声に生きている証を見出せた気がして笑った。
ねぇ、玄冬。
どうか、執着を。
何か一つで構わないから。
ほんの僅かでいい。
生きたいと思ってくれないか。
2005/06/15 up
昔、ここで配布していた「黒鷹好きさんへの10のお題」からNo5。
黒鷹視点。このお題でエロやるならこれしかないと思った覚えがw
- 2013/09/09 (月) 18:59
- 黒玄