作品
KISS
「…………っ……まで、そう……してる……っ?」
「さぁ?」
「く……うっ……!」
低く篭った響きは意地悪く、そんな返答を返す。
もう、どれだけの時間そうされてるだろう。
黒鷹はただひたすら玄冬の身体にキスをしていた。
他に何をするでもなく。
心地よくないのではない。
ただ、甘過ぎる刺激は玄冬からすれば物足りなくて、自然と言葉に熱が宿る。
動きを留めようとした腕は、とうに揃えて抑えつけられていて、ただ、黒鷹のもたらすもどかしい快感に身体を震わせているだけ。
「……っ……あ!」
雫を零し始めた玄冬自身の先端に、黒鷹の唇が触れる。
が、触れるだけですぐにその唇が他の場所へと移動する。
焦らされる刺激に意図せず、腰が蠢く。
「……く……ろ……っ……!」
「どうしたね? 物足りないかい?」
「く……」
見透かすような視線に玄冬の顔が紅に染まる。
きっとわかっているはずなのに。
今の玄冬が何を欲しているのか。
それでも黒鷹は望む刺激を与えてくれない。
半ば、意地もあっただろう。
それでもしばらくは、弱い刺激に堪えていたが……唇が入り口を掠めたところで結局玄冬が折れた。
「く……あっ…………! たの……む……から……っ……そうじゃ、なく……て」
「ん? どうしたいんだい?」
「足りな……から……っ……もっと……っ……強く……!」
「……やっと言ったね」
「ひっ……!」
唐突にいきり立った玄冬のモノが、暖かい粘膜に包まれる。
黒鷹の舌が裏筋を這っていく感触に急速に追いつめられて、ひどくあっけないほどに口の中で出した。
「あ…………く……!?」
「……まだ……イケるね?」
「……っ……少し……っ休ませ……!」
「できない」
「ふ……っ……」
うつ伏せにされて、軽く入り口をほぐしてから、黒鷹が玄冬の中に一気に楔を埋めこむ。
そして、背中を抱いて、また肩のあたりにキスを繰り返す。
「……お前……どうした……」
「……何のことだい?」
「少し……おかし……っ!」
「気のせいだろう」
「……ちが……う……絶対……ちが……!!」
否定の声はいきなり激しくなった抽挿に抑えられる。
とうに知り尽くされた弱いところばかりを突かれて、玄冬に余裕がなくなった。
「黒……鷹……っ……黒……た……! ああっ……く……!」
存在を求めて、名を呼ぶ声に黒鷹は律動で返す。
「……! っ……」
再び、快楽の高みへと連れていかれて、達した瞬間。
そのまま玄冬は気を失った。
***
「我ながら……大人気なかったとは思うんだけどね」
気を失ったままの玄冬の髪を撫でながら、黒鷹が苦笑いの表情で呟く。
「本当はね、君を誰にも触れさせたくないのだと言ったら、君はどうするね?」
桜色の髪を眼をした少年を黒鷹は思い浮かべる。
最初は警戒していた。
目を離した隙に玄冬を殺すのではないかと。
今は別の意味で警戒している。
「内緒話をされたくらいで、こうも腹立たしいとはね。
……自分でも意外だよ」
昼間、花白が玄冬に耳打ちして、言葉を呟いた様子を思い出して、黒鷹が忍び笑いを漏らした。
「やはり、あの子どもと私は気が合いそうにないね」
閉ざされた玄冬の瞼に口付けを落とす。
「子離れできないというのかね、これも」
続いて髪に、鼻に、頬に、唇に。
優しく口付けしていく。
キスは愛情の証。そして契約。
「私は君の鳥だから。……ね」
だから、何度でも。全身に。
2004/06/13 up
「惑楽」(お題配布終了)で配布されていた
「萌えフレーズ100題」よりNo85。
三人称より一人称の方が自分的には書きやすいと自覚したので、以降はほぼ一人称の形式が多いです。
色々不満があったので、結局この話は黒玄祭に出展した際に、黒鷹視点にしてやり直しました。
(愛のままに、我侭にがそれです)
- 2013/10/07 (月) 02:09
- 黒玄
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