作品
10.「私だけが溺れているのかね?」
「……黒鷹。黒鷹」
「ん……」
「起きろ。……そろそろ時間だ」
「……ああ、もうそんな頃合いか」
窓の外を伺うと空が明るみ始めている。
帰らなければならない。
身体を起こすと、玄冬が身支度を手伝ってくれる。
それが嬉しくもあり、寂しくもある。
今宵の夢の時間の終りを告げることを表すから。
「私だけが溺れているのかね?」
「……黒鷹?」
「君はいつでもしっかりこの時間になると起きるから。
ついうっかり寝過ごすこともない。
私ではそんなに夢中にさせてやれないのかと、ね」
「……っ! 仕方、ない……だろう」
私の背に玄冬が頭を押し付ける。
「……帰らせずに済むなら……どれほど」
「玄冬」
微かに伝わる震え。
わかっているはずなのに、私とて。
どうにも今宵は意地をはってしまっていたようだな。
泣かせるつもりはなかったのに。
「すまない。言い過ぎた」
「…………帰るなって、言いたいんだからな」
「ああ」
身体の向きを変え、玄冬と向かい合わせになる。
口付けを交わして、身体を抱き寄せた。
「なぁ……次は……その、いつ、来て……くれる?」
「近いうちに。今日の埋め合わせをするよ。
今宵は少し私もどうかしていた」
額に口付けを落とすとようやく玄冬が笑う。
後ろ髪を引かれる思いで、玄冬から離れ、立ち上がった。
「じゃあ。また」
「ああ。……待っているから」
鳥の鳴く声を聞きながら、座敷を後にした。
今度はいつ会いに来よう?
- 2008/01/01 (火) 00:10
- エロセリフ10題part2
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