作品
六花~second ver.
「わ……! すごい! 真っ白だ! 綺麗ー」
一度くらいは外に出て見てもいいか、と。
気まぐれを起こし、玄冬を背負って外に出て見た。
初めて外に出た所為か、それとも雪の所為か。
随分と弾んだ声を出す。
「気に入ったかい?」
「うん! お外ってこんな風になってるんだね」
「今日はクリスマスだからね。特別だよ」
別に異国の宗教ごとに興味があったわけではないけれど、言い訳にするには丁度いい。
「? クリスマス?」
「特別な日、ということだよ。ああ、そうだ。
一つだけ願い事を聞いてあげよう」
「……願い事? …………うーん、あ!」
「何かあるかい?」
「ずっと黒鷹と一緒にいたい!
で、来年の『クリスマス』もここに来て一緒に雪を見るの!」
――ずっと一緒にいたい。
……そう言ったのは、何時かの私だったか、玄冬だったか。
微かな動揺を押し殺して、優しい声で返事をする。
「……そんなことでいいのかい?」
――だから、これでいい。これで生まれてくる都度にお前と一緒にいられる。
多くは望まない、と。
望んでくれれば良かったのに。生きたいと。
そうしたら。
私は君の願いをなんとしても聞いてあげたのに。
「うん!」
「そうか」
「……だめ?」
残念そうな声に苦笑する。
そんなことは我侭を言ううちにも入らないのに。
「いいや。じゃあ来年もここに来よう」
「うん! ありがとう、黒鷹!」
無邪気な声にちくりと胸が痛む。
すまないね、叶えてはやれないんだ。
そんな些細な望みさえ。
きっと来年の今頃、君はもういないから。
だから、今はせめて。
温もりを感じながら、共に雪を眺めよう。
白い無垢な君の心のような、この雪を。
――何度生まれてきても。お前は愛してくれるだろう?
狡いね。……だけど、その通りだよ。
何度生まれてきても、愛している。
たった一人の私の子。
だから、君の願いを叶えるよ。
滅びの来ない世界を。人々が雪を厭わぬように。
全てに優しい君が、本当は雪さえ好きだったのを知っているから。
――だから、頼む。黒鷹。
青灰色の優しい色をした空の下で、何時かの君を思い出しながら、二人で雪の降りしきる中、静かにそれを眺めていた。
2005/01/30 up
雪花亭で配布されている
「花帰葬好きさんに22のお題」よりNo2でした。
元々、そのお題で書いていたのを個人誌で使う為に撤去後、改めて書いたものです。
個人誌に利用した方はfirst ver.になります。
春告げの鳥EDベースの切ないクリスマスネタ。
全然違う話を書いたつもりが、根本的なテーマが一緒だからか、読み返したら、あまり違う印象にならなかった\(^o^)/
- 2008/01/01 (火) 00:07
- 黒玄