作品
壊すために作り上げる
いつも同じ育て方では飽きる。
冷たくなる身体を抱くのもウンザリだ。
ねぇ、同じ魂でも育て方を変えてみたら。
君は終焉の道を歩んでくれるだろうか?
***
「残酷なことをしていた自覚はある」
「あっても自分を通したよね、君は」
「……お前相手じゃなければ通さなかった」
「……知ってるよ。だからずっと望みを叶えてきたんだけどね」
玄冬の眼鏡を外して、涙の跡を舌で辿って拭う。
「些か、私も飽きたんだ。
まさか君にかつての記憶が戻ると思わなかったけどね」
皮肉としか言いようがない。
救世主と相対し、救世主が息絶えたその瞬間にこの子は思い出した。
殺し続けてくれ、と私に願った自分を。
「黒鷹」
「うん?」
「……今の俺は何人目だ」
「覚えていないね。……二桁で終わらないのは確かかな」
「そう、か」
溜息をついて、玄冬が私の肩に頭を乗せる。
腕を回して背を抱くと微かに嗚咽が聞こえた。
「こんな風にした私を許せないかい?」
「……俺にそんな資格はない」
「資格は関係ないよ。ただ許せるか、許せないかを聞いているんだ」
「…………許せない」
私の背にも玄冬の腕が回った。
「でも、俺にはお前しかいない……っ」
「……私にも君しかいないよ」
白梟ももういない。
主がここに戻ってくることもない。
お互いだけが全て。
髪を撫でてやるとやがて落ち着いたのか、嗚咽は止んだ。
「行くかい?」
「……ああ」
それ以上はもう何も言わなかった。
二人とも。
許すも許さないも。
だって、もうお互いの他には何一つ残されていないのだから。
……ねぇ、玄冬。
2006/01/01 up
花々(閉鎖) が配布されていた「気狂い10題」、No9より。
こういうお題を選択している時点で春告げ話書きますって言ってるようなものでしたね、考えてみれば(今更)
世界を壊すために魔王で育てるパターン。
どうも最初に書いた魔王話LA VIE EN ROSEが春告げ話の延長だったせいか、魔王というと初代よりも春告げでの育て方変えました、パターンが出て来る私。
- 2013/09/13 (金) 08:49
- 黒玄