作品
黒鷹の一日
黒鷹の部屋の本棚を少しずらして掃除をしていたら、ぶつかった拍子に中からノートのようなものが床に落ちた。
「……何だ? これ」
見慣れない表紙につい首を傾げる。
割としょっちゅう黒鷹の本棚から何か本を漁って読んでいるが、こんなものは今まで一度も見たことがない。
パラリと捲ってみると、目に飛び込んできたのは、よく知っている黒鷹の筆跡と、例の上手いのか下手なのかよくわからない絵。
日記の類なら勝手に見るのはまずい、と頭の片隅で理解をしていても、つい視線は開いたページを追ってしまっていた。
『×月×日
もう何度、いや何十、何百回繰り返したかわからない言い争いを今日もやった。
あれほど、私は猛禽類なんだから野菜はいらないと言い続けているのに、相変わらずあの子は食卓に野菜を並べてくる。
やれやれ、あの頑固さは一体誰に似てしまったのだろう。
野菜をごっそり貯蔵室から隠してしまいたいところだが、それをした日には肉も同じようにやられるのが目に見えている。
野菜が取れないような気候になってしまえばいいだろうかとも思うが、そうなると玄冬はその辺に生えている雑草を調理するような
暴挙にでるだろう。
きっとあの子には暴挙という自覚はないだろう点が恐ろしい』
食材が得られないのなら、得られる範囲で何とかするのは当然だろうに。
他にはどんなことを、と思い適当に開いたページにまた目を通す。
『×月×日
昨晩、少し激しく愛し合った所為だろう。
あの子は朝、少ししんどそうだった。
軽く一眠りしたらどうだいといっても、そうしたら夜眠れなくなるから、と言って家事をこなしていく。
その癖、夜までもたなくてソファでうとうとしてしまうあたりは可愛いったらない。
何しろキスをしても目が覚め』
そこで理性が持たなくなりそうだったので、素直にノートを閉じて、適当な場所につっこんだ。
予想のつく相手の日記なんてやはり見るものじゃない。
あいつの一日なんて、どうせ大抵わかってるのだから。
日記を見ることの罪悪感より、羞恥心を煽られることがわかっただけでも収穫だろうか?
2005/10/11 up
一日一黒玄でやっていたものから。
花帰葬+Pで10のお題配布所(閉鎖)が配布されていた花帰葬+Pで10のお題よりNo6。
黒鷹の日記に多分玄冬のネタが出ない日はない(笑)
- 2013/09/13 (金) 23:45
- 黒玄