作品
ちいさな渇き
[Kuroto's Side]
スキンシップ不足、とはまず言わないだろう。
日頃、十分に触れてるはずなのに。
他の人達がどうなのかは解らないけど、週に何度も情を交わすのは決して少なくはないはずだ。
それなのに。
時々、飢えた感触になることがある。
触れたくて、感じたくてたまらない。
未だに誘うことには羞恥を覚えるくせに、黒鷹が欲しくてどうしようもなくなることがある。
「……私の部屋に来るかい? 君の部屋?
それとも、このままここで?」
察してくれた黒鷹が指先に触れてくれる手にさえ感じて。
「……ここ……で」
渇きがちいさいうちに、飢えきってしまわないうちにいつも求めるけど。
それが出来なかったらどうなるのだろう。
想像さえ出来ないでいる。
[Kurotaka's Side]
生あるものは必ず何かを求めている。
それは生存していく上での本能にしたがった食欲であったり、睡眠欲であったり。
人の性欲は必ずしも子孫繁栄に繋がるわけではない。
自分の全てを使って、相手の全てを受け止める。
何もかもを捧げられる、たった一人の相手との至高のコミュニケーションなのだと、少なくとも私はそう考えているし、玄冬にもそう教えている。
だからこそ。
稀にこの子から透けて見える、私が欲しいという感情に気付くとたまらなくなる。
普段は望むことなど何もないとでも言うかのように淡々としているのに、私を求めてくれる。
玄冬につられて、渇き、飢えて、自分を抑え込むのに精一杯だ。
「……私の部屋に来るかい? 君の部屋?
それとも、このままここで?」
触れた玄冬の指先は既に熱い。
渇きはさらに増す。
この熱を全身で感じたい。一刻も早く。
「……ここ……で」
躊躇いがちに小さく呟くのは、僅かに残った理性の結果だろう。
それでも、ここで……普段は性的なものを感じさせることのない、日常の生活の場である居間で求めてくるということに、どれほど欲してくれているのかが伝わる。
了解した旨は声に出さずに口付けで返す。
この渇きが満たされるまで、思う存分求めよう。
潤してくれるのは君しかいないのだから。
2005/07/11&2006/10/21 up
一日一黒玄でやったKfir(閉鎖)で配布されていた
「”好きすぎる人”との10題」、No1(玄冬視点)、
そして、黒玄メールマガジン(携帯版)第25回配信分より。
- 2013/09/14 (土) 12:53
- 黒玄