作品
衝動
「さて。あと買いそびれたものは何かなかったか……」
市場で仕入れたものを頭の中で確認しながらそう呟くと、黒鷹が何かを考えこんだ。
「玄冬」
「うん? 何か買い忘れがあったか?」
「いや、そういうことじゃない。
できるなら、今すぐセックスしたいんだけどね」
黒鷹の言葉の内容を理解するのに、たっぷり5秒はかかったと思う。
つい、手から取り落としそうになった荷物を黒鷹が支える。
「危ないなぁ。今日は割れ物も入ってるんだから気をつけないと」
「……っ。お前がいきなりそんなことを言うから!」
「思ったことをそのまま口に出したまでだけどね」
「何でそんな切り替えが入った……?」
ごく普通の日常会話のような口調で話している癖に、目が情欲の炎をちらつかせているのが、視界の片隅でわかるから、まともに顔が見られない。
黒鷹の言葉が頭の中で反芻される。
「……うーん、自分でもちょっとどうかとは思ったけどね」
「…………何だ」
「あそこの子どもが棒状の飴を舐めているのをみて、ついあれこれと想像をだね……」
「わかった。もうそれ以上言わなくていい!」
黒鷹の口を手で塞ぎながら、自分の顔が紅潮していくのがわかる。
……くそ、つい少し前までそんなことは微塵も思ってなかったのに、黒鷹に影響されて、こっちまでやられる。
手袋越しの手のひらにあたる唇の感触さえ、直接感じられないのがもどかしい。
触れられたいという衝動があっさり湧き上がるのが、悔しいというか何というか。
「……家までは待てない、か?」
「ちょっと厳しいかな。君だってそうだろう?」
「誰の……せいだと……」
言いながら、暗黙の了解というやつで二人揃って足が町外れの方に向かう。
……人気のないところを目指して。
「……即物的だな」
「お互いさまだろう」
衝動にしたがってしまうあたりがね、と黒鷹が苦笑した。
……まったく、だ。
2005/09/? up
元は一日一黒玄で書いたもの。
China Love(閉鎖?)で配布されていた、
「微エロ妄想さんに25のお題」、No20より。
自分で書いておいて何ですが、こ れ は 酷 い w
家に帰るくらいの余裕は持てないものなのかwww
- 2013/09/22 (日) 00:46
- 黒玄