作品
腕
「……痺れないか?」
「まぁ、時間が経つと多少は」
「なら、やめればいいだろうに」
「こうするのが好きなんだよ」
腕枕をしていない方の手で黒鷹が俺の髪をそっと撫でた。
抱き合うようになって以降、一緒に眠る夜は黒鷹は俺を抱きしめながら眠るか、こうやって腕枕をしてくれる。
幼い頃に一緒に寝ていた頃には、高くて眠れない、と言っていた腕枕は、いつの間にか自分の頭にほどよく収まるようになっていた。
それでも一晩ずっとしているのは負担だろうに、黒鷹は俺から離れるのを嫌がる。
抱きしめているか、腕枕をしているか。
必ずどこかで眠る時も触れていたがる。
「腕枕でね、君が眠るとなんとなくほっとするんだよ。
ああ、私の腕の中で眠ってくれたなって。
……君が昔、『玄冬』であることを知った直後、中々夜寝付いてくれなかっただろう?
一人でも眠れない、私と一緒でも寝付けない。
そんなことを覚えているからね、一緒にいて負担にならず、眠ってくれていることが嬉しいんだ」
「……黒鷹」
「単に私の自己満足によるものなんだよ。
だから君が気にすることはない。
眠れない、ということもないだろう?」
「…………ん」
そう、暑いと思うときもあるけれど、傍にある体温にほっとするのも確かだ。
二人で睦み合ったあと、大抵先に寝てしまうのは俺。
それでも他に言う言葉に困ってしまって、目を閉じて、もう少し黒鷹に近づいた。
俺も腕を黒鷹の身体に回すと嬉しそうに笑った気配が伝わる。
「……ふふ、おやすみ。玄冬」
「ん……おやすみ」
腕の温かさに意識が溶かされるようにまどろみに包まれた。
2005/09/? up
元は一日一黒玄で書いたもの。
China Love(閉鎖?)で配布されていた、
「微エロ妄想さんに25のお題」、No10より。
- 2013/09/22 (日) 01:00
- 黒玄