作品
指先に送られたキス
「爪くらい自分で切れる」
「まぁ、いいじゃないか。たまにはやらせてくれても」
昔は私が切っていたんだし、と押し切る黒鷹に嫌だというのも、かえって子どもっぽい気がしてそのまま任せる。
何も言わない空間で、爪を切る音だけがやけに甲高く響く。
一通り爪を切って、やすりをかけているところで黒鷹が不意に笑みを浮かべた。
「なんだ?」
「いや。君が小さい時は、指も小さくて切るのに中々大変だったなぁとね。
ふと、懐かしくなったんだよ」
そのまま指先に口付けが落とされる。
「昔はあんなに小さい爪だったのにね」
「……っ」
唇がそのまま指先から手の甲、手首と伝っていく。
ざわざわとくる刺激は弱いけれど、確実に何か湧き上がるものがある。
「どこもかしこも小さかったのに、すっかり大きくなってしまって」
「複雑そうだな」
「君に背を追い越されるとは思わなかったからね」
「ん……」
手首の先からは一気に首筋に。
舌が這う感覚に目を閉じる。
「昔はね、頬や額にキスをするのが好きだったけどね。
……今はどこにキスするのが好きだと思う?」
「……知る、か……っ」
本当は検討なんてついている。
「全部、だよ」
何もかもに口付けたいと言った黒鷹は、もう一度指先に口付けた。
行為の始まりの合図の代わりに。
2005/04/06 up
一日一黒玄でやっていたものから。
恋をした2人のためのお題 -10 for lovers-(閉鎖)が配布されていたnoir 4より。
成人した相手の爪を切るというのは、中々エロティックなシチュエーションだと思うのですがどうでしょう。←聞くな
- 2013/09/25 (水) 00:40
- 黒玄