作品
穏やかな朝
「おい、黒鷹。そろそろ起き…………また、か」
「すー……」
部屋に入った途端に映った光景につい溜息を吐く。
俺と一緒に眠っていない日は、眠くなるぎりぎりまで本を読むことが多いらしく、ソファに横になって、本を枕に眠っていることが多い。
身体の疲れが取れないような眠り方はよせと言っているのに、聞きやしない。
「黒鷹。起きろ。朝だぞ」
「んー……もう……少し」
「ダメだ。せっかくの朝食が冷める」
「……キス」
「あ?」
「おはようの……キス。してくれたら……直ぐにでも…………起きる」
黒鷹が目は開けないままにそんなことを言う。
「……お前な」
「いいじゃないか。減るものでも……ないんだし」
「それは……。……起きろよ、ちゃんと」
「…………ん」
微妙にまだ寝ぼけていそうなのが気にかかったが、言ったんだからと起きなければ、その時は強硬手段にでることに決めて、唇をそっと重ねた。
少しの間の後、頭を上げようとすると、ぐいと頭を押さえつけられる。
「ん……んんっ!」
「つれないじゃないか、触れ合わせるだけで終わらせよう、なんて」
「お前朝から……っ」
「朝だから何…………痛た」
「? 黒鷹?」
顔を顰めて、首筋を押さえて。
……ああ、なるほど。
「寝違えたのか、お前」
「……そう、らしいね……痛」
「起きられるな? 目が覚めたなら朝食だ」
「ええ!? せっかくこれから……!」
「これから、なんだ? ……その状態で何をする気だお前」
「う……」
「だから言ってるだろう。そんな姿勢で寝るのはよせと。
自業自得だな。
とりあえず起きたからには朝食を食え。……先に行くぞ。
朝食後も痛みが引かないようなら、治してやる」
「いいよ、これくらいでそこまでしてくれなくても。
……もう少しだったんだがね」
拗ねたように呟く黒鷹に笑う。
実はこんな朝は嫌いじゃない。
あいつに言ったら、つけあがりそうだから言わないけど、な。
2005/08/27 up
雪花亭で配布されている
「花帰葬好きさんに22のお題」よりNo14。
あれ? 穏や……か?(笑)
いや、まぁ平和ではあるかなw
- 2013/09/27 (金) 00:45
- 黒玄