作品
痛い…?(黒玄前提花玄)
「……っ……」
「あ……痛い……?」
「……いや、大丈夫……だ」
組み敷いた身体が緊張を伝えてくる。
玄冬は腕で顔を覆うようにしているから、表情は見えない。
だけど、どんな顔をしてるか想像がつくような気がした。
やっと触れ合えたのに、繋がったのに。
これ以上ないほど近くにいるはずなのに、何より遠くに感じて。
嬉しいよりも哀しかった。
――黒……鷹。
玄冬と繋がる瞬間、確かに玄冬の唇がトリの名を呼んだ。
……あれから、何年も経っている。
あいつに「ちびっこ」と言われていたけど、
もうきっとトリと大差ないくらいの背丈になった。
――……あの子は私のものだよ。お前はあの夜見ていたんだろう?
確かに見ていた。
玄冬とトリが睦みあっているところを。
甘く名前を呼び合う声も、相手に伸ばされる指も。
知っていた。
玄冬とトリが親子だけの関係では無いことくらい。
だから僕だって何年も待ったんだ。
トリの影が薄くなるまでは。
でも、わかってしまった。
薄くなってなんていなかった。
相変わらずあいつは玄冬の中に強く根ざしているのだと。
……僕のものになってなんていない。
例え今腕の中に抱いてるのが僕だとしても。
「玄冬……」
ねぇ、痛いのは君の身体? 心?
僕ではその痛みを消せないの?
僕では痛みしか君に与えられないの?
ねぇ、玄冬……。
2005/05/30 up
花々(閉鎖) が配布されていた「気狂い10題」から、No2。
書いた本人が珍しいと思った、黒玄前提花玄。
玄冬と花白には家族的な仲良しさで止まっていてほしいタイプだったので、カプ要素でネタ出てくるとは思わなかった。
黒玄な世界の上に成り立っているのは相変わらずなのですが。
つくづく花白に優しくないサイトで申し訳ない。
- 2013/09/30 (月) 00:37
- 黒玄前提他カプ