作品
こっち向いてください(黒玄前提黒鷹←白梟)
いつも、いつも。
あれは微笑んで逝く。
本当に安心したように、嘆きの欠片も見せずにただ微笑って。
「……おやすみ、私の子」
そして、黒鷹も。
その亡骸に口付けて、優しく声を掛けて微笑う。
届かぬだろう声を、慈愛に浸して。
殺される宿命の子ども。
……世界が続いていく為には、あれはいらない存在。
私の役目は救世の子にあれを殺させること。
しかし、黒鷹はそんなあれを殺されないよう護るのが役目だったはず。
玄冬が生きてる間にあんなに可愛がっているくせに。
……どうして笑えるのでしょう。
貴方もあれも。
「……変わりましたね」
「変わらないさ、何も」
「私には……貴方がわかりません」
「貴方はそれでいい」
皮肉を浮かべる口元は確かに変わらず、私の知っている黒鷹。
「あの子はわかっている。
そして、私もあの子をわかっている。
だから、貴方に求めないし、知る必要も無い」
でも、あれを想って一瞬浮かべる微笑の理由を私は知らない。
それとも。
これが壊れたということなのでしょうか。
『救世主』も『玄冬』も存在しない間の長い時、何もわからない。
……あれよりも私の方が長く傍にあるはずなのに。
「貴方は余計なことを真面目に考えすぎるんだよ」
そう笑う。
あれに向ける笑顔とは違うもので笑う。
殺され続けることを望んだ玄冬。
それを『約束』と叶え続ける片翼。
共にいても、心はここに無い。
黒鷹の目はいつもいないあれを見ている。
望んでいるわけではない。
私の望みは主がお帰りになることだから。
けれど、それまで。
せめて僅かな時で構いませんから。
「……鎖、ですね」
「何のことだい?」
「なんでもありません」
こちらを向いてはくださいませんか。
その見えない手を振り払って。
箱庭という鳥篭に囚われてるのは、私でなく貴方なのですよ。
2005/04/15 up
「惑楽」(お題配布終了)で配布されていた
「萌えフレーズ100題」よりNo45。
黒玄前提黒鷹←白梟。
相変わらず、すれ違い街道を突き進むうちの黒白。
- 2013/10/06 (日) 03:05
- 黒玄前提他カプ