作品
手をつないで裁きを待つ
「このまま一緒に眠ってしまえたら、と思うよ」
「……黒鷹」
熱を交わして、肌を合わせて。
手を繋いだままに玄冬の耳元に囁く。
「残酷なことをしているのはわかっている」
「わかってない」
「黒鷹」
「……わかっていないよ、君は……っ」
何度、私がどんな思いで君の躯を抱きしめたか。
拭いきれない喪失感に幾度狂いそうになったか。
「…………眠れるのなら、一緒に眠りたい。
だけど、そうしてしまったら、次の俺はお前に逢えない」
「もしも次の君がいないのだとしたら?
君をもうこの世界に生まれないようにさせる方法があるのだとしたら?」
「黒鷹?」
「……もう一人にしないでくれないか」
繋いだ手に力が籠められた。
***
「……信じられない。アンタ達」
呆れているというよりは、侮蔑の口調にさえ取れる救世主の声はもう遠い。
「信じられない……ってさ」
「……端から……見たら、そう、なんだろうな」
その癖、玄冬の声は酷く近くに聴こえる。
当たり前か。
手を繋いで、抱き合ったままに1本の剣で貫かれている。
玄冬の顔は私の顔の直ぐ傍にあるのだから。
一度口付けを交わしてから、目を閉じる。
きっともう開けられない。
――主よ、聴こえていますか。
――もう、私達を解放させてください。
出来損ないが、という呟きを聞いたのを最後に、意識が遠のいた。
2005/07/29 up
一日一黒玄から。
Kfir(閉鎖) が配布されていた「”好きすぎる人”との10題」、No8。
心中ネタの中では比較的黒玄かな。
しかし、これも剣で一緒に貫かれるオチという。
というか、裁き待ってない(笑)
- 2013/10/15 (火) 00:51
- 黒玄