作品
ぬくもりと抱き癖
「…………う……」
呻くような声が聞こえて、目を覚ます。
私の目の前には玄冬が寝ているが、微かに顔をしかめている。
原因は、恐らく私が玄冬の身体に手足を絡めて眠ってしまっていたからだ。
玄冬に指摘されるまでは気付かなかったのだが、どうもこれは私の癖らしい。
親鳥が雛を温めるかのように、つい懐に抱き入れるようにして眠ってしまう。
玄冬が一緒に眠っている時はよくやってしまうのだ、昔から。
――お前、時々重いし、暑苦しい。
寝る前も五月蝿いから、そろそろ俺は一人で寝る。
そうやって、幼い玄冬に告げられて、別々に眠るようになった時には、些か切ない気分にさせられたものだった。
が、玄冬が成長して、二人で時折行為を交わすようになり、その後一緒に眠りにつくようになってからは、この子は拒まないでいてくれる。
時折それで目を覚ましてしまうこともあるようだけど、文句は言わなくなった。
――眠っている時の癖なら仕方ないだろう。
……嫌というわけでもないし。
そんな風に言われたものだから、どこかで箍が外れたのか。
気付いたら、毎回のように玄冬を抱きしめて眠ってしまっている。
一人で寝た晩など、時々落ち着かなく思う時があるくらいだ。
「……すまない、ね」
玄冬を起こさないように、ごく小さな声で呟く。
でも、玄冬の身体に絡めた手足はそのままにして。
私が再び目を閉じたら、玄冬の手も私の身体に回された。
うんともすんともつかない呟きと一緒に。
そんな様子がたまらなく愛おしい。
相手を抱きしめて眠ってしまうのは、私だけの癖ではなく、君の癖にもなっている。
さて、君がそれに気付くのはいつだろうね、玄冬?
2005/09/18発行
個人誌『Vocalise』より。
- 2013/11/04 (月) 07:25
- 黒玄