花帰葬-Novel Under Ver.

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心の在り処(黒鷹Ver.)

「今日も、なのか?」

玄冬の声には戸惑いが表れている。
当然かも知れない。
ここ数日は抱かない日がない。
求めすぎてしまっている自覚はあるのだが。

「ああ」
「最近、毎日だぞ」
「辛いなら、肌を合わせているだけでもいい。ただ、君に触れていたい」
「いい。大丈夫だから」
「……すまないね」

玄冬は拒まないでいてくれている。
本当はしんどいだろうに。
きっと分かっているんだろう。
私が君を抱かずにいられない衝動に駆られてしまっていることを。
……今の君は古い記憶も持っているものな。
もう、こうやって玄冬が生まれて、その都度殺して、ということを数えきれないほどに繰り返してきたけど、まさか、あの約束を交わした記憶を持って生まれてくるとは予想外だった。
玄冬は混乱していたかも知れないが、私は正直嬉しかった。
何度生まれてきても、君は君でしかないけれど、それでも、その都度得られる記憶は異なるものだ。
別人ではない、でも懐かしい話を交わすことも出来ない。
あの二人目の時に君が記憶を無くしていたときのような感覚を何度も繰り返すのは少し寂しかった。
本当にね。
あの約束を交わしたのが君でなかったなら、とっくの昔に破っていただろうさ。
胸元に忍ばせた指での反応がイマイチだ。
何か考え事でもしてるかな。

「……何を考えているんだい」
「ん、昔のことを思い出していた」

玄冬も同じようなことを思っていたのかね。

「私は変わったかい」
「変わらない」
「成長がないとも取れるね」
「……そういう意味で言ったわけじゃないのくらい、わかるだろう」

ごく僅かに拗ねた口調が含まれたのが可愛い。

「ああ」
「っ……!」

胸の突起を甘噛みすると、玄冬の甘い声が零れる。
本当に可愛いね、君は。

「君も変わらないね。感じる場所は昔と一緒だ」
「当た……り前だ!」
「嬉しいよ」
「ん……!」

下の方に手を伸ばすと、硬くなったモノの先端が濡れていた。
感じてくれている証。

「もう先端が濡れてきている」
「誰の、せいだと……!」
「私だね」
「っあ……っ!」

指で触れていたそれに口付けを落とす。
そのまま唇を滑らせると、玄冬のからだが小刻みに震える。
身体の反応は生まれ変わっても一緒というのも、考えてみれば少し不思議なのかもしれない。
ああ、そういえば。

「『玄冬』は魂だけでなく、身体の方も輪廻の輪を繰り返す」
「……れが、何……っ」

魂に刻まれた情報で、玄冬は常に紫紺の髪と瞳を持って生まれる。
生まれる国は異なっても、その外見の状態に例外はない。
だけど。

「君がこの世界にいない間。
……朽ちる身体はともかく、その魂はどこにあるんだろうね?」
「ふ……!」

舌でその場所を慈しみつつ、指を入り口に忍ばせる。
そっと周囲を解して、熱い内部に入り込む。
急いてはいけないと思うけど、繋がりたくてたまらない。
だが、連日のセックスで敏感になっているのか、玄冬の方も受け入れる体勢は出来てるように窺えた。

「黒……鷹っ!」

名前を呼ぶ声の熱っぽさに、その確信を深める。

「……そろそろいいかい?」

玄冬が涙目で無言で頷いた。
一度キスを交わして、入り口に自分のモノを宛がい、腰を進めた。
先端から徐々に熱に包まれていく。

「っあ……! ん!」
「っく……!」

一気に深いところまで突き上げたからか、背に縋りついた手に力が篭る。
微かに背中に走った痛み。
私だけが知っている、君の癖。

「悪……」
「っ……いい……いいから、もっと抱きつきなさいっ」
「あっ……!」

詫びの言葉を制して、衝動のままに律動を始める。
纏わりつく熱がたまらなく気持ちがいい。

「……玄冬っ」
「……ろ……たっ……!」

最中に名前を呼ばれるのは求められている、というのを強く感じて好きだ。
この子もそれを知っているから、呼んでくれる。
律動を強くすると、玄冬が抱きしめる力も強くなる。
触れている肌と、繋がった部分の熱さに限界が近いのを悟る。
奥に腰を叩きつけるようにすると、中が痙攣して。
その震えに堪えきれず、私も熱を吐きだした。
包んでくれている熱は何とも言えないほどの幸福を呼び起こす。
ただ、それを感じていられる時間はもう長くは無いことを知っている。
そのことが哀しかった。
また、私は世界にこの子を取られてしまうのだ。

***

「さっきの話だけどな」
「……うん?」

玄冬の髪を撫でていたら、不意にこの子が口を開いた。

「俺が死んだ後の魂はどこにあるんだろう……って。
普通の人ならよく霊が、とか言うだろう?」
「そうだね。親しい人の傍にいて守っているとかは聞くかな」

真偽の程はわからないけどね。
失った人を恋しく思うあまり、そう思い込みたいだけなのかも知れない。

「……本当、なんだろうか」
「そういうのは覚えてないのかい?」
「ああ」
「そうか……」
「お前はどう思う?」
「ん? 霊になって、傍にいるとかそういうことかい?」

頷いた玄冬を引き寄せて抱いた。
そうであってくれたなら。

「そうだな、あるかも知れないね。
……いや、あって欲しいというべきかな」

少しはこの子がいない間の寂しさも紛れるかも知れない。
玄冬とこうして二人で過ごしていける時間は何より尊いけれど、その分、この子がいない時間が辛い。
生まれてくるのを待つ時間はあまりに長い。
それでもまた逢えると思うから。
だから何とか焦がれながらも過ごしていける。

「黒鷹」
「うん?」
「……俺なら傍にいるから」
「玄冬」
「魂だけでも傍にいる。そして、生まれてきてもまた傍に。
俺の帰るところはお前の傍しかないから」

優しい言葉が心に染み渡る。
本当にそうであれたならどれだけいいだろうか。
不覚にもほんの少し涙腺が緩みそうになった。

「……嬉しいことを言ってくれる。でもね」
「ん……っ!?」

身体を起こして、玄冬を組み伏せる。
少し戸惑ったような顔が、私を見上げる。

「今の君は生きているのだから。
逝った後の話をするよりはこうして抱いていたいね、私としては」
「まだする気なのか、お前」
「いけないかい?」

きっと照れ隠しもあってのことだと分かっているんだろう。
ほんの少し苦笑を浮かべたけど、結局は応じてくれた。 

「……そんなわけないだろう」

頬に添えられた手は優しかった。

「そう言ってくれると思っていたよ」

残された時間、出来るだけ触れていたいのはきっとお互い一緒だから。
気づいているんだろう、この子は。
もう、さほど今の自分に残された時がないことを。

「ん……」

口付けを交わして、再び肌に触れて。
ぬくもりを感じながら、忘れるまいと思った。
例え、再び生まれてくる玄冬が覚えて無くても、私が君の分まで覚えていよう。
君と過ごした思い出の数々を。

***

「あの時。……魂だけでも私の傍にいるって、言ってくれたね、君は」

生きていた時の体温は失いつつあるのに、膝に抱えた玄冬の頭を撫でてやると、不思議なことに纏わりつく気配が温かくなった。
まるで、抱きしめてくれているかのように。
ああ、本当に君は傍にいてくれているのかな。

「……有り難う」

どこまでも、同じ事の繰り返しだと思っていた。
玄冬が生まれて、私が育てて、救世主に殺される。
だが、時に生じるシステムの歪みはささやかな奇跡を齎してくれたようだ。
触れることも、抱くことも。
会話さえすることが出来なくても、君が傍にいると思うだけで温かい。
大丈夫だ、玄冬。
いつものように寂しくはないよ。

「行こうか」

玄冬の亡骸を抱えて、空間転移をした。
さぁ、どうしようか。
久しぶりに、昔君と暮らしていたあの家で過ごすのも悪くないかもしれないね。
彩の小城も悪くはないが、やはり私たちの家といえばあそこだろう。
思い出に耽り、時折、君の気配を感じて、長いときを待っていよう。
また君が生まれてきて、私の名前を呼んでくれるのを。
生まれてきてるときも、そうでないときも。
ずっと私の傍にいなさい、私の子。

2005/01/16 発行
個人誌『Ad una stella』より。
サイトには今更玄冬Ver.と一緒に初up。
Uさんからの啓発作品です。
春告げの鳥EDで玄冬が生まれていない間の鷹救済的な。
玄冬が世界に居ない間の寂しさを埋められたらというところから。
二人目の玄冬と黒鷹が過ごした家は、黒鷹が結界を張ってひっそり状態を維持している……という脳内設定。

  • 2008/01/01 (火) 00:09
  • 黒玄

タグ:[黒玄][黒鷹][玄冬][春告げの鳥]

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