作品
White Dream
「このままもう一回シよ?」
「……という言葉を、私は……さっきから何度か聞いてるような気が、するんだが」
気の遠くなる時間、というのは比喩でも何でもなく本当のはずだ。
彼が部屋に忍んできたのは深夜。
今は既に夜明けで日が昇りきるまで間もない。
繋がってから、もう彼が何度達したかの記憶はあやふやになっている。
愉悦、快感に浸るというのを通り越して、身体に纏わりついているのはただの脱力感。
指一本といえども動かすのがしんどいくらいだ。
繋がってる場所周辺の感覚はとうに麻痺してしまっている。
視線だけ下腹部に向けると、やはり勃ってはいない。
そんな状態の私に反して、彼の方はといえば、幾度も達したのが嘘のように、私の中で存在を主張し続けてる。
衰える気配さえ見せず。
流石に通常ではありえないはずのその状態に、部屋に訪れた時のことを不意に思い出す。
最初から熱の籠もった視線。
性急とも言えるような行為の進め方。
気だるく霞むような思考の中で、ようやく何かが繋がった。
「……何か薬でも、服んで……いるのかい」
「何だ、今更気付いたの?
うん、こないだ旅の行商人から買った薬使ってるよ。
もっと早くわかってるかと思ってた。
ああ、もしかしてそれどころじゃなかった?」
たやすく種明かしをした紅色の瞳が愉快そうに笑う。
「気休め程度かと思ってたけど、想像以上に効果あったな、これ。すっごい楽しい」
「楽しいのは……君だけだよ。……ろくに……反応しない身体を抱いて……楽しいかい」
途中で、付き合いきれないと突き放したら、じゃあ何もしなくていいよ。と返され。
本当に何もしないのに、飽きもせずに繰り返し貫かれた。
まるで人形を抱いてる心地だろうに。
「うん。だって黒鷹サンがそんな風になってるの俺の所為だから。
……それ考えるとぞくぞくする」
「…………っ!」
ぐちゃりと大きく立てた淫猥な水音と共に突き上げられて、内臓を押し上げられるような衝撃が訪れる。
何度も意識を手離せそうで手離せないのはこの所為だ。
既に快感も苦痛もないのに、内側を埋めた圧迫感だけは妙にある。
耳の奥で繰り返される、肉がぶつかる音と水音も嫌味なほどに意識に残っているのも癪だ。
「うわ、中ぐちゃぐちゃ。凄い滑ってる。
これ抜いたらどろって溢れてきそうじゃない?
中覗いたらピンクじゃなくて、真っ白だったりして」
「……な、わけない……だろう……っ」
「見てみないとわかんないよ?
だってもう潤滑剤どころじゃないくらいの量だ。
ほら、ここに散ってる黒鷹サンの出したものの倍は中で出してるよ。
……もっと悔しそうな顔したらどう?
こんな玩具みたいに扱われてるの不本意デショ?」
「……それこそ、君の……思うツボだろう……。たやすく、見せてなどやらない……よ」
躊躇わず、繕わず。
私が曝け出すのはあの子にだけだ。
「それは残念」
「……く」
激しくなった律動に息が詰まる。
早く終わればいい。
やがて、一際強い衝撃の後に訪れた静寂。
目を閉ざし、眠りの中に引きずり込まれかけた意識の中で低い忍び笑いが聞こえる。
「ね、勝手に流れちゃう分には仕方ないけどさ。後始末しないでね」
「……人の、身体だと思って勝手な……ことを」
「そんなわけないじゃん。黒鷹サンだから言ってるんだよ。……だってさ」
耳元にまだ熱を含んだ吐息がかかったのが伝わって。
「アンタの外側だけ白く染めるのは雪(くろと)でも出来るけど。
中を白く染めるのはあの子には無理デショ?
ホワイトデーは相手を白く染めた後に自分色にする日なんだよ。……知ってた?」
だから、俺の色に染まって。と。
子どものような笑い声に、そんなもの知ったことか、と思う。
無茶な理屈もあったものだ。
結局返事はせずに、溜息だけを一つついて、今度こそ意識を手離した。
2006/03/14前後 upのはず
話のネタからして、多分ホワイトデー前後に書いたはず。
ホワイトデー=白濁まみれになる日です。
でもって、攻が受を白く染めた後に俺色に染まれ!という日で(略)
……ごめんなさい、勿論大嘘でございます。
絶倫救世主とされるがままの鷹の図。
- 2009/01/01 (木) 00:01
- 黒玄前提他カプ