作品
情熱は唯一人に
「ちょ…………待て、黒鷹」
例によって、黒鷹と抱き合おうとして。
脚の間に顔を埋めようとした黒鷹を止めると、不満そうな表情が俺を見上げた。
「何だね?」
「あ……その、今日は俺が…………口でやって、みたいんだが」
「……私に、かい?」
「ああ」
黒鷹はいつもしてくれるけど、俺の方からはしたことがないのに気がついて。
相手を感じさせたいと思うのは、俺だってある。
だから、せめてたまには、と。
少し黒鷹は戸惑っていたようだが、やがて表情を崩すと身体を起こした。
「……いいよ、私が横になればいいかい?」
「ん……」
俺も身体を起こすと、入れ替わりに横になった黒鷹の脚の間に身体を割り込ませた。
目の前に勃ちあがりかけている黒鷹のモノ。
考えてみればこんな間近で
これを見たのは初めてかも知れない。
そっと指で形をなぞってみる。
微かに震えて、固さを増したそれをそ知らぬふりでそのまま口元に運んだ。
感じさせて、やれるだろうか。
「…………っ……」
そっと舌先でつついてから、少しだけ口の中に収める。
口の中では温度は溶けるように馴染んだけど、唇で触れた感じでは熱い。
舌で形を確かめるように動かすと黒鷹の息を呑む音が聞こえた。
黒鷹が俺にしてくれるやり方を頭の中で反芻してみる。
俺が感じる場所と黒鷹の感じる場所は違うかも知れないが、応用は利くはずだ。
唾液を塗りこめるように先端を舌で包んで、軽く吸ってみる。
身体が震えたのは伝わってはきたけど。
声を殺されるようじゃまだ足りない。
それなら、深く咥え込んだらどうなるか。
むせないだろうという程度まで飲み込んで根元の方に舌を這わせた、その時だった。
「…………っ……! ……あぐ……っ!」
堪えきれない、というように立てた声があまりに大きくて吃驚した。
「…………黒……鷹?」
思わず口を離して、顔を上げると……さらに驚いた。
目元を真っ赤にして、口元を手で覆っている黒鷹が気まずそうに目を逸らす。
こんな、黒鷹なんて始めて見た。
「……白状……するよ」
「……え?」
視線を合わせないままに黒鷹がぼそりと呟く。
「……初めて、なんだよ。
相手に口でしたことはあっても、自分がされるのは、これが初めてだ」
「…………本当に……?」
「誤魔化したって仕方ないじゃないか」
これ以上、ボロを出さないうちに言った方がまだましだからね、と照れて言う声にぞくりと自分の中心が熱くなったのがわかった。
他に知らない。誰も。……俺だけが。
「……俺だけが知っている……のか」
「……っ」
鈴口に軽く舌先をめりこませる。
塩気を感じる雫。いや、どことなく甘い気もする。
どちらかはよくわからないけれども。
「……この味も……感触も」
「…………! ……らしくもなく、いやらしい言い方を……するね」
「……嫌ではないだろう?」
だって、さらに張り詰めたのが見るだけでもわかる。
酷く高揚した気分で、再びそれを咥える。
零れた小さな喘ぎが耳に心地よい。
――声が聞きたい。殺すんじゃないよ。
黒鷹がよくそういう気持ちが分かる気がした。
もっと聞きたい。俺で感じてる黒鷹をもっとより深く……!
口の中に広がっていく雫に自分も触れられたくなる欲望を抑えて、黒鷹のモノを舌で慈しむ。
感じて欲しい。
「…………もうっ、君と、いう子は……!」
「んっ……んん……っ!?」
顔を上げさせられ、口を離されて。
身体を引き寄せられて唇を重ねていると、黒鷹の指が後ろの方を探ってくる。
唐突に中に入り込んだ指をつい締め付けると、黒鷹の舌が口の中で嬉しそうに絡みつく。
「……限界だ。達くなら君の中がいいからね…………っ」
「……ふ…………っ……ああ!」
唇を離したと同時に、指が抜かれ、代わりにさっきまで口にしていた黒鷹自身が入ってきた。
さして慣らしていなかったからか、最初こそ少し痛みを覚えたが、黒鷹を覚えている身体はすぐに馴染んでくる。
軽く動きながらも、肌のあちこちに触れられて、いとも容易く身体が疼く。
「…………っ……最後、まで……達かせよ…………と思っ……たのに」
もう、声が擦れてしまう。
さっきまでは黒鷹の方が余裕がなかったはずなのに。
「それは……残念、だったね……っ」
「…………っ……は……!」
黒鷹が身体を起こして、二人で向かいあわせに抱き合う形になる。
ベッドのスプリングを使って、強く突き上げられて、震える腕で黒鷹に縋った。
「……く…………ろた…………か……っ」
「…………達ける……ね?」
「ん……っ」
耳に口付けされたのをきっかけに、張り詰めてた情欲を開放させた。
そして、間髪空けずに中に広がった熱。
二人で顔を見合わせて笑った。
たまらなく、それは気持ちよかった。
***
「……お前でもあんな反応するんだな」
黒鷹に腕枕をされ、髪を撫でてくれているところにそういうと、目の前の顔が苦笑を零した。
「私だって、自分であんな声をあげてしまうなんて思わなかったよ」
「聞けると思わなかった。……なぁ、またしてみてもいいよな?」
「…………ひょっとして、味をしめたかね」
「だって、感じさせたいだろう。お前がきっと思ってくれてるのと同じなだけだ」
「まいったね。君は本当に可愛いことを言ってくれるんだから」
黒鷹が、軽く俺の鼻の頭にキスを落とす。
「……嬉しかったよ」
「……黒鷹」
「嬉しかったし、気持ちよかった。でも、時々で頼むよ。
どうにも、やっぱり君が感じる方を見ているのが楽しいからね」
「……狡いな、お前」
「ああ、狡いとも。知っているだろう?」
「まぁ、な。……いいさ、俺しか知らないことがあるってことで勘弁してやる」
「……ふふ、他の誰にもやらせないさ」
そして、君も他の誰にも触れさせないからね、と。
笑いながら交わした口付けは満たされた思いがした。
こんな情熱を傾けるのは一人で十分だ。
……そうだろう?
2005/08/20 up
黒玄メールマガジン(PC版)第12回配信分から。
うちの脳内設定では鷹は玄冬以外にフェラされた経験なし、ということになってます。
(うっかり某黒玄前提カプでやったことあったけど)
そんなわけで、これは初めてフェラされたときの黒鷹を書きたか(略)
- 2008/01/01 (火) 00:25
- 黒玄