作品
Second...
「……玄冬。抱いてもいいかい?」
夕食の後片付けをしていた玄冬を後ろから抱きしめて、耳元で囁く。
先日、初めて抱き合ってから3日。
そろそろまた触れても大丈夫かと。
玄冬と触れ合うまで、何年と誰かと交わることなんてしていなかったというのに、一度抱くと何度でも欲しくてたまらなかった。
決して性欲が強い方ではないはずだったんだけどね。
我ながら3日間、よくもったものだと思う。
玄冬が私の言葉にほんの少し身体を緊張させたのが伝わったけど、次の瞬間には私の腕に手が添えられて、小さい声で呟くのが聞こえた。
「……片付けが終わるまでは待て」
「わかった。慌てなくてもいいから、終わったら私の部屋においで」
「ん……」
耳まで赤くしながらも頷いたこの子が可愛くて仕方がない。
耳に一度キスを落としてから離れた。
***
「……っ…………あ……」
慣れないながらも、私の求めるのに出来るだけ応え、また感じさせたいという意図が伝わる。
私が触れていくだけにまかせず、自分からも触れようと動いてくれる様に心が動いた。
まったく、この子はどこまで可愛いことをしてくれるのか。
「玄冬。こっちも触るよ?」
「ん……っ」
脚を開かせ、身体を繋げる場所を慣らそうと指を舐めかけたところで、ふと昔使っていた潤滑剤の存在を思い出す。
サイドテーブルに収めていたものを取り出し蓋を開けると、物音を不審に思ったのか、閉ざされていた玄冬の目が開いた。
「……何だ? それ」
「潤滑剤だよ。
本当はこういうのを予め使ったほうがいいんだ。
君の負担が軽くなる。
先日は少し衝動的な面もあったし、君の部屋で抱いたから使い損ねたんだけどね」
「……実体験なのか、それは」
悔しそうな顔をして、睨んでくる。
嫉妬してくれてるのか。
嬉しいと言ったら、きっと怒るのだろうが、無性に微笑ましい気分になった。
額に口付けを落として、宥めるように言う。
「昔の話だ。それこそ君が生まれてくる前とかのね。
今は誓って君だけだよ」
「ん……」
「……指、挿れても大丈夫かい?」
返事は口にしなかったが、確かな頷きに指先に潤滑剤をつけてそっとその場所に触れる。
飲み込まれた呼吸には気付かないふりで、周囲を撫でてから指を一本滑り込ませた。
潤滑剤の助けを借りて、指は予想よりもするりと中に入り込む。
指先から伝わる熱。中の優しいうねり。
もう一本挿れても大丈夫そうだなと、指を増やすと、玄冬が肩口に頭を押し付けて呻いた。
「…………っ……」
「……痛むかい?」
「や……っ……平気……だけ、ど……お前……それ、何やって……」
「指を二本挿れているんだよ。……きついかね?」
「大丈……夫」
「じゃあ……これは?」
「うあっ!」
中で少し固くなってる部分を指の腹で押すと、玄冬の手が私の腕を掴む。
痛みを感じるほど強く掴まれ、震えが伝わるあたりに、余裕のなさが伺えて嬉しくなる。
「ふ…………! っ……あ……!」
「……どうだい?」
中で指を広げて慣らす。
動く指に翻弄されてるのか、玄冬が言葉もなくただ首を小さく振る。
そろそろいいだろう。
指を抜いて息を吐く間も与えずに、そのまま腰を引き寄せて、身体を繋げた。
体内の熱を移した温くなった粘液が、私自身に絡み付いて、快感を引き上げていく。
誘われるように一気に深いところまで突き上げた。
「や…………ああっ! 黒た……っ……!」
「ん……」
のけぞった首筋に唇を滑らせる。
軽く律動を始めて、潤滑剤の残ってるままの指で玄冬自身に触れると潤んでいた目から涙が零れ落ちて、私の肌に落ちた。
「……悪くは無い、ね?」
「ば…………かっ……見る……なっ!」
「嫌だね。腕で隠すんじゃないよ」
「…………っ」
顔を覗き込もうとして、腕で覆われかけたところを押さえ込んで顔を露にさせる。
やはり潤滑剤を使ったことで、負担が軽くなったからか、それとも2回目だからか、前よりも感じてくれているらしい。
どうみても痛みや苦痛の表情ではない。
きっと、本人でさえ戸惑うくらいに。
まいったな、煽られる。
加減できるだろうか。
「……その表情だけでも達けそうだよ」
「何……言っ……て…………っ」
「鏡で見せてあげたい……くらいだね……っ」
「本気で……怒…………っ……んんっ!」
耳から顎へのラインにかけて、舌を這わせると、それに合わせて玄冬の中が優しく蠢く。
ぐちゅ、と小さい水音をたてながら。
その音に自分の中で何かが切れた。
「っ…………や……ちょ……黒…………!」
「く……ろと…………」
一層強く掴まれた腕の痛みをどこか遠くで感じながら、突き上げを強くして。
伴うさらに大きくなった水音と、うわごとのように繰り返し私を呼ぶ玄冬の声に意識が霞んだ。
どうしようもなく気持ちがよかった感触だけは覚えているが、そこで記憶が途切れた。
***
「っ……あ……?」
状況を把握するのに、少し時間がかかった。
自分の身体の下のぬくもりに気付いて、少しだけ肌を離すと、玄冬も薄っすらと目を開けた。
互いの肌に散っている玄冬の白濁、中で潤滑剤の感触とは明らかに違う私自身に纏わりついてる温い粘液。
揃って達してはいるのは、明らかなのだが……。
「……勿体ない、な」
「…………あ?」
玄冬の肩口に顔を埋めて、呟いた。
夢中になりすぎた、というのはなんともばつが悪い。
「達した瞬間を覚えてない」
自分の方も、玄冬の方も。
その瞬間の玄冬の顔を見たかったのに。
「気持ち良かったんだから、いいだろう、そのくらい」
「そういう問題じゃないよ。……って、あ」
私の髪に触れながらそう言ってくれる玄冬の言葉に気付いた。
ごく当然のように言った言葉だけど、それが表す意味というのは。
顔を上げて、玄冬の目を覗き込む。
「……気持ちよかった?」
「え……あ」
「痛かったり、辛かったりしたわけでなく?」
「…………」
「……快感だけを感じてた?」
「………………っ」
問いかけの都度にどんどん表情が変わっていく。
いたたまれなくなったのか、視線をそらした玄冬がたまらなく可愛かった。
こういうのも身体の相性がいいというのだろうか?
収まりかけていた熱が再び呼び起こされる。
また欲しくなってきた。
まるで辛抱がききやしない。
我を失うほどに行為に夢中になるなんて、少し前まで思ってもいなかった。
愛しくて、嬉しくてたまらない。足りないよ。
「え……ちょ……黒鷹……!?」
身体を繋げたままの状態でいるから、玄冬には再び反応し始めたのが伝わったんだろう。
「このまま、続けるよ。もう一度、だ」
「本気か!?」
「中だって滑りやすくなっているし」
「っあ!」
軽く中で動くと玄冬が甘い声を上げた。
身体の間で再び玄冬のモノが固くなったのが解って、つい笑みが零れる。
「ほら、君だって反応してる」
「これ……はっ…………お前が……擦る……から」
「感じてくれてるのが解ったら、なおさら後になんてひけないよ。
一つ教えておいてあげよう」
「……うん?」
「身体がもちそうにない、と思ったら。
行為の後にそんな誘うような顔はしないことだ」
「な…………!」
頬に音をたてるようにキスをして。
再び満たされるために動き始めた。
今度は意識を飛ばさぬように。
2005/05/10 up
First rapture&2.0の後日談。
黒玄メールマガジン(PC版)第9回配信分から。
別名:潤滑剤ネタやりたかっただけ編
おまけの終盤部分のみを玄冬視点にしたものはこちら。
- 2008/01/01 (火) 00:26
- 黒玄