作品
何処までも貪欲に。&行かないで…
何処までも貪欲に。[Kurotaka's Side]
「……っ……うあっ!」
玄冬の中を抉るつどに、零れ落ちる声と背に食い込む爪。
弱いところばかりを狙って突いているからか、余裕は全然ないらしい。
私の背に走る痛みがそれを伝えている。
それがたまらなく愛しいと思う。
潤む瞳も、掠れる声も、熱い吐息も、繋がった箇所で感じている熱と震えも、全てが私を、私『だけ』を求めているのがわかるから。
「……いつもそうだと、いいのだけれどね」
「やっ…………くっ……!! ぁ……っ」
身体をより密接させると下腹部に玄冬の屹立したモノが当たる。
先端に貯められていた露が、私の肌を濡らして、モノを擦る手助けを始めるといよいよ、玄冬の目が泣き出しそうになる。
「黒……た……っあ!!」
「……気持ちいいだろう?」
「……強……すぎ……て、まず……っ…………壊れ……そっ……!」
「構わないよ?」
「ひっ……!」
いっそ、そのまま壊れてしまっても。
もしも、このまま壊れてしまったのだとしたら。
君の目はあのちびっこに向かずに済むだろうか?
ああ、だけど、そうなってしまったら。
「……私の方も向いてはくれなくなってしまうか」
「っ! ……あっ! ……や……!!」
突き上げる力を強め、速さを上げて。
汗ばんだ肌のぶつかる湿った音に、さらに興奮を呼び起こされる。
抱いた身体が細かく震えてる。
いや、震えてるのは私だろうか?
「く……ろた……か…………っ!! ……っあ!!」
「っつ……! 玄……っ」
背筋に走った、終わりを告げる悦楽の波に逆らわず、玄冬の中に吐精すると同時に玄冬もまた開放させていた。
腹の上に散った白濁を指で絡めとリ、口に含む。
精液は、何故かその時々で少しずつ味が違う。
今日のは僅かに甘かった。
お互いに荒い呼吸を交わす中で、吐き出したのに、まだ足りない、と思う。
もっと感じたかった。触れたかった。
余計なことを何も考えずに済むほどに。
まだ、固さを残すそれにそっと手を重ねると、悦楽の余韻に霞んでいた目が私の方に向く。
「まだ……平気かい?」
「……っ……黒……鷹?」
私の背に回されていた、玄冬の手が片方外されて、私の頬に触れた。
指先には微かに血がこびり付いている。
そのことに、ようやく背中の痛みを思い出した。
「どうした?」
「……何がだね?」
「……どうした」
尋ねる声が幾分柔らかくなる。
感づかれてしまってるかな。
甘えるように、玄冬の身体に体重を預けて、肩口に顔を埋めた。
これなら顔を見られない。
頬に触れていた手が、私の髪を静かに撫でてくれる。
「……行かないでくれるかい?」
「? 何のことだ?」
「わからなくてもいいよ」
「……そうか」
言葉にはするくせに、その意味は告げない。
我ながら勝手だと思う。
耳に軽く、口付けが落とされた。
優しいね、君は。
本当は気になるだろうに。
それ以上は追及しないでおいてくれる。
甘えているな。
子離れなんてできやしない。
行かないでくれるといい。
ずっと、私の傍にいてくれるといい。
「雪……」
「うん?」
「ずっと降っているな……最近」
「……そうだね」
耳に届く音に集中する。
暖炉で火の燃える音。
二人の呼吸音。伝わる鼓動。
……そして、静かに降る雪と風の音。
このままなら、もう止む事のない雪。
再び走り始めた運命の輪に思う。
手放したくはないと。
このままでいたい。
変わりたくなんかない。
叶わぬ願いと知りつつ、せめて……今しばらく。
私のものでいて欲しいよ。愛しい子。
行かないで…[Kuroto's Side]
「……っ……うあっ!」
中で弱いところを突かれて、反動で黒鷹の背に回した手に力が入ってしまう。
きっと傷つけてしまっている、とは思うものの、しがみついていなければ
バラバラになってしまいそうなほど、快感が強くてどうしようもなかった。
奥深くまで迎え入れているモノは、脈を打って存在を主張している。
黒鷹もかなり感じているはずなのに、まだ余裕があるように見えるのはどうしてなのか。
「……いつもそうだと、いいのだけれどね」
「やっ…………くっ……!! ぁ……っ」
何のことだろうと思いかけたときに、強く抱きしめられて。
自分と黒鷹の間に自分のモノが挟まれる形になる。
身体を揺らされるたびに、それが擦られる形になって、たまらなくなる。
内と外から同時に刺激を与えられるのは、悦楽が強すぎて怖いほどだ。
なのに、黒鷹以外に縋る相手もいない。
だから、ただしがみつく。全身で。
「黒……た……っあ!!」
「……気持ちいいだろう?」
耳元で囁かれる、熱を孕んだ声は優しくも残酷だ。
「……強……すぎ……て、まず……っ…………壊れ……そっ……!」
「構わないよ?」
「ひっ……!」
構わない、というのは本気なんだろう。
きっと俺がどうなろうと、黒鷹はただ受け止めてくれるだけだ。
だけど。
「……私の……はくれな……しま……か」
「っ! ……あっ! ……や……!!」
耳に届く声は途切れ途切れで、言葉を認識できない。
開放へと向けて、突き上げが強くなる。
徐々に早くなる動きにもう耐えられないのが分かった。
繋がった箇所が痺れるような熱さを伴っている。
「く……ろた……か…………っ!! ……っあ!!」
「っつ……! 玄……っ」
中で黒鷹が大きくなったと思った瞬間に出した。
僅かの間の後、感覚が少しずつ戻ってくると内側で広がった黒鷹の熱を感じて、また身震いがする。
黒鷹が俺の腹の上に指を伸ばし、ついで水音がしたのが聞こえた。
何をしてるかの想像はついたが、見たが最後、また興奮が収まらなくなるだろうとあえて、そっちに顔は向けない。
そしたら、黒鷹の手が中心に触れるのを感じた。
達した直後だから、そっと触れられるだけでもかなりくる。
まだ、続けるつもりだろうかと黒鷹を見た。
「まだ……平気かい?」
「……っ……黒……鷹?」
どこか寂しげにみえたのはどうしてだろう。
そういえば、行為の最中、ずっと何かを呟いていた。
時々、そういうことがある。
……知っている。
黒鷹は決して自分からは言うことはしないけれど、こういうときは、何か不安みたいなものを抱えているときだ。
不安だから、どこまでも求めたくなる。
言ってくれればいいのに、と思うけど。
言わずにいるのは性格なんだろう。
少しもどかしい。
背に回していた手を片方外して、そっと黒鷹の頬に触れた。
ああ、やっぱり傷つけてしまってるんだな。
爪先に少し血がついている。
もう、何度そうやって黒鷹の背に傷を残しただろうか。
「どうした?」
「……何がだね?」
案の定、言葉ははぐらかされる。一瞬の間が、
本当は何について聞いているかがわかっていると告げているのに。
「……どうした」
もう一度だけ、尋ねてみる。
顔に苦笑を浮かべて、黒鷹が静かに体重を預けてきた。
肩口に埋められた顔。
どんな表情をしてるかがわからないようにして。
仕方ないなと、頬に触れていた手でそのまま髪を撫でる。
どうせ、これ以上は突き詰めたって言いやしないんだ。
だったら、少し甘えさせるくらいしてもいい。
「……行かないでくれるかい?」
少しの間の後。呟かれた言葉は意味が良く分からなかった。
「? 何のことだ?」
『行かないで』とはどういうことだろうか?
そもそも、俺がどこに行くと?
「わからなくてもいいよ」
「……そうか」
じゃあ、これ以上は聞かないでおくという言葉の代わりに、少し首を傾けて横にある耳にそっと口付けた。
そして、別のことを口にする。
「雪……」
「うん?」
「ずっと降っているな……最近」
「……そうだね」
僅かに落ちた声のトーンに、もしかしたら、と思う。
始まったのだろうか。滅びの時が。
『行かないで』とはそれについてのことだろうか。
もし、そうなのだとしたら。
追求しなかったのは正解かも知れない。
約束なんてできないから。
黒鷹には悪いけれど。
……それでも、せめてもう少しの間くらいはこうしていたいと。
願うことくらいは許されるだろうか?
――行かないでくれるかい?
その言葉に頷くことのできない、その代わりに。
2004/10/21&2004/10/22 up
萌えフレーズ100題からNo34(黒鷹視点)とNo50(玄冬視点)。
甘やかしてしまってお互いを追求できない似たもの親子。
- 2008/01/01 (火) 00:23
- 黒玄
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