作品
どんな時でも -another under ver.-
玄冬が身じろぐ気配に目が覚めた。
もう朝なのか。
そういえば昨夜は玄冬のベッドに潜り込んだんだったっけ。
嫌な夢を見て、つい玄冬を確認しに来たのだ。
寒かったし、そのまま自分の部屋に戻る気にもなれなかったから、そのままここで眠ってしまったんだった。
「……ん。おはよう、玄冬」
「おはよう。……お前、人のベッドに黙って潜り込むのは止めろ」
「来たとき、気持ち良さそうに寝ていたから、起こすのは忍びなかったんだよ」
本当のことだ。
起こしては悪いなと、昨夜は抱きしめられなかった分も抱きしめようと玄冬を引き寄せた。
顔には苦笑を浮かべているけど、嫌がってはいない。
「起きたときにびっくりする」
「どうせ、この家には私たちしかいないだろうに」
「それはそうだが……ここに来たのは寒くて寝られなかったからか？」
「まぁ、ね」
その言葉に返すのに、一瞬だけ躊躇ったのに失敗したのを実感する。
きっとわかってしまった。
案の定、次に投げかけられた言葉はそれを示している。
「嫌な夢でも見たのか？」
「どうだろうね」
より強く抱きしめると、玄冬も私を抱きしめてくれる。
でも、それ以上を聞こうとはしなかった。
「……俺はここにいる」
「うん」
「黙ってどこかに行ったりなんかしない」
「そうであって欲しいと願うよ」
数日間、続いている雪の日は選択の時が近いことを示す。
本当は確実にそうなるという保障がないのは、お互いになんとなくわかっている。
これ以上、その話題は続けたくなくて口付けで会話を留めた。
「ん……」
起きたばかりで少し乾いている唇を、軽く湿らせるように舌で辿る。
軽く弾む吐息に興奮が頭を擡げる。
このまま抱いてしまいたい。
「おい、そろそろ起きない……と……っ」
「起きてるじゃないか。ほら、こことか」
「バカ……っ……そういう意味じゃ……っ！ ん……！」
生理的なものではあるけれど、反応している部分を寝巻きごしに軽く撫でた後、直接手を服の中に差し入れて触れる。
熱を帯びた固い幹の滑らかな感触が心地良い。
「お前、朝からっ……何……！」
「君に触りたいだけだよ」
「触りたい……だけじゃない、くせに……っ！」
「そうだね。触って、抱いて、キスして、繋がりたい」
「ふ……」
深く口付けをしながら、胸元の釦を外していく。
服越しの温もりよりも、直に肌を重ねて感じる温もりが欲しい。
今、君がここに確かにいるという証が。
玄冬の手も私の釦に伸びて、外し始める。
冷えた空気に晒されて、少し粟立った肌。
直接触れた体温に馴染み、癒されていく。
お互いに毛布からは抜け出さないままに、触れ合い肌を重ねて。
「いる……から……っ」
「……うん」
身体を深く繋げた中で、玄冬がうわ言のように繰り返した。
「……どこにも……行かな……！」
「ああ……っ」
その言葉に呼応するように、強く激しく抱きしめて。
熱を開放させた後も、しばらく離れることなく抱き合っていた。
＊＊＊
「…………た」
「うん？ 何か、言ったかい？」
「いや。なんでもない」
「あやしいなぁ」
「気になるか？」
「……いいよ」
微笑んだ玄冬に、私も顔に自然に笑みが浮かんだ。
言葉にしなくても、きっと思っていることは一緒だから。
君が今、笑ってここにいてくれて良かった。
もし、いつか。
そう遠くない時に、この優しい空間の終わりが来てしまっても、温かい気持ちは残るから。
だから、今はただ。
このまま、穏やかに日々の過ぎていくことを願おう。
どうにもならなくなる、その瞬間まで。
2004/12/23 up
元は黒玄祭出展分でした。黒鷹視点。
ほのぼの朝寝で留まった、ノーマル版（？）はどんな時でも。
読み返したら、描写あっさりなので、表扱いでもいい気もしたけど一応タイトルにもunderって入れちゃってるのでこっちにｗ
- 2013/09/08 (日) 22:50
- 黒玄