作品
嫉妬
※単品でも読めなくはないですが、
印~見覚えのないキスマークを読んでからの閲覧をオススメ。
最初、何かが貼りついているのかと、単純に思った。
傷の残らない玄冬の体質を思えば、他に思い当たらなかったから。
だけど実際に触れてみると、それはキスマーク以外の何でもなく。
昼間に救世主の子どもが来ていたことを思い出した。
この世でたった一人。玄冬に傷をつけることが可能なあの子ども。
私がいくら願ってもつけることの叶わない、所有の証を。
……あの子どもがつけたというのか、君に……!
「……ちびっこか」
呟いた声は自分の予想以上に低い。
胸が黒い感情で焦げる。
あの子どもが玄冬を憎からず想ってるのはわかっている。
玄冬を死なせたくない、という意味では私とあの子どもは意見が一致する。
面白くもないことだが、その点ではあの子どもは私の唯一の共犯者とも言える。
だが、それとこれとは話が違う。
この子は私のものだ。
所有の証をつけようなどと、言語道断も極まりない。
「あの……な、黒鷹……」
そっと嗜めるような口調に、ぷつりと自分の中の何かが切れた。
私は言い訳など、聞くつもりはないよ。玄冬。
「他の場所につけられてなんていないだろうね?」
肩をつかんで、勢いよく壁に押しつけて。
襟を寛げてあらわれた白い首筋に唇を当てて、舌を這わす。
この肌に他の誰かが触れるなど、とんでもない。
私以外がこの子の弱いところを知るなど許すつもりなんてない。
「っ……! ちょ……! 待て……!
他のとこになんてない……っから!」
突然の行為に制止の声が飛ぶが、知るものか。
そんなものをつけさせた君が悪い。
「確認しないとわからない」
「ふ……っ」
唇と舌を這わせている間にも、手で上着の釦を外し、肌を露出させ、指で触れていく。
そう、確認しなければね、隅々まで。
「ちょ……黒……っ」
感じ始めて、甘い響きの混じった私を呼ぶ声に、また胸の奥が焦げる。
「そんな声、あのちびっこに聴かせてやしないだろうね?」
君がそんな声を聴かせるのは私だけでよいのだから。
「誰……が……!」
否定の言葉に微かな喜びと安堵。
だけど、まだ容赦はしてやらない。
「……絶対にもう、こんなことさせるんじゃないよ」
「やっ……お前……どこ触って……っ」
反応しはじめた玄冬自身を服の上から撫でて、真っ直ぐに玄冬を見た。
「嫉妬で私を怒らせたくはないだろう?」
「あ……!」
そして、手を服の下に潜りこませて、直接それに触れる。
隈なく触れていくと徐々に硬さを増すそれが、やがて快楽の涙を零し始める。
濡れてくぐもった音が私自身の興奮も高めていく。
指先に絡む滑らかな感触は大分熱を帯びていた。
「……せめ……てっ……ベッドに……っ!」
息の荒くなり始めた玄冬の懇願するような声。
だけど、それには首を振った。
「ベッドまで待てない。君には悪いが」
「っつ……! くろ……っ……!」
移動の時間さえ今は惜しい。
この体温を僅かな時間でも手放すのが嫌だ。
一気に下衣を引き下ろして、露出された玄冬のモノに跪いて口付ける。
雫を滴らせる鈴口を尖らせた舌先で突付いてやると、玄冬の腰ががくりと崩れそうになる。
両手で腰を支えてやりつつも、口は休めず、ひたすら玄冬を可愛がる。
止まらない雫が今の快感の度合いを伝えてくる。
「……っ……ダ……メだっ……! 出し……」
「いいよ? ……出したまえ、そのままで」
「く……っ!」
それだけ言うと、玄冬をより深く咥えこんだ。
私の熱を感じたまま達せるように。
一度、支えた玄冬の腰が大きく跳ねて、口の中に独特の感触を伴う粘液が広がる。
絡みつくそれを一滴も残さずに飲み干すと、まだ硬さを残してるモノを舌で清める。
「ひ……っあっ……!」
達したばかりで、敏感になってるだろう性器に刺激を与えることを続けてるからか、玄冬の声は泣き出しそうだ。
それに少しだけ嗜虐心を煽られる。
「まだ……これで終わりだと思ってないだろうね?」
「う……」
口から玄冬のものを離すと、軽く後ろの入り口を指でほぐしてやる。
一度達しているからか、そこは予想よりは柔らかくなっていて。
立ち上がって覗きこんだ目は快楽の熱で霞んでいた。
「……私の肩に捕まってなさい。体重を預けてしまう感じで構わないから」
「……え……あ!」
強引に玄冬に肩にしがみつかせると、自分のいきり立ったモノを取り出し、玄冬の両足を抱えて立ったままで一気に貫いた。
「やっ……! く……っ!」
「……っ……!」
不安定な姿勢だからだろう。
繋がった箇所に掛かる圧力は普段の比ではなく。
締めつける熱と伝わる脈動に眩暈がしそうになる。
「背中の方に重心をかけられるかい?」
「ん……こ……うか……?」
「……良い子だ」
「く……うあっ……! ……っつ……!」
僅かに力が抜けたところで、動き始める。
繋がりが深いから弱い振動でもかなり追い上げられていくが、決定打にはまだ足りない。
激しく動きたい。
貪欲なまでに求めている。
「玄冬」
「ん……っ……?」
「床に倒すよ。私にちゃんと抱きついていたまえ」
「……ん」
体重を預けてきた玄冬を抱えて、繋がったまま腰を下ろして、床に寝かせた。
床に重心が移動したのを見計らって、抽挿を始める。
加減なぞ……もうとてもじゃないが出来なかった。
「ひ……っ……や……っ黒……鷹っ! ……も……とゆっく……!」
「……すまない、ね」
「……! あ!」
懇願の言葉を叶えてやれないことを一言詫びて。
ただ身体を走る昂ぶりに身を委ね、衝動のままに動く。
「っ……!」
「ひぁ……っ!」
頂きの見えた快感を堪えることはせず、玄冬の中に熱を迸らせた。
そして、私の熱に後押しされて玄冬も達する。
汗でまだ衣服を纏っている部分がはり付いている感触に眉をひそめた。
ああ、まだ、全然足りない。
全て脱ぎ去って全身で感じたい。
「え……あ……! っ……黒鷹……っ?」
中に収めたままの私が再び反応するのがわかったんだろう。
玄冬が少し怯えたような視線を投げかける。
「ベッドに移動しよう。…
…覚悟しなさい。まだ解放させてはやれないのだから」
「……っ!」
情けない顔つきになった玄冬に、内心少し愉快な気持ちになる。
……君が悪いんだよ、玄冬。
教えてあげるよ、嫉妬に狂った私を。
そして、心にも身体にも刻みつけるといい。
君は私のものなのだと。
私は君のものなのだと。
あんな子どもに間に入られてたまるものか。
***
「……動けるかい」
「……そういうお前だって動けないくせに」
あれから空が明るくなるまで抱き合って。
お互い精魂尽き果てたという具合で一眠りして、目が覚めても起きられやしなかった。
さすがに無茶苦茶が過ぎてしまったようだ。
「黒鷹」
「うん?」
「……跡なんて残らなくたって、他の誰ともこうしたいなんて思ったことないからな」
「玄冬?」
「触れたいのは……お前だけ、だから」
目を背けて、小さく漏らした呟き。
君には本当に敵わないよ。
「そんな可愛いことを言うと、また抱きたくなるよ?」
「……悪い。今夜はさすがに勘弁してくれ」
「大丈夫だよ。私も今日はもう無理だから。
……でも、このくらいはいいだろう?」
「……ああ」
静かに抱き合って、ただぬくもりを感じる。
愛しいたった一人の相手の体温を。
再び襲われた眠気に目を閉じた。
2004/06/24 up
「惑楽」(お題配布終了)で配布されていた
「萌えフレーズ100題」よりNo7です。
印~見覚えのないキスマークから続く、嫉妬とキスマークシリーズ第三話。
結構初期作品の中では気に入っているものの一つ。
- 2013/09/10 (火) 00:38
- 黒玄