作品
支配と服従
「……黒……鷹。これ体勢……っ……変えろ……!」
「断る」
「…………っ!」
再び、ざらりと生温かい感触が中心を襲う。
下の袋の方まで指で捏ねられて歯を食いしばった。
俺の目の前にも黒鷹の張り詰めたモノはあるのだけれど、動けやしない。
黒鷹が俺の上に覆い被さるような姿勢になっているから、調節が上手く出来ず、咥えられないからだ。
精々が舌を這わせてやれるくらいになっている。
深く咥えたら感じさせてやれるのに。
黒鷹は深く咥えこまれることに弱いから。
咥えこんだ瞬間の息を飲む様子も好きだ。
あんな黒鷹は俺しか知らない。
征服欲とでも言うんだろうか。
満たされる感覚はたまらなく気分を高揚させる。
なのに、今は。
どう考えても俺のほうが分が悪い。
攻められてる一方な気がする。
だから体勢を変えろと訴えたのに、あっさり断られた。
舌がくびれた部分を包むように動くたびに、背筋にぞくぞくとしたものが走る。
くそ……反撃どころか、達してしまわないようにこらえるのが精一杯だ。
「黒……た…………」
返事はない。
が、それに応じるように深く咥えこまれた。
ぬるりと温かい口の中。
蕩けるような感覚の中で行為の前の会話が頭を過ぎる。
――二人でお互いにしようか。……そうだな、君が下になるといい。
――体重をかけないよう気をつけるから、私が君の上に乗るよ。
そうだ。この状態を持ちかけたのは黒鷹だ。
まさか最初から狙っていたのか。
黒鷹の濡れた指先が奥に触れて、ほぐすように撫でられると疑惑は確信に変わった。
「狡……い」
「……何が?」
問いかけながらも手は緩めない。
が、僅かな言葉の前の間は何について聞いたかの見当がついてることを示す。
伊達に長いつきあいじゃない。
狙いを読めなかったのは迂闊だが。
「お前……っ……わざと……これにしたな……っ!」
「今更気付いたのかい」
「っ!! ……や…………あっ!」
後ろに触れているのとは違う指が先端に押し込まれるような形で刺激をもたらす。
腰を突き抜けていく甘い痺れ。
まずい、と思った瞬間には達してしまっていた。
自分の腹にぽたぽたと温い雫が落ちたところに、黒鷹の掌の感触を捉える。
馴染ませるように撫でると、その掌でまだ興奮の冷めてないモノを握られ、つい身体がびくりと震えた。
軽く触れられるだけでもくるのに、擦りあげてくる手でまた張り詰めていくのがわかってしまう。
「…………っまだ……!」
「大丈夫だろう? 続けても。
私はやっぱり君の中で達したいからね。体勢、変えるよ?」
「…………の……わが……まま……!」
さっきまで嫌だと言ってたくせに、人が達した途端にそれだ。
ぼやいても罪はないと思う。
「……知っているだろう?」
人の悪い笑みを零しているだろう表情は簡単に想像がつく。
俺だけを乱して、けっきょく黒鷹の為すがままになっている状態を楽しんでいるんだ、こいつは。
案の定、体勢を変えて目の前に現れた目は愉快そうな光を湛えている。
その顔が近づいてきて、唇が重なり、舌が割り込んできた。
微かに漂う生々しい匂い。
さっき達したときに俺の精液が黒鷹のどこかについたのか。
唇を合わせたままで、抱えられた脚。
次の行動は手に取るようにわかる。
熱い熱が宛がわれ、黒鷹がゆっくりと侵入しはじめた。
「ん……んん……!」
まだ力が入らない腕を持ち上げ、黒鷹の腰にしがみ付くように捕まる。
深い部分まで挿れると黒鷹が唇を離して呟いた。
「まだ……余韻が残ってるかい?
中が震えてるね。熱くて……気持ちいい」
「誰……の……せいだ……と」
「私だな」
「っあ!」
中で弱い箇所を擦られて、取り繕う余裕もなく声を上げてしまう。
肌をもっと合わせたいと、黒鷹の背を掻き抱いて引き寄せた時に、ようやく顎の裏についていた精液に気付く。
指を伸ばして絡めとると、黒鷹が躊躇わずにその指に舌を這わせ舐め取る。
「……おい」
「君だって逆だったら躊躇わずやるだろう?」
「それ……は」
「何だったらお腹にまだ残ってる分も取って舐めようか?」
「やめ……ろ」
「……ふふ」
まぁ、どうせもう一度濡れるからやっても意味がないか、という呟きの直後に動きが激しくなる。
壊れそうな感覚に縋り付いて黒鷹を呼んで。
情欲に霞んだ思考の片隅で狡い、と思った。
黒鷹にされるがままなのがわかっているのに、
離れられない自分は結局最初から負けているのかもしれない。
***
「……まいったねぇ」
行為の後、半ば強制的に眠りに引き摺りこまれた玄冬が寝入ってしまう直前に呟いた言葉。
――ずる……い。
潤んだ深い海の色はもう一度抱いてしまいたくなるほどに扇情的で。
――俺だって…………もっと感じさせたいのに。いつもされるがままだ。
「……十分なんだけどねぇ」
おそらく玄冬が考えている以上に、私はこの子に溺れている。
甘い声で求められることにどれだけ心がざわめくか。
私の動作一つで乱れてくれることにどれだけ理性が吹き飛びそうになるか。
既に十分感じているというのに、これ以上なんてどうしようもなくなるに決まっている。
――お前じゃなきゃ……駄目……なの……に。
それは私だ。
この子の存在に囚われてるのも、繋がれているのも私だ。
好きすぎてどうしようもない。
何があっても君に拒まれるのだけは恐ろしいと思う。
ねぇ、君が望むことなら何だって叶えてあげるから。
私という存在を刻み付けててくれ。
もしも、この先。
私が君の傍からいなくなったとしても。
2005/12/28 up
黒玄メールマガジン(PC版)第19回配信分より。
シックスナインがやりt(黙れ)
最後だけほんのりシリアス、かも知れない。
- 2013/09/10 (火) 00:06
- 黒玄