作品
一分一秒&その熱に焼かれるとしても、その腕に触れられたくて
一分一秒[Kurotaka's Side]
「いい……加減に…………しろ」
擦れた声が私を責める。
その癖、退けようとする腕の力は酷く弱い。
繰り返された悦楽の所為だけではないだろう。
「嫌だね」
「……っ……ん!」
口付けても抵抗するでもない。
絡めた舌を避けるわけでもなく、私の為すがまま。
傷つけない程度に軽く噛む唇は小さな喘ぎを零す。
だけど、私を拒む言葉は紡がない。
本当に嫌なら、全力で力を籠めれば、私を退けるくらいは出来なくないはずだ。
この子の方がもう力もあるし、悔しいことではあるが体格だって敵わない。
「ほら、また固くなってきた。嫌ではないだろう?」
「五月蝿……いっ……! 誰の、所為……だと」
「……ふふ」
「っ……あ!」
深く穿った楔に、形だけは押しのけようとしていた玄冬の腕が縋り求める形に変えられる。
「ど…………して……っ」
「うん?」
荒い息に混じった言葉はみなまで聞かずともわかる。
――どうして。
――どうして。何が不安なんだ?
――こんなに傍にいるのに。
涙に濡れた目が語る。
「……だから、だよ」
玄冬には聞こえない程度の声で呟く。
傍にいるから。
一分一秒だろうとも手離せない。
君が私しか見えていない、その時を。
その熱に焼かれるとしても、その腕に触れられたくて[Kuroto's Side]
達して、いい加減動きが止まったと思ったら。
また黒鷹が動き出す。
一体どこにそんな余力があるのか。
もう纏わりつく生々しい精の匂いにも、麻痺しつつある。
汗と精液で濡れたシーツの冷たいような温いような感触もどうでもいい。
だけどこのまま続けてはまともに明日動けるわけがない。
続けていてはだめなのに。
「いい……加減に…………しろ」
至近距離にある黒鷹の肩を押しのけようとするけど、力なんてもうまともに入りやしない。
いや、押しのけようとしてるつもりになっているだけかも知れない。
それを否定する言葉を望んでいるのかもしれない。
「嫌だね」
「……っ……ん!」
だって、わかっている。
そうやって言ったところで黒鷹が退くはずがないというのを。
割入ってきた舌。軽く啄ばむように噛まれる唇。
溶けてしまえるんじゃないかと思うような甘さ。
十分知っている筈の感覚の癖に、身体の中心にはまた熱が集まっていく。
「ほら、また固くなってきた。嫌ではないだろう?」
「五月蝿……いっ……! 誰の、所為……だと」
「……ふふ」
「っ……あ!」
黒鷹がまた深く挿れてくる。身体を繋げた場所からの
強く響く悦楽に耐えかねて、つい腕を縋りつかせる。
これがまた黒鷹を喜ばせるだけになるのを知っているのに。
「ど…………して……っ」
「うん?」
触れても触れても足りない?
お前しかいないのに。
激しい熱に焼かれることが解っていても、触れられたい腕は、指先はただ一人のものなのに。
ああ、そうか。だからだ。
こんな風に抱かれても、それが求める相手の腕だから。
俺は拒むことができない。
きっと何時になろうとも。
2005/08/09 up
一日一黒玄から。
Kfir(閉鎖) が配布されていた「欲張りな恋・5題」、No1(黒鷹視点)とNo2(玄冬視点)。
- 2013/09/17 (火) 06:35
- 黒玄