作品
裸体
「どうしたね?」
それは先ほどまで二人で睦みあっていた後のこと。
熱の篭った身体を冷まそうとベッドに腰掛けて、肌をそのまま晒していたら、後ろから玄冬の視線を感じた。
なので、首だけをそちらに向けてやり、そう尋ねる。
「……血が滲んでる」
済まなそうな響きの声の後に、首筋に触れる唇。
そして、舌。
微かな痛みと甘い快感。
肩に置かれた手から伝わる体温に、先ほどの行為を思い出す。
私を求めて、しがみついて。
その証を首筋や肩口に残したことを。
ああ、まったく。
そうする君の方には他意はないんだと、わかってはいるんだけど。
「……君は自覚がないんだろうと思うんだけどね」
「え?」
少し力の抜けた隙をついて、肩から玄冬の手を引き剥がし、あっという間に体勢をかえて、身体の下に玄冬を組み伏せた。
目を丸くした玄冬の耳元に唇を寄せて、そっと囁く。
「そうすることで、私をどれだけ煽ることになってるのか、気付いていないのかい?」
本当は何時だって触れて感じたい。
だから、わざとでなくとも煽られて、そのままの平常心でいられるわけがないんだということを。
自覚していない君が本当に可愛くて、苛めてしまいたくなる。
「ちょっと待て、まさか」
「そのまさかだよ。文句など言わせない。
……当然の成り行きだと思い給え」
「……んあ……っ」
耳たぶを軽く噛んでやると、甘い声が口から紡がれる。
その声にますます情欲を高められて、玄冬のモノに触れた。
固くなりかけている、その感触に思ったのは優越感。
いや、その気にさせることができたという、達成感と言った方がいいだろうか?
「また傷が増えても知らないからな……っ」
きっと君は、負け惜しみのつもりでそう言ったんだろうけど。
「そう言うことを言うから……いや、いい。なんでもない」
「何……っあ!」
そんなことを言ってくれるから、余計に煽られるんだと告げようとしてやめた。
代わりに手の中の幹を緩く擦り上げてやる。
「教えてあげるよ。言おうとしたことの答えはその身体にね」
増やすといい。
私を求めた証たる傷を。
呼ぶといい。
縋りつくように切なく。私の名を。
何があっても、忘れることなどできないように、私の存在をその身に刻みつけてあげるから。
例え記憶を無くすようなことがあったのだとしても、身体は私を忘れることのないように。
全てを曝け出した裸のままでも、私が君を愛したその名残だけは。
永遠に覚えていられるように。
だから、何度でも君をこの胸に抱こう。
私達に終末が訪れる、その時まで。
2004/07/24 up
「惑楽」(お題配布終了)で配布されていた
「萌えフレーズ100題」よりNo49。
元は黒玄祭の裏用出展作(出展時タイトルはI wish)で、黒玄祭絵チャ開催日前日のプレ絵チャで即興で作ったもののリメイク。
リメイクというか、ログ取ってなかったので、覚えてるテーマそのままに改めて書き直したというのが正しいですがw
- 2013/09/17 (火) 06:01
- 黒玄