作品
理知らず&心が痛む
理知らず[Kurotaka's Side]
「……の……卑怯、もの……っ……!」
「何とでも言うがいいさ。……君が悪い」
「くぁ……っ!」
縛って身動きの取れない玄冬の足を抱え引き寄せて、一層深くに昂ぶりを埋めた。
繋がった箇所が細かく震えて応じるのを、残酷なほどに愉快な気分で受けとめる。
自分で動けないのは、さぞ辛いだろうね?
生憎とまだ開放してあげるつもりにはならないが。
これでも君が考えてるだろう程度より、私は腹を立てているのだから。
「泣いたところで許してなんてあげない」
「…………っ……!」
「諦め給え。幾らでも泣き叫ぶといい。
……いや、本格的に泣かせてあげよう」
後悔しても遅いんだよ。玄冬。
私との約束を違えて、ちびっこなんぞを優先させたりなんてするから。
それでも。
君があんなことさえ言わなければ、ここまではしなかったのに。
「やめ……っ……黒……っ!」
制止の声は無視して、ただ弱いところを突き上げる。
――いちいち、俺達に干渉するな。お前には関係ないことだ。
「よくも、言ってくれたものだね……関係ない、などと……!」
「…………っ……う…………あ!」
「……おっと」
支えていた腕を片方離し、玄冬自身の根元を強く握りこんだ。
熱く滑らかなその器官がびくんと震えた。
「何の……っつも……」
「まだ、だよ。イカせてなんてあげない」
「ふざけ……っ! ん……!」
抗議を言いかけた口を自分のそれで塞ぐ。
熱の篭った口内を隈なく蹂躙して、離れる瞬間に玄冬の口の端を噛みきった。
「……っ……!」
痛みに玄冬の顔が歪む。
だけど、傷をつけた箇所は僅かに血を滴らせただけで、すぐに元の通りになってしまう。
忌々しいね。
跡さえ残るのならば。
全身に降らせた口付け、縛った跡、私がつけた傷、私が君を抱いたことが一目でわかることが出来たのならば。
あんな子どもになど近寄らせることもできずに済むだろうに。
所有の証さえ、この身に残せたのなら。
「や……! 手……離せ……」
「嫌だね」
「……う……くっ……」
抱いた腕に感じる滴る汗と身体の震え。
快楽を押し留められるのはいかに辛いか、苦しいか。
同じ雄だ。私にだってわかる。だけどね。
「少しは思い知れば……いいっ!」
「ひ……ああっ……! 黒……っ鷹……!」
より律動を激しくしてやると、玄冬の目がたちまち潤んで、涙が零れ落ちる。
ああ、そろそろかな。
「……願……っ……く……ろ……っ」
「何だって?」
「離し……て……っ……かせ……っ……」
「聞こえない。……ちゃんと言いなさい」
君の望みを。
今、それを君に与えられるのは私だけなのだから。
「……手……離し、て……突いて……っ、イカせ…………!」
「……良い子だね」
「ふっ……! くぁ…………!」
望み通りに手を離してやって、両手で強く抱きしめて突き上げると、すぐに玄冬の身体が限界を訴えてくる。
「いいよ、玄冬。……そのままイキ給え……!」
「うぁ……っ! 黒た……っ……ああ!」
「ん……っ!」
抱えた身体が大きく震えて、繋がった場所に強く圧力がかかった。
一気に背筋をかけていく射精感には逆らわず、身体の欲求のままに玄冬の中で達した。
力が抜けて、支えて玄冬を倒そうとして、僅かに零れた苦痛の声に、縛っていたことを思い出す。
これじゃ、横になるのも辛いだろうと、手首と足の戒めを解いてやった。
かなりきつく縛り付けていたから、肌には赤く跡が残っていたが、少しずつ薄くなっていく。
それを惜しむように手首を取って、薄れていく跡に唇を落とすと、震えた声が呟く。
「……つもり、じゃ……な……」
「……うん?」
「関係……ないなんて……っ……言うつもりじゃ……っ……!」
言葉の最後は嗚咽にかき消された。
零れる涙を唇で吸い取り、震えた背をそっと抱いてやると、玄冬の腕が強く私を抱き返してきた。
痛いほどに。
……ホントはわかっていたんだけどね。
君があの子との方を優先したのは、私に甘えているからだっていうのは。
関係ないというあの言葉も、照れ隠しだった故だというのもね。
それでも……我慢できなかった。
大人気ないなと思うけれども。
「さすがにね、関係ないっていうのは哀しかったかな」
「……ごめ…………黒た…………ご……め……」
「もう、いいよ。私こそ……すまなかったね」
「っつ……」
涙をぬぐってやりながら、耳元でもう一度と囁いた。
やっぱり、こんな一方的なのではなく、君にも私を求めて欲しいから。
触れて欲しいから。
心が痛む[Kuroto's Side]
「……の……卑怯、もの……っ……!」
そう言って、黒鷹を睨み付けてはみたけれど、当の本人は涼しい顔でそれを受け流す。
「何とでも言うがいいさ。……君が悪い」
「くぁ……っ!」
足を勢いよく引き寄せられて、黒鷹がより深くに入りこんでくる。
弱いところを擦られ、繋がった箇所から電流のような甘い痺れが身体を巡って、たまらず声を上げた。
動けたのなら、自分でもう少し調節もできるんだろうが、手と足の両方を縛られていてはどうしようもない。
なんでこんなことになったんだ。
先に黒鷹と出かける約束をしていたのは確かだが、時間になっても外出したまま黒鷹は戻らなくて。
その少し前に花白が来て……ああ、そうだ。
あいつに森に行こうと誘われたんだ。
いないものは仕方がないからと、書置きだけしておいて。
……いいと思ったんだ。
黒鷹とはいつだって一緒に出かけられるし、時間になっても戻ってこないほうも悪いと。
森で花白と過ごして、予定の時間より遅く家に着いてしまったが、黒鷹は苦笑いこそしていたけど、怒ってはいなかった。
そうだ、顔色が変わったのは、俺があの言葉を口にしてしまったときだ。
「……泣いたところで許してなんてあげない」
低い呟きは冷酷さを滲ませている。……本気で怒っているのが嫌でもわかる。
「…………っ……!」
「諦め給え。幾らでも泣き叫ぶといい。
……いや、本格的に泣かせてあげよう」
「やめ……っ……黒……っ!」
容赦のない動き。
俺がその箇所が弱いと知っているから。
ただ追い詰めるように、そこを繰り返し突かれて。
強い悦楽に身体が支配されていく。
「よくも、言ってくれたものだね……関係ない、などと……!」
「…………っ……う…………あ!」
「……おっと」
一層強くなった突き上げに、達してしまいそうになった瞬間、黒鷹に
根元を強く握りこまれた。
抑えつけられた快感への頂き。
反動でかなり……厳しい。
「何の……っつも……」
「まだ、だよ。イカせてなんてあげない」
「ふざけ……っ! ん……!」
言葉を言い終わらないうちに、黒鷹に口付けられて、口の中を温かい舌が隅々まで這っていく。
その感触にますます興奮して……留められてるのが本当に辛い。
おかしくなりそうな直前で、黒鷹の唇が離れたかと思うと、唇の端を歯で噛みきられた。
「……っ……!」
走った痛みに、ほんの僅かだけ快感の波がひく。
だけど痛みはまもなく消えて。
また、さっきのように身体が辛くなってくる。
本当に……おかしくなってしまいそうだ。
「や……! 手……離せ……」
「嫌だね」
「……う……くっ……」
触れられてる手が辛い。
いつもなら俺を高めて解放してくれる手が、今日に限っては酷く残酷だ。
それだけ怒っているのだろうか。
――いちいち、俺達に干渉するな。お前には関係ないことだ。
約束を破った後ろめたさもあって、そんなことを言った。
関係ないわけなかったのに。
一度口から出た言葉は取り消せない。
気がついたら、強い力で組み敷かれて、服を脱がされ、縛り付けられていた。
「少しは思い知れば……いいっ!」
「ひ……ああっ……! 黒……っ鷹……!」
相変わらず、手は俺のモノを握ったまま。
なのに、律動はこれでもかというほどに激しくなる一方だ。
縋りたいと思っても、手も使えないから衝動の行き場もない。
本当にたまらない。
イカせて欲しいのに、黒鷹が欲しいのに。
いつまで、こうしていればいい?
頬が濡れる感触に、自分が泣いてるのに気がついたが、涙を止めることはできなかった。
みっともなくてもいい。
ただ、黒鷹が欲しい。
望むものを与えてくれる黒鷹が。
「……願……っ……く……ろ……っ」
「何だって?」
「離し……て……っ……かせ……っ……」
「聞こえない。……ちゃんと言いなさい」
容赦をするつもりはない口調。
声が震えつつも、意思がきちんと黒鷹に伝わるよう、今の俺の望みを告げた。
「……手……離し、て……突いて……っ、イカせ…………!」
「……良い子だね」
「ふっ……! くぁ…………!」
満足げな響きの声を感じた後、すぐに手が離れ、強く抱きかかえられて
動いてくれて。
繋がった場所と触れられていた場所が酷く熱い。
自分の身体が細かく痙攣し始めたのがわかった。
「いいよ、玄冬。……そのままイキ給え……!」
「うぁ……っ! 黒た……っ……ああ!」
「ん……っ!」
黒鷹の声が引き金になって、目の前が白くなって……開放された。
次いで、中に溶けて馴染んでいく黒鷹の熱。
望んでいたものに満たされ、力が抜けそうになる。
黒鷹が身体を横にしようとしてくれたけど、後ろ手に縛られているので、
不自然な姿勢になってしまって、生じた痛みについ声が零れる。
それに気付いたみたいで、黒鷹が手首と足を縛っていたものを外した。
きつく縛られていたから、指先が軽く痺れ、縛られていたところには跡が残っている。
だが、それは少しずつ薄れ、身体にいつもの感覚が戻ってくる。
その時。
まだ少し赤く残る縛られていた跡に、優しく癒すように落とされた口付け。
伏せられた目は僅かに哀しい色を滲ませている。
ああ、そうか。気がついてしまった。
俺の言葉は黒鷹を怒らせたんじゃない。
傷つけてしまっていたんだ。
どんな思いで俺を抱いていたのかと思ったら、たまらなかった。
「……つもり、じゃ……な……」
今更、なんだろうけども。
泣きたいのは俺ではなく黒鷹だろうに。
一端緩んでしまった涙腺は、後戻りができなかった。
「……うん?」
「関係……ないなんて……っ……言うつもりじゃ……っ……!」
甘えるにも程がある。
だけど、黒鷹がそっと目許に口付けをして、背中を抱いてくれて。
それがもういいんだよと言われてるような気がして、ただ、その背に縋った。
そうやって、また。俺はお前の優しさに甘えている。
「さすがにね、関係ないっていうのは哀しかったかな」
苦笑を滲ませた声は本心を告げているのだと知っているから。
辛い思いをさせてしまったことを詫びた。
「……ごめ…………黒た…………ご……め……」
「もう、いいよ。私こそ……すまなかったね」
「っつ……」
辛かっただろう? と小さく呟かれて、首を振るしかできなかった。
謝るのは黒鷹じゃないのに。
いくら相手が黒鷹でも言っていいことと悪いことがあるんだということを、失念していたのは俺だ。
いつだって優しく許してくれるから、いつまで経っても俺はお前に甘えてしまっている。
伝う涙を指で拭われて。
そっと耳元でもう一度と囁かれた声に、素直に頷いた。
いつだって、お前は俺の望むものをくれる。
……だから、俺もお前の望むままに。
それはそのまま俺の望みでもあるから。
2004/07/31&2004/08/01 up
「惑楽」(お題配布終了)で配布されていた
「萌えフレーズ100題」よりNo99&黒玄で48手からNo4。
黒玄祭絵チャ第1回目だったかで「本格的に泣かせてあげよう」とか、会話の流れで出したら某方が「ぜひそれでSSを……!」とか言ってくれて、
出てきたネタでした。
- 2013/09/17 (火) 06:13
- 黒玄