作品
心のままに病みゆく果て
※ダーク鬼畜系なので、苦手な方はご注意を。
――さて、どうしようか。
――いけない子にはお仕置きしないとね。
そういって、黒鷹に無理矢理口付けられて、何かを飲まされた。
――今に、わかるよ。……その薬の効果はね。
……そう言って笑った顔は、ぞっとするほどに綺麗で残酷な色を浮かべていた。
***
「……く……そ…………! あいつ…………!」
悪態をついても、あいつが来る気配もなければ、後ろ手に縛られた拘束が解けるわけもない。
あの後。
薬で身体の自由が利かなくなると、黒鷹は何をしたのか、いきなり知らない場所へと一瞬のうちに俺を連れて来た。
比較的小さな作りの部屋は壁が全て鏡。
――何簡単なことさ。
人の自由が利かないのをいいことに、服を全て脱がせてから、ご丁寧に手首、足首を縛りつけて俺を床に転がせてから、黒鷹が口元だけで笑った。
――しばらくの間、そうしていたまえ。適度な頃合いを見計らって迎えにこよう。
「趣味の……悪……い……っ」
身体の方は最初に比べると、多少は動けるようになってきたが。
……問題は別の効果が表れたこと。
触れてもいないのに、身体の中心が熱い。
疼き始めたその部分を触れられないのが辛かった。
だけど。
黒鷹の狙いはそこだろう。
そうやって、俺が黒鷹を呼ぶのを待っているんだ。
呼んでなんてやるものか。
簡単にあいつの思い通りになんてならない。
***
「ふふ……中々頑張るじゃないか。本当に強情だね、あの子は」
部屋の外から、身体に訪れているであろう悦楽を押さえ込もうとしている玄冬の様子を見て、つい口元が緩む。
ずっとこうして見ていることなんて、さすがに気付いていないだろうね。
「……大した趣味だな、お前は」
「おや……お珍しい。貴方が話しかけてこられるとはね」
時折、塔の中をうろついていたのは知っているが、何かに関わろうとするとは思わなかった。
既にこの地に無き、主の残骸。
透けた身体は触れることも叶わない。
「何を考えている? お前はあれを守護するものだろう?」
「守護ならしてますよ。別に突き放してなぞいません。
ただ、罰を与えているだけですから」
「……悪趣味だな」
「……貴方に作られた鳥ですからね」
「我はお前ほど悪趣味ではないつもりだがな」
紫色の瞳が細められる。
言葉では諌めていても実際に口を出すつもりはないらしい。
「壊してみたいのですよ。私は。あの子を」
他の何に目を向けることもないように。
私以外の何も求めないように。
「……ほどほどにしろ。あれが見たら、さぞ呆れるだろうな」
「だから、ここに来たのに決まっているでしょう。
ここでは私の方の力が強く働きますからね」
見せるつもりもない。
例え相手が片翼だろうとも。
あの子は私だけのものだから。
ふと、玄冬を見ると身体を賢明に傾けようとしていた。
……ああ、そうか。床に擦り付けるつもりか。
石畳の床では痛いだろうに。
大分、耐え切れなくなってきているらしい。
頃合いかな。
「さて……私はそろそろ行きますよ。そろそろ出番のようですから」
「お前は本当に趣味が悪い」
「今更何を。貴方はご存知でしょう? 貴方でしたら、ここで鑑賞されていても構いませんよ?」
「生憎だな。そんな趣味は我にはない」
「まぁ、そうおっしゃると思いましたがね。失礼。また、いずれ」
「ふん……」
***
「いけない子だね、玄冬。君は今何をしようとしてたんだい?」
「……っ……!!」
身体をうつ伏せにしようと、重点を移動させてただろうタイミングを見計らって、部屋の扉を開けて言い放つ。
玄冬の身体がびくりと硬直した。
「大分、辛くなってきたかな?」
「ん……や……さわ……るな…………っ!」
玄冬に近づいて、跪く。
薬で敏感になってるらしく、髪と顔の輪郭をそっと撫でただけでも身体が震えている。
可愛いことこの上ない。
「……君が悪いんだろう?」
「ん……!」
耳元で低く呟くと、潤んだ目がぎゅっと閉ざされる。
「君は私だけを見ていればいいのに、他のことに気を向けたりするからだ」
「っあ……!」
存在を主張して、固くなっているモノに指一本だけ滑らせた。
零れた声に含まれている切なげな感情に興奮する。
それでもそれ以上は触れない。
指を離した途端に目を開いた玄冬は恨みがましい表情になる。
ふふ、きっと君に自覚はないんだろうけどね。
「ほら、顔を上げてごらん。……今の君がどんな状態かよく分かる」
「っつ! よせ…………っ!」
髪を掴んで、無理矢理顔を上げさせる。
ただでさえ興奮で紅潮した顔が鏡の中の光景を見て、さらに赤みを増した。
……ああ、ぞくぞくするね。
「……言ってごらんよ」
「ふ…………!」
身体の線を焦らすように掌で辿る。
肝心な部分には触れないように。
「私が欲しい、と。……ねぇ、玄冬」
「誰……が…………っ! んあ……!」
「君はそのままでいれば、やり過ごせるとでも思っているのかも知れないけどね」
まるで死刑の宣告でもするかのように、冷たく言葉を紡いだ。
「少なくとも、一回は達しない限り。その薬の効力は切れることはない」
「まさ……か……」
「信じる、信じないは君の自由だよ」
「……っ!」
絶望を浮かべた目に愉快な気分になる。
ほら、私を求めるしかないだろう?
「どうするんだい?」
「く…………」
「……言ってごらんよ」
もう一度、さっきと同じ言葉を繰り返す。
「求めてさえくれるなら、私は今の君に欲しいものをあげられるよ?」
「黒……た……か……っ」
とどめとばかりに、また少しだけ玄冬自身に触れる。
先端に溜められた雫で指を濡らし、その指で緩く擦ると、玄冬の顔が泣きそうな表情に歪んだ。
「ん? どうしたんだい?」
「……し……い……」
「それじゃ、聞こえない。……どうして欲しいかわからないよ?」
言いつつ、玄冬には気付かれないように自分の下衣を寛げる。
「欲し……い……。抱い……て、くれ……黒……鷹……!」
「……よくできたね……っ」
「あっ! ……やあぁっ!!」
腰だけ支えて浮かせた状態でうつ伏せにして、突き入れた。
潤滑剤を使ってないため、入れた瞬間だけ少し熱く擦れたような感覚が来たが、それでも中は興奮していたからか、柔らかくうねって纏わりつく。
泣いて擦れた声はより一層情欲を煽りたてる。
「泣くほど、私が欲しかったかい?」
「……ん…………!」
ろくに聞こえてないのか、肯定なのか、否定なのかもわからない。
焦らしすぎたかな。
内部の熱に誘われるように腰を動かす。
支えた玄冬の身体から震えが伝わる。
「黒た…………キ……た…………っ!」
「いいよ? そら……っ」
「や! ああ!!」
玄冬が泣き叫んで、白濁を散らしたのと、私が玄冬の中に吐精したのはほぼ同時だった。
そのまま意識を失って、力の抜けた玄冬の身体に覆いかぶさりながら呟いた。
「絶対に、渡さないよ」
世界にも、あの緋色の目をした子どもにも。
君は私だけのものだ。
君が望んでいないのだとしても、私は世界の滅びよりも君を選ぶ。
……求めなさい、私を。
私だけを。
死を与える以外のことなら全て叶えてあげるから。
濡れた目元に口付け、涙を唇で吸い取る。
それは暗い闇の中での確かな誓いだった。
2005/02/25 up
黒玄メールマガジン(PC版)第4回配信分より。
当時、某Kさまとメッセで話した『全面鏡張りの部屋にて放置プレイで玄冬を泣き叫ばせる鬼畜な話』をふらふらと書きたくなった結果w
基本的に得意分野は甘々か切ない系なので、鬼畜はどうも上手くいきません……。
- 2013/09/19 (木) 00:11
- 黒玄