作品
揺さぶられるままに
[Kuroto's Side]
「ん…………んん!」
わけがわからない。
それは突然訪れた。
部屋に入ってきた知らない男に、突然目隠しをされて床に倒された。
目隠しをされる前に最後に視界に入ったのは金の瞳。
背中にあたる堅い感触が痛いと思ったよりも早く、服が脱がされ、身体の中心に裂かれるような痛みが走った。
……なのに、身体を揺さぶられていくうちにそれは気にならなくなる。
どうしてだろう。
痛みよりも熱に焦がれる思いがするのは。
「……痛いだろう?」
ずっと一言も口を利かなかった相手がそう言った。
……知らないはず、なのに。
「苦しいだろう? こんな目にあうのは」
どうして、この声が懐かしいと思うんだろう。
「……私を殺したいだろう?」
哀しい響きの入った声につい返答した。
「……いやだ」
「…………」
「殺したく……なんか……っない……!」
「……君が私を殺さないのなら、私が君を殺すよ?」
「それで……いい……っ!」
その言葉に、低い笑いが返る。
どこか嘲笑するような響きで。
「変わらないね」
一変して穏やかな、優しい声になる。
何時の間にか、動きは止まっていた。
「せっかく育て方を変えてみたのに」
頬に触れた感覚は……指。
温かいそれが何故かとても愛しいと思った。
知らないのに。
お前は誰だ?
……俺は誰だ?
「いいよ。……もういい」
髪を撫でてきた手に、どうしてだか罪悪感があった。
無性に謝りたかった。
[Kurotaka's Side]
「ん…………んん!」
ずっと手元に置かなかった。
遠くから眺めているだけにした。
賭けだったのだ。
愛して育てなければ、この子は私を殺してくれるかと。
初めて対面して、言葉も言わずに犯した。
……ぞっとしたよ。
今の君とは初めてなのに、君の中は私に合わせてうねり、熱で包んでくれるのだから。
拒否ではなく受け入れようと。
「……痛いだろう?」
耐えられずに口を開いた。
ああ、やめてくれ。
「苦しいだろう? こんな目にあうのは」
受け入れようとしないでくれ。
「……私を殺したいだろう?」
……許さないでくれないか。
「……いやだ」
「…………」
「殺したく……なんか……っない……!」
「……君が私を殺さないのなら、私が君を殺すよ?」
「それで……いい……っ!」
変わらない、のか。
玄冬はどこまでいっても玄冬だと、そういうことだろうか。
「変わらないね」
愛しい子。
何時だって君は自分を犠牲にする。
「せっかく育て方を変えてみたのに」
この世界は君を愛していないのに。
それでも君は愛するのか。
「いいよ。……もういい」
きっと、そんな君を私は愛しているのだから。
2005/01/31 up
元は一日一黒玄で書いていたもの。
恋愛に関するいくつかのお題が配布されている、「アダルトなお題」からNo10。
春告げの鳥の流れで、育て方をいつもと変えた黒鷹。
- 2013/09/27 (金) 18:43
- 黒玄