作品
痙攣
おそらくは互いの気分、というのもあったのだろう。
私もごく自然に呼吸するように玄冬に触れたが、この子も抗うこともせず、そのまま身体を預けてきた。
「……ん……はぁ……く…………ろた……」
いつもは抑えようとする喘ぎ声も、今日は余裕がないのか私が導くままに上げている。
普段のように、抑える様子も可愛いのだが、これも中々悪くは無い。
上気して綺麗な薔薇色に染まった肌を抱いて、浮いた汗を口で吸い取ることにさえ反応して、その身体が軽く痙攣する。
潤んだ瞳に映るのは情熱の炎。
ああ、なんて艶っぽいのだろうか。
そんな君を見られることもそうないから、少しでも長く愉しみを味わいたくて、先ほどから、与える刺激はわざと弱くしてある。
私自身ももどかしくて少々辛いものがあるが、今はただ、壊れてしまうほどに感じて欲しい。
「……ろ……たか…………っ。頼……っ…………も……」
「うん? ……何、だって……?」
熱を含んだ玄冬の声に応じた自分の声も予想以上に擦れていた。
「も……いい……からっ……」
「……何が……もういいって……?」
「ひ……! っ……あ……!」
そっと玄冬の中に指を入れて、少し固く出っ張った場所を軽くひっかくと
熱いその中が収縮して、指を取りこむように纏わりついた。
その様子にどくりと自分の中心にさらに熱が集まる。
直ぐにでも入れてしまいたい衝動を説き伏せて、ゆっくりと指を中で這わせた。
「ほら。……ちゃんと、言いなさい。……玄冬……。君はどうして欲しい?」
「……っ……くそ……わかって……るくせ……にっ」
涙目で睨まれてもね、可愛いだけだよ。
「……そうだな、わかっている。けど、君から……聞きたい……っ」
「あ…………っ! や……!!」
先走りの零れた鈴口に指で軽く撫でてやると、小さな悲鳴が上がった。
「黒鷹……っ。……い……れ………………っ……!」
泣きそうな声に自分でも結局堪えられなくなった。
実際、私にももう余裕なんてほとんどない。
「……足を広げて……力を抜きなさい」
「ん…………」
指を中から抜いて、代わりに入り口に自分のモノを宛がい、一気に貫いた。
「ひゃ……ああっ!! や……!!」
「…………っく…………ぅ……っ」
熱い粘膜に引きずり込まれそうになり、思わず歯を食いしばった。
自分でもそうとう追いこまれていたらしい。
かろうじて達せずに済んだのは、玄冬が反射的に背中に縋る手に力が入って、爪が私を傷つけたからだ。
余裕の無いときに、つい背や肩に爪を立ててしまうのは、この子の癖。
こっそりとその痛みに感謝し、少し落ちついてから玄冬を抱きしめる。
「……悪…………い…………黒た……か……」
「…………ん?」
「……俺……きょ……あんま……りもたな…………っ」
途切れ途切れの声は苦しそうで、確かに限界が近いのが読み取れた。
「構わない……好きに……イってしまいなさ……い」
「ん……っ……」
「……どうせ、私も……っそんなに我慢できそうに……ない、からね……っ」
「や……ああっ……あぅ!」
抱えた玄冬の太股が小刻みに震え始めるのを感知しつつ、競り上がる情欲のままに動き、ひたすら奥へと埋めるように腰を打ちつける。
肉のぶつかり合う音と粘着質の水音が絡んで、酷く淫らだ。
息の詰まるような感覚に誘われるまま、夢中で抱きしめる。
「黒……たかっ……く…………ろ……っ!」
「ふ……っ……」
縋るように私を呼ぶ声が引き金になった。
閃光が貫くような衝撃。
……そして痙攣。
そのままがくりと力が抜けて、玄冬の上に覆い被さった。
触れた腹の感触に玄冬も達したのはわかったが、どちらが先だったのかはわからない。
このままでは重いだろうとは意識の上では知覚するのだが、何も言えず、動けなかった。
あるのはただ、虚脱感。
深く余韻の残る快楽。
「……大丈夫……かい……?」
しばらくして、ようやくそれだけ言う事ができた。
まだ動くことはできなかったけども。
「……こわれ……かと思った…………」
まだ、荒い吐息は玄冬も快楽から抜けられていない証拠。
「すまない……重い、だろう?」
「いや……そのままで……構わない……。
こうして……くっついているのも……気持ちいい……から」
「そうだね……」
少しだけ首を傾けて、耳に口付けを落とすと、玄冬が笑った気配がする。
君も思ってくれているだろうか。
こうしている瞬間が幸せだと。
そうして、ただ身を委ねた。
温かい温もりとまどろんで行く意識の中に。
2004/06/11 up
「惑楽」(お題配布終了)で配布されていた
「萌えフレーズ100題」よりNo87。
- 2013/09/29 (日) 02:00
- 黒玄