作品
時雨茶臼
「ん……あ……」
ぎこちなく私の上で動く玄冬から、時折微かに声が零れ落ちる。
自分で動くことに余り慣れてはいないからこその、躊躇いと羞恥を含んだ動き。
それこそが、より私の興奮を高めているとは知らないのだろうな。
そっと玄冬の腰に手を回すと、怪訝そうな顔をされた。
「黒……鷹?」
「私も……一緒に動こう」
「……気持ち……よくなかった、か?」
その言葉の意味するところを読みとって、何やら微笑ましくなる。
腕を伸ばして、汗で額に貼りついた玄冬の髪を解きほぐして、不安そうな顔をしている子に笑いかけた。
「そうじゃないよ。ただ、もっと君の声が聞きたいから、ね」
「や……っあ……!」
言い終わらないうちに、突き上げて挿入を深めると短い悲鳴が上がる。……そう、その声が聞きたかったんだよ。
そのまま、休まずにベッドのスプリングを使って幾度も繰り返す。
動く都度にひやりとした感覚の双玉を収めた玄冬の袋が、私の茂みに触れる。
その奥に目をやると自分自身が玄冬に出入りしているのが見え、先端に透明な雫を貯めているのと相まって、酷く淫らな光景だ。
「よく……見えてるよ」
「……に……が……っ」
「君が私を……咥えこんで……繋がった部分が震えてるのが」
わざと羞恥を煽る言葉を口にすると、玄冬の頬が一層赤く染まる。
「…………っ……馬鹿……っ! 口に……す……っ!」
「く……」
そして、言葉に反応してきつくなる締め付け。
一気に押し寄せた快楽の波には逆らわず、頂きを目指して、ただ動き続ける。
「……く……ろ鷹……っ!」
潤んだ瞳で名前を呼ばれる。
限界は近いね?
「いいよ……もう合わせられる……から……一緒……にっ……」
「ん……! うあ……っ……!」
「……っつ……玄……冬……!」
一際大きな震えが繋がった箇所に走ったと思った瞬間に、深いところで迸らせた。
次いでぽたりと温かい感触が私の胸や腹のところどころに落ちる。
支えてる腰は細かく痙攣していて、呼吸が荒い。
身体を起こしてるのが辛そうだった。
「……おいで」
「ん……」
ゆっくりと上半身を倒してきて、玄冬が体重を預けてくる。
耳元で聞こえる呼吸はまだ荒く、そのまましばらく言葉もなく、息をついている。
私も動くにはしんどいが、少し顔だけを傾けて、玄冬の頬に口付けた。
「本当に……可愛いね、君は」
身体の反応も、上がる声も、潤む瞳も。
何もかもが。
「……あまり、可愛い、とか……言うのはよせ……」
仕方ないだろうに。
そんな言葉さえ可愛いと思うのだから。
……ああ、末期だね、我ながら。
2004/07/31 up
黒玄で48手からNo13。
いわゆる騎乗位の基本系にあたるのですが、これの『時雨』とは濡れた結合部分が攻の目にさらされるという意味合いなのだそうで。
雅なエロスを醸し出す日本語って素晴らしい(笑)
末期なのは書き手だと、書いた直後にセルフツッコミ。
- 2013/10/04 (金) 02:52
- 黒玄