花帰葬-Novel Under Ver.

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落ちる

「……うん? 灯りが点いてる?」
 
妙な夢を見て、うなされて起きて。
寝汗をかいていたのが、気持ち悪かったので、軽く汗を流そうと、浴室に来たら、中には灯りが少しだけ点いていて、微かに水音が聞こえた。
この家には、2人しかいないのだから、誰がいるかなんていうのはわかりきっているが。
とっくに寝たものだと思っていた。
まぁ、別に躊躇する理由もないから、そのまま、脱衣場で服を脱いで、浴室に入る。
 
「おや、玄冬。どうしたんだね、こんな時間に?」
「……お前こそ、何をやっている」
 
確かに黒鷹は湯に浸かってはいたが、その傍らにはワインの瓶とグラスが置いてあった。
しかも、瓶の中身は既に半分ほど減っている。
いつから、飲んでいたのやら。
 
「せっかく星が綺麗な夜だったからね。
眺めながら、軽く飲もうかと」
 
家の浴室は外の光が天井から取り込まれる造りになっている。
見上げた天井から見える空は確かに星が綺麗だった。
だから、灯りは僅かだけ、最小限にしか点けていなかったらしい。
黒鷹の部屋にもバスルームはあるのだが、窓は無い。
あそこは大抵行為の後に、軽く湯を浴びるときに使ったりしているくらいだ。
 
「湯に浸かりながら、飲んでいたら酔いが回るぞ」
「このくらいなら、まだ大丈夫さ」
「……去年だったか、やっぱり酒をここに持ち込んで、うっかり酔ってそのまま寝て、翌朝、見事に風邪をひいたのはどこのバカだ」
「……細かいこと、覚えてるね。君は」
「忘れるか……っ」
 
朝に見つけたときは、本当に心臓が止まるかと思った。
理由を聞いて、どれだけ呆れたか。
 
「まぁまぁ。今日は本当に大丈夫だって。
さすがに寝ている君を起こすのは忍びなかったから、一人で飲んでいたんだが、せっかく来たんだ。
君もこっちにきたまえよ」
「……いいけどな」
 
一緒にいるなら、最悪、酔いつぶれても風邪をひかせる前に、部屋に連れ帰ればいいだけのことだ。
軽く身体を湯で流してから、黒鷹の隣に身体を沈めた。
 
「でも、グラスは一つしかないだろう」
「必要ないと思うがね。ほら」
「んっ…………!」
 
黒鷹がワインを口に含んで、そのまま俺に口付けてくる。
唇を割られて、喉にワインが流し込まれる。
甘い香りと共に舌が口の中を彷徨って、粘膜を刺激していく感覚に、微かに身震いがする。
 
「必要ない、だろう?」
「……っ…………」
 
唇が離れたときにはすっかり息が上がっていた。
薄暗い中で、黒鷹の金の眼だけが、やけに光を湛えているように見える。
 
「そういえば、君はどうしてこんな時間に?」
「……夢を、見たから」
「夢?」
 
自分の声が少し掠れた。
 
「妙な……夢だったんだ。それで起きて。
汗をかいていたから流そうと」
「そうか」
「ふ……」
 
もう一度、黒鷹がワインを口に含んで、口付けが落とされた。
今度は飲ませるというより、明らかに悦楽への刺激の意味で。
歯列を舌が辿っていって、飲みきれなかったワインが唇の端から零れた。
顎を伝ったワインが水面に落ちて、小さな水音を立てる。
 
「ちょ……黒鷹……っ」
「それなら、夢を見ないほどに疲れさせて、眠らせてあげよう。
反応もしてくれてることだしね」
「ん……!」
 
湯の中で、黒鷹の手に俺自身を触られて、声が漏れる。
言われたとおり、二度の深いキスは確かにそこを反応させるのに十分だった。
触れられてますます、熱くなるのを見透かされてるかのように、黒鷹はそのまま、もう一方の手でゆっくりと首筋に手を滑らせ、上から下へと身体の線に沿わせていく。
 
「ここで……する気、か」
「いけないかい?」
 
それでも、往生際悪く確認してみると、酔いの所為ではない、熱っぽさを含む声が返ってきた。
 
「のぼせて、気を失っても……っ……置いて……いくからな……!」
「好きにすればいいさ」
「……あ……っ……黒……た……」
 
下に伸びている手が先端に刺激をし始めたのを感じて、声が詰まる。
その隙に、身体を抱き寄せられて、耳をごく軽く甘噛みされる。
背中側に回った手が腰まで滑り落ちて、撫でられ、奥のほうに触れてきて、身体が反射的には跳ねた。
 
「ちょ……そっちはまだ早……!」
「……そうでも、ないみたいだよ?」
「ひぁ……っ……」
 
その場所を指の腹で優しく撫でられて、身体の奥で疼きが走る。
確かに早いともいえない。
繋がっても問題はないくらいに感じているのだから。
反応が早いのは、僅かに入ったアルコールのせいだと、いっそ思ってしまいたいほどだ。
 
「……いいね?」
「う……」
 
反論が出来るはずもないのも、黒鷹にはわかりきっていることだろう。
満足そうな笑いの後、抱かれた腕がほどかれ、黒鷹が片腕で浴槽の縁に支えるように捕まり、少しだけ身体を浮上させた。
俺からは触れてなかったけど、黒鷹の方も十分に反応していたのが見て分かる。
 
「私の上に乗って……そのまま腰を落とせるかい?」
「……ああ」
 
黒鷹の身体に跨るようにして、狙いを定めると黒鷹のモノに手を添えて、繋がる場所に宛がう。
湯ではないもので濡れた先端の感触に、また疼きが走るのを抑えて、息を詰めて力を抜くと、一気に腰を落とした。
ずるりと黒鷹が深いところまで入ってくる。
 
「くっ……あつ…………っ」
「ん……! 少し、お湯が一緒に入ったね……。大丈夫かい?」
「へ……いきだ……」
「動くよ。捕まっていなさい」
「ん! ……あっ……!」
 
黒鷹の肩にしがみつくと、それを合図にするように黒鷹が動き始める。
湯の浮力を借りて、軽い力ではあるけれど、突き上げる速度はいつもより速い。
たちまち追い上げられていくのに、どうしてか目の前の顔はまだ余裕を持ってるように涼しげだった。
 
「……な……んで……っ」
「うん?」
「お前……っ……そんな余裕っ……ある……?」
「……少し酔いが回ってるからね。イキにくいからかな」
「そんなの……っ! うあっ……!」
「一度イってしまって構わないよ? ……次で合わせてあげるから」
「く……! ……っつあ……!」
 
構わないと言いつつも、もとよりイかせるつもりで動きをより速くするのに、抑えが効かず。
結局、そのまま果てた。
湯に落ちた白濁がぱたぱたと水音を立てて、羞恥に顔が火照る。
黒鷹の肩に置いた、自分の手が震えてるのが分かってしまった。
 
「……じゃあ。次は私も。……ほら」
「えっ……や! まだ、動……くなっ!」
 
達した直後は、通常よりも刺激に弱い。
なのに、そんなところを今までよりも強い力で突き上げられて、たまらず肩に置いた手に力が篭もる。
 
「すまない……ね。私も……余裕がなくなってきた、ようだよっ……!」
「ひっ! ……やっ、あっ!!」
 
中を掻き回されて、悲鳴を上げた。
浴室に響く声と水音がどこか別の世界でのことのようだ。
足はとうに、浴槽の床を離れているので、宙に浮いた感じに、何かの拍子にどこかに落ちていくのではないかという気さえする。
ただ、繋がっている部分の感覚だけが、やけに現実味を帯びている。
身体の中で響く水音。
繋がった部分の熱。
湯の温度の感覚がほとんどないのに気がつく。
 
「く……ろたか……っ……また……くる……っ! ……あっ……!」
「……いいよ。今度は……一緒……にっ」
「くあっ!!」
 
身体を引き寄せられて、大きな水音が聞こえたのを最後に意識は途切れた。
 
***
 
「……ん……あ……ここ……は」
 
眼が覚めて、見上げて目に入ったのは天蓋の布地。
黒鷹のベッドだ。
何も身に着けていない肌に、昨夜のことを思い出す。
触れ合って、二度目に達した後の記憶がない。
覚えていないということは、多分黒鷹がここまで連れてきてくれたんだろう。
身体の感覚から察するに、どうやら意識のない間に後始末までしておいてくれたらしい。
まいった。
黒鷹が酔いつぶれたら、部屋に連れ帰るつもりだった俺の方が、結局、手を煩わせることになってしまったようだ。
隣に顔を向けると、黒鷹がまだ眠っていた。
どういうわけか普段は俺よりもほぼ確実に起きるのが遅いくせに、一緒に眠ったときは早く眼を覚ましていることが多い。
でも、今日はまだ起きる気配もない。
酔いが回っていたせいなんだろうな。
カーテンを通して、外の明るさが伝わっていることから、夜が明けてるのがわかる。
多分、まだいつも起きるよりは早い時間のはずだ。
 
「……もう少しくらいいいか」
 
そっと黒鷹の身体に手を回すと、おそらく無意識になんだろうけど、黒鷹が俺の身体を抱き寄せてきた。
触れる体温が心地よい。
その体温に眠気を呼び起こされて、もう一度目を閉じた。
次に目が覚めるときは、どちらが先に起きてるだろうか。
 
「おやすみ、黒鷹」
 
昨夜、言えなかった挨拶だけ小さく呟いた。
聞こえてはいないだろうけど、きっと黒鷹も聞こえていない俺に言ってくれただろうから。

2004/10/23 up
「惑楽」(お題配布終了)で配布されていた
「萌えフレーズ100題」よりNo84。
黒親子宅のお風呂は結構豪華な作りと勝手に予想w

  • 2013/10/07 (月) 02:22
  • 黒玄

タグ:[黒玄][黒鷹][玄冬][日常ほのぼの][玄冬視点][萌えフレーズ100題]

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