花帰葬-束の間の楽園に舞う花は

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第04話:触れる体温はどこまでも熱く(年齢制限有。無しで進めたい場合は第05話へ)

「……っ…………あ」
 
押し殺された声が切なげに零れる。
首筋にあてた唇から伝わる微かな震え。
体温はさほど変わりはない。
けど肌の感触がやはり随分と柔らかい。
舌で首筋を舐め上げると、玄冬の指が私の服をきつく掴む。
ああ、やっぱり変わっているようでどこか反応が懐かしいな。
微笑ましく思いながらも、服の上から胸に手を這わせてみる。
大きいわけでもないが、不満に思うほど小さいわけでもない。
撫でやすくて丁度いいくらいかも知れないね。
 
「釦を外して、直接触れるよ」
「う…………」
 
服の下から現れた白い肌。
浮き出た鎖骨に口付けながら、服の釦を外していく。
上衣を脱がせ、上半身の大方の肌が見えたところで身体の線に沿って手を滑らせ、胸を覆う下着の隙間から指を中に潜りこませた。
柔らかい弾力を持ったぬくもり。
男にはないもの。
指先だけでなく、手の全てで触れたい。
どう成長してくれたのかを確かめたい。
 
「外すから、少し上半身を浮かせなさい」
「これで……出来る、か?」
「ああ」
「あ……」
 
手を玄冬の背の方に回し、下着の留め金を外す。
下着を抜き取り、無防備にさらけ出された胸。
白い肌の頂に薄い紅色の突起が映える。
掌でそっと全体を包むようにすると、玄冬が目を逸らす。
 
「……悪い」
「うん?」
「……あんまり……その……大きく、なくて」
「何を言うかと思えば」
「だって! …………お前は好きだろう。
その、大きい胸の方が。昔だって本買ってたし……」
「あー……」
 
この子も変なことを覚えていてくれるものだ。
確かに。
昔、玄冬と抱き合うようになる前に、年頃だから、こういうのもあっていいだろうと、些か自分の好みに走った本を揃えた事はある。
金髪で美人で……巨乳の女性に偏ったものを。
 
――……何だ、この本?
――ふふふ、巨乳は男の浪漫だよ、玄冬! 
柔らかくたわわに実った胸は、男に深い喜びと安らぎを与えてくれるものであってだね!
――俺は別にそんなに興味がないんだが。
――いけない……いけないよ、玄冬! 
巨乳に興味がないなんて、男として人生の八分の一は損しているよ!?
――何の基準による数値だ、それは。
 
今にして思えば、何ともな発言だ。
そして、そんなところを覚えていてくれるこの子が可愛くてたまらない。
 
「馬鹿だね。あれは単純に容姿の好みを言っていただけなのに」
「ふ……」
「好きな相手のなら、大きさなんて些細なことにすぎない。
そうだね、実際に抱き合うなら大きさよりも感じてくれるかの方が気になるな」
「え……あ…………っ!」
 
右側の突起に口付けを落として、そのまま口に含む。
刺激で固くなったそれに舌を這わせ、もう一方の突起には指で円を描くように刺激を与えると、呼吸が荒くなったのが伝わる。
 
「やっぱり胸は男性だったときより、女性の方が感じやすいかね。
……これなんかどうだい?」
「……ひ…………っあ!」
 
下側の胸の付け根あたりを探って、柔らかい中にも少しコリっとした感触の部分をそっと指で転がすように触れると、玄冬の顔に一気に朱がさした。
 
「や……何…………」
「乳腺のあたりだよ。……そうか、このあたりも感じるみたいだね」
「それっ……強……すぎるから、もっと……」
「優しく触れた方がいい?」
「……ん」
 
甘えるような声音に、湧き上がる愛おしさ。
唇を重ねて、体重をかけないように一方の腕で身体を支えながら、もう一方の手でまだ衣服を纏ったままの下腹部に触れる。
服の上からでもわかる、なだらかな感触。
一頻り撫で上げると、服と素肌の隙間に指を滑らせ、服の釦を外す。
玄冬が息を呑んだのが伝わった。
 
「……こっちも触るからね」
「…………っ」
 
無論、否定の言葉はない。
そのまま手を差し入れて、身体の中心に指先を伸ばす。
温かく、湿った感触が指先に触れた。
布越しでわかるくらいにもう濡れている。
柔らかいその部分に少し力を入れて触ると、玄冬が目をきつく瞑った。
 
「……凄い。もうこんなに濡れているのか」
「ば…………っ……口に……す………………や……!」
 
直接下着の隙間から指を滑り込ませる。小さな水音とじゃり、と茂みが擦れる音。
指が温かな蜜で濡れた。
見たい。
どんな風になっているかを見ながら、触りたい。
鳴ってしまったのは、自分の喉か、玄冬の方か。
 
「全部脱がせるよ。腰を浮かせなさい」
「…………ん」
 
言葉に従い、少し腰を浮かせてくれたところで下着ごと下衣を取り去った。
その拍子に玄冬の内腿にも微かに蜜が付着し、ふわ、と甘ったるい匂いが漂う。
何も身に着けない、露な姿は凄く綺麗だった。
ゆるやかな優しい線を描く肢体。
興奮でほんのり染まってきている白い肌。
……少し困ったような表情の玄冬。
生まれたままの姿とはよく言うけれど。
やはりひたすら保護欲を掻き立てる幼い頃と、それだけでなく、踏みにじってもしまいたいと思う今とでは違う。
子どもに対しての純粋な愛情に加えて、愛する相手に対しての欲をさらけだした愛情。
性欲は愛情と等しいわけではない。
でもやはりセックスは愛情を確認するコミュニケーションでもある。
全てが欲しい、と思ったらしたくなるのが当たり前だ。
自分の服も全て脱いで、全身で玄冬を抱いて。
得られる熱に眩暈がするほどの幸福感。
初めてのようで、やはり初めてではない。
新鮮だけど、懐かしい。
ずっとこうして触れたかった。
 
「……幾度も夢に見たよ」
「っ…………あ」
 
一箇所残らず触れようと、唇と指を滑らせていく。
首筋も、肩も、腕も、胸も、腹も。
 
「ずっと焦がれていた。……本当に君は待たせてくれる」
「あっ…………!」
 
玄冬の太股に手をかけると、身体が強張る。
その様子に苦笑しながら掌で脚を撫でた。
 
「脚を開いて。……見せなさい、全部」
「…………ん……あ……」
 
控えめに開かれた脚をさらに開き、脚の間に自分の身体を滑り込ませる。
脚の間の秘所が濡れて、仄かな明かりで照らされている。
興奮して充血し、僅かに開いたようになってる部分。
蜜に塗れた薄い花弁、男性のモノよりもずっと小さな花芯。
中心に指を伸ばすと温かく包まれる。
少しだけ力を篭めると、蜜の助けを得て、指は容易く沈んだ。
まだ触れているのはほんの入り口だけれど。
 
「……黒……鷹」
「……痛むかね?」
 
小さく振られた首。
でも、戸惑っていそうなのは確かだ。
一端、指を離れさせて掌全体で、その周囲を撫で回す。
触れることにまず慣れさせようと、軽い刺激だけを与え続ける。
 
「う……あ……」
「……気持ちいいかい?」
「ん…………」
「これは?」
「………………っあ!」
 
濡れた指で小さな固くなった部分に触れる。
指先でくるくると捏ねると玄冬の顔が悦楽に歪んだ。
様子を見ながら、薄皮から露出させ、指先で弾くと小さい悲鳴が上がった。
少し辛そうな。
 
「すまない。痛かったかな」
「ん……ちょっと」
「……これなら、大丈夫かな」
「ちょ……待っ……」
 
指で触れていた場所に顔を寄せると、玄冬が慌てたような声を出したが。
 
「……昔だって、よくやってたじゃないか」
 
その一言だけ突きつけて……そこに舌を這わせた。
 
「ひ………………あ……っ」
 
私の唾液が玄冬の愛液と交じり合って溶け、それが塗りこめられていく。
舌先で感じた小さな固いものはやはり感触だけなら男のモノと近いけれど、味が全然違っていた。
わざと音を立てて、舐め上げると触れている脚から震えが伝わる。
もっと震えるほどに感じさせたい。
指で肉唇を押し広げながら、一本だけ内部に踏み込む。
 
「あ…………!」
 
濡れた襞が優しく蠢いて指を包む。
そうっと指を奥まで進ませるとやがて、指先に周囲よりも固い感触が当たった。
子を育む小さな部屋への入り口。
突き当たる感触は男性では得られないもの。
この中に自分が包まれる想像をして、たまらなくなった。
もう、我慢がきかなさそうだ。
指を抜き、顔を上げて玄冬を見る。
熱っぽい視線が誘うようにしか見えなかった。
 
「玄冬。……大丈夫かい?」
「………………あ」
 
入り口に軽く自分のモノを宛て、尋ねる。
直ぐにそのまま繋げたい衝動を堪えて。
 
「……ん……平気……だ」
「痛い思いをさせたら、すまない」
「いい。……その……この身体じゃ初めてだし、そのくらいは覚悟……してるから。
……途中で止めるなよ」
「……止められるわけがないよ、もう」
 
額に一度口付けを落として。
先端で少し周囲を解すようにしてから……挿れた。
 
「……………………っ!」
 
挿れてすぐに少し抵抗のある場所に当たったが、躊躇ったのは一瞬で、そのまま突き入れた。
ぷつ、と何かが切れるような感触が伝わった直後、ずるりと引きずり込まれるように水音と一緒に奥まで入る。
先ほど指で触れた子宮の入り口に先端が包まれ、根元まで玄冬の中に収めた。
温かいぬかるみが細かく震えている。
突き動かしたい衝動をやり過ごそうと、深く息をついて、ようやくそこで、背に走った痛みに気付く。
……これは変わらないね、君の癖。
背に縋って爪を立てる。
久しぶりの痛みも心地よい。
 
「……ろ……たか……」
「……入ったよ、全部。ほら」
「……あ」
 
玄冬の腰を抱えて、繋げた部分を見せる。
そこを指で辿ると玄冬の表情が綻んだ。
 
「……やっと、だ。やっと君と繋がれた」
 
前に玄冬が逝ってから……いや、違うな。
この子の前は確か子どものうちに奪われてしまった。
だからその前だ。
何年待ったかなぞ、考えたくもない。
 
「……そうだな、やっと……」
 
背を傷つけていた指が優しく撫でてくれる。
 
「奥まで入ってるのはわかるかい?」
「ん…………」
「……少し動くよ。辛かったら言いなさい」
「ああ…………っん」
 
小さく、存在を馴染ませるように身体を揺らす。
少し強張っていた内部がまるで溶かそうとするかのように、徐々に柔らかく包んでくる。
揺らすたびに鳴る水音が酷く気分を掻き立てた。
焦ってはいけないのに。
強く突き上げたいという衝動に負けそうになる。
一度だけ、と自分に言い聞かせて大きく動いて、奥を突き上げた。
 
「あああっ!」
「……っ……痛む……かい?」
 
戸惑う表情の玄冬は何と言っていいのかわからない、という様子だった。
少なくとも痛みだけ、ではなさそうだ。
初めての繋がりだ、痛みがどうしようもないものだとしてもそれ以外のものもあげたい。
また動きを小さくして、指をそっと小さく膨れた花芯に伸ばす。
形を確かめるように、やさしく指先で撫でると玄冬の目が大きく見開く。
 
「や……触らな…………」
「感じるだろう? …………触るな、なんて聞けないよ」
「ふ…………!」
 
指先で撫でていたそれがほんの僅か大きくなる。
大きさに差はあっても、そんなところは男性器の反応とよく似ている。
付け根から上に向けて軽く擦りあげると、小さな悲鳴が断続的に上がる。
そういえば、この子は男性だったとき裏側が特に弱かった。
 
「やぁ…………っ……黒……た……」
「…………これは?」
「うあっ!」
「…………っ」
 
指先に力を篭めて、軽く押しつぶすようにした途端に甲高い悲鳴があがり、内側がぎゅっと締め付けられる。
その拍子にまた背にたてられた爪の痛みに何かが切れた。
 
「……玄……冬」
「っあ! やっ! ああ!!」
 
止まれない。
濡れた小道の中を衝動のままに擦りたてる。
淫らに奏でる水音に理性が焼き切れていく。
が、快楽の頂が見え始めた瞬間、どこかが冷静に警鐘を鳴らした。
 
「……っと……中じゃまずい…………か……」
「………………! ……や…………っ」
 
反射的に身体を引こうとした瞬間、腕を凄い力で掴まれる。
泣きそうな目で玄冬がどうして、と言わんばかりの表情だ。
……気付いてないんだろうか、この子は。
 
「……君、今の自分の性別を忘れてやしないかい」
「え…………?」
「男同士で抱き合っていた時とは違う。
……セックスはコミュニケーションでもあるけど、
元来は生殖活動になるんだよ。
男女で抱き合っているなら、子どもが出来てもおかしくない」
「あ……」

呆然とする玄冬につい苦笑いしてしまう。

「……やっぱり気付いてなかったね」
「だって……。……出来る、のか?」
「……救世主の血が連なっていっている以上、玄冬だって可能性はあるよ」
「子ど……も……」
「君がそれでも構わないというのなら……」
「…………いい」
「え?」
「それでも、構わない。……だから、その…………んっ!」
「……言ったのは君だ……からねっ……」
「あっ…………んん…………! 黒……鷹……っ!!」
 
理性の糸はあっさりと切れる。
激しく動いても、優しく受け止めてくれる襞。
一層激しく貫いて、湧き上がってくる射精感を開放させるために、奥に叩きつけるようにひたすら突いた。
 
「っつ………………!」
「あう…………あ…………っ……は…………」
 
そうして、一番深い部分で解き放つ。
繋がった部分が出した熱を吸い取ろうとするかのように、優しく蠢く。
悦楽の脱力感に玄冬の上に覆いかぶさると、髪に指が絡められた。
 
「………………すまない」
「…………うん?」
「最後の方は加減できなかった。……痛かっただろう?」
「大丈夫だ。……思ってたよりは痛みもなかったし……。
それに……その、久しぶりに抱き合えて……嬉しかった、から」
「……いけない子だ。
そんなことを言われると、もう一度したくなるじゃないか」
「…………馬鹿」
 
耳元で囁くとそんな風に言葉が返ってくる。
微かな笑い声と一緒に。
 
「もう少し……このまま抜かずにいても?」
「……ん」
 
全身で感じてる蕩けるような温もりがあまりに心地よくて、眠ってしまいそうだった。

  • 2008/01/01 (火) 00:03
  • 第一部:本編

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    • 第11話:春の祝福を受け、楽園の扉は開く(前編)
    • 第12話:春の祝福を受け、楽園の扉は開く(後編)
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