花帰葬-束の間の楽園に舞う花は

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第10話:どんな時でも愛しいから(年齢制限有。無しで進めたい場合は第11話へ)

「っ…………あ……ふふ」
 
緩やかに。
だけど、攻める手は緩めずに。
黒鷹が俺を子どもごと慈しんでくれる。
激しい衝動ではないけれど、やはり触れてくれる体温が心地良く、得られる安らぎについ笑みが零れてしまって仕方がない。
もう口付けも行為を始めてからだけで、何度交わしたかを覚えていないくらいだ。
 
「何を笑っているんだか」
 
黒鷹はそんな風に言うが、黒鷹の表情だってきっと俺と大差がない。
特に腹に手が触れるたびに、優しく笑っているのだから。
 
「お前だって笑ってる」
「私は君につられているんだよ。身体は大丈夫そうだね」
「あ……んんっ……」
 
黒鷹の指が腹を辿って、そのまま局部へと伸ばされる。
触れられた場所からじわりと広がった快感。
小さく鳴った水音に、つい合わせていた視線を逸らしたら、もう一方の手が俺の頭をあやすように撫でた。
 
「ちゃんと反応している」
「……でなきゃ、誘わない。それに……お前だって」
 
黒鷹の方だって、まだ俺がほとんど触れていない状態なのに、モノはしっかりと反り返っていて、その先端には雫を浮かべている。
 
「そりゃ、久々に触れる妻を前にして反応しなかったら一大事だ」
「ん……」
 
唇を重ねながら、黒鷹も自分のに触れて欲しいと言葉にする代わりに、俺の手を取ってその場所に導く。
掌に当たる熱く滑らかな感触。
手探りでも、何処が黒鷹の弱い場所かなんて、もう十分にわかりきっている。
軽く握って擦り上げたり、鈴口にそっと指先をめり込ませるようにすると、黒鷹の顔が悦楽に歪む。
 
「ん……っ。流石に久しぶりだとくるな……」
「強くはしてないぞ?」
「わかっているよ。
触れられること自体が久々だから敏感になってるだけだ」
「言えば、手や口でいくらでも触るのに」
 
つわりが治まって来ているから、そのくらいは別に苦でも何でもない。
寧ろ、黒鷹を感じさせてやれるのなら嬉しいくらいだ。
だけど、そう言っても黒鷹は苦笑いで首を振った。
 
「一方的にされるだけなんて不公平じゃないか。
たまにこうして、君の体調が良いときに触れ合えれば十分だよ。
無事に子どもが生まれてくるまではね」
「……自分が一方的にするのは結構好きなくせに。
お前、昔から自分がされるのは苦手だよな」
「そりゃ、君の反応している顔や困った顔をみるのが楽し……っ……。
ちょ、玄冬……少し強く握りすぎ……だよ」
「お前がそんなこと言うからだ。
これでも加減はしてるはずだぞ。
俺だって感覚はわかってるつもりだから。
どれだけ、お前に触ってきたと思っている。……黒鷹」
「……うん? ……何、だい」
 
握っていた力を少し緩めて、そっと扱きながら黒鷹の耳元で囁く。
 
「相手を感じさせたいと思っているのは、お前だけじゃないんだからな」
「……っ……言いたいことはわかる……けどね……っ」
「っあ!!」
 
くちゅ、と音を立てて黒鷹の指が中に入ってくる。
一番深い部分までは触れないけど、指の腹で優しく弱い部分を擦られて、呼吸が乱れてくる。
触れられてる場所が一層濡れたのもわかってしまって、無性に気恥ずかしい。
俺が動けなくなってしまったのを悟った黒鷹の目が愉快そうに笑う。
 
「君の中で達するのが好きだからね、やっぱり。
ただ、手や口でされるのも悪くないが、どうせなら、繋がって君の中で溶けるように達したい。
……性器を繋げるだけがセックスではないのも、わかってはいるけどね」
「ふっ…………あ……ちょっ…………待っ……!」
「待たない」
「…………っ!! ……あ……!」
 
指が抜かれたかと思うと、黒鷹の顔が触れてた場所に移動して、敏感な場所にざら、とした生温かい舌の感触が伝わる。
膨らんだ腹で動いている様子が見えないのはいいのか、悪いのか。
軽くその場所を押し広げられたと思ったら、舌が触れていたそこを勢いよく吸われて、思わず腰が跳ねる。
 
「……凄いね、今のでまた濡れた。自分でわかるかい?」
「…………っ……言わせるな……っ! こ……の馬鹿……っ!」
「私はわかるよ。今の君の反応でより自分が張り詰めたのがね。ほら」
「……あ」
 
黒鷹が姿勢を変えて、そこに自分自身を宛がった。
確かに張り詰めて熱くなっているのがわかる。
そっと、その場所を擦られるのがもどかしい。
視線で訴えると、もう余裕のなくなりつつある目が細められた。
 
「……もう挿れても大丈夫だね?」
「…………ん」
「体位は……どうしようかな。深く挿入してしまうと危ないから。
そうだ、玄冬。そのまま横向きになるようにしてくれるかね?」
「……っと……こう……か?」
 
姿勢を変えると、黒鷹が背中側に回って、そっちから俺を抱きしめる。
背や腰が温かい体温に包まれて気持ちいい。
足の間に滑り込んできたモノに、ようやくどういう形にしようとしているかを理解した。
 
「挿れるときだけ、少し足を広げて手で支えてられるかい? 
……ああ、そんな感じで。挿れる、よ」
「ん……く…………ああ……っ」
 
ぬる、とほんの僅かな違和感と共に黒鷹が中に入ってくる。
久しぶりに繋がったのと、挿入の角度の所為だろう。
挿れてきているのは浅い場所のはずなのに、結構刺激がきつい。
さらに足を元の場所に戻したら、その瞬間に俺だけじゃなくて黒鷹も呻いた。
 
「っ……結構締まるな、これは。……君の方は大丈夫かね?」
「……ん……平……気…………っ!?」
 
どん、とそれまで静かだった腹の中の子どもが大きく蹴った。
 
「どうか?」
「いや、起こした……みたいだ」
「おや。びっくりさせてしまったかな。他は何ともないかい?」 
「ああ。大丈夫……だと思う」
「……ふふ。すまないね。驚かせて。
パパとママは仲良くしているだけだからね。
大丈夫だよ。眠ってなさい、いい子だから」
 
そうやって、俺の腹を撫でながらあやすようにいう黒鷹が何となく可愛くて。
つい、おかしくなって笑ってしまった。
 
「何だい」
「ふふ……だって、おかしい……」
「……君が笑うと結構振動が来るんだけどね、こっちは」
「ん……あ」
 
わざと音を立てるように、黒鷹が後ろから俺の首筋や耳を狙ってキスを落としてくる。
強くはなくても、じわじわと緩やかな快感が広がっていく。
今の黒鷹の顔を見られないのは残念だけど。
せめて手を繋ぎたくて背の方に手を回しかけると、察した黒鷹から手を繋いできた。
そして小さく、ゆっくりと腰を動かす。
強くはない動きなのに中で当たる場所のせいなのか、予想していたよりもずっと気持ちいい。
 
「……っ……んんっ……」
「く……玄冬、大丈夫……かい?」
「…………ああ、お前こそ……っ……大丈夫、か……?」
 
あまり律動が弱いと達きにくいはずだ。
声や呼吸から察するにそれなりに感じてはいるようだが、きつくはない……だろうか。
 
「心配しなくても……いい……よっ。
……案外追い上げられるな、これは。
もう少しもちそうかと……思ったん……だがね……っ!」
「ん!」
 
相変わらず深くはないけど、強く内壁を突き上げられて。
繋いだ手に力を籠めたら、それを合図にするかのように黒鷹の動きが速くなった。
 
「……っ……あっ…………黒……た…………かっ……」
「…………中が……熱くて、もう、まずい、な。
ま……あまり長くても君の方に負担が……いきそうだから……ねっ……」
「はっ……あ……ああっ……!」
「玄冬…………っ……達く……よっ……」
「……ろた…………っ!」
 
……どくん、と中で鼓動が弾けて、熱が広がる。
しばらくの間、お互いに弾む呼吸の音だけが部屋に響いた。
優しい静寂の空間。
大分落ち着いてきてから、黒鷹がそっと俺の中から抜けて、姿勢を変え、顔を近づける。
そうか、何となく物足りなさを感じたのは、あれだと唇同士のキスを最中に出来ない所為もあるんだな。きっと。
重ねられた柔らかい感触に、どちらからともなく笑い声が零れる。
黒鷹の言葉がきいたのか、何時の間にか腹の中の子どもはまた静かに眠っていた。

  • 2008/01/01 (火) 00:10
  • 第一部:本編

タグ:[第一部:本編]

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