作品
specchio(年齢制限有)
※時間軸は第04話と第05話の間になります。
年齢制限有なので、苦手な方&高校生以下の方は
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「……んっ……あ……」
繰り返される小さな口付けの音。
俺の肌の上を滑っていく黒鷹の唇。
心地良さともどかしさの同居する感覚に身体がじわりと熱を持ち始めていく。
最初は唯漠然と。
そのうちそれは明確に脚の間の器官に集中する。
女の身体で生まれて、黒鷹に抱かれるようになってから半年程。
最初は自分の身体の反応に対しての戸惑いが大きかったが、触れてくれている黒鷹は記憶にあるように相変わらず優しく、大分戸惑いは薄れてきた。
男で生まれても、女で生まれても、やっぱり黒鷹に触れられるのが嬉しい。
大事にしてくれてるのが分かるから、どの場所を触れられることにも抵抗しようとは思わない。
黒鷹を迎え入れようと自然に潤み始めた場所に触れられた指にも、目を閉じて与えられるだろう刺激を待つだけだ。
が。いつもならその場所を探って泳ぐ指は軽く触れたまま動かない。
「……黒鷹?」
不審に思って目を開けると、黄金の目と視線がぶつかった。
「玄冬。君、ここに自分で触れたことは?」
「……え、あ……」
「……あるのかい?」
「だって……覚えて…………いるんだぞ、俺は」
誤魔化すように言葉を濁して視線を逸らす。
昔の記憶が蘇る。
それは黒鷹に育てられ、慈しまれ、愛された全てを覚えているということ。
あの焦がれるような熱も、優しく触れてくれた指も、何もかも。
さすがに、思い出した時点では羞恥心が先立ったが、成長して、月の障りが来るようになり、性を意識するようになると考えずにはいられなかった。
この身体で黒鷹の指に触れられたらどうなるだろうかと。
幾度か思い浮かべて、触れたことがないかと言えば嘘になる。
「なるほどね。じゃあ、ここを自分の目で確認したことは?」
「………………あ?」
質問の意図がよくわからない。
ただ、場所としてどうしても普通に見られる場所ではないから、首を振る。
すると、黒鷹は少しの間何かを考え込むようにしていたが、ベッドから降りて、部屋の隅に置いてあった姿見をベッドの傍に持ってきた。
「玄冬。こっちにおいで」
「……ん?」
ベッドの縁に腰掛けた黒鷹が手招きするのに応じて、その開いた脚の間に自分の身体を滑りこませる。
俺達の目の前には姿見。
どういうつもりかと考えた瞬間、黒鷹の手が俺の脚を開かせた。
「なっ! ちょ……どういう……!」
「目を逸らさない。自分の身体だよ? ちゃんと見なさい」
「何……」
「大丈夫だよ。私はもう隅々まで見ているんだから。
自分の身体を知ることにそう羞恥心や罪悪感を持たなくてもいいじゃないか」
「……でも」
「直視できない、というなら私の指先を見ているといい。
辿ってあげるから」
「ん……!」
後ろから黒鷹が腰を片腕で抱いて、もう一方の手で俺の下腹部を探っていく。
潤み始めていた場所に指が軽く沈んで、小さな水音が聞こえた。
姿見の中で黒鷹の指先が濡れたのが見える。
羞恥とそこから広がる快感に戸惑いながらも、言われたとおりに黒鷹の指先を目で追った。
軽く指が彷徨うと、人差し指と薬指がその場所を広げる。
「や……っ!」
「どうなってるか、見えるね?
男性器と違って複雑な形をしているだろう?」
他の場所の肌より色濃く染まったその場所。
「ここが私を受け止める場所だよ」
「……ふっ…………」
開いた肉の扉に重なるような薄い襞。
生々しいというか、ある種グロテスクと言ってもいいような気がする。
こんなところをいつも黒鷹は躊躇いもせずに触るのか。
そして、間近で見て、口でまで。
何度もされた口での愛撫をつい脳裏で浮かべてしまい、鼓動が速くなる。
それに気付いたのか、どうなのか。
黒鷹が小さく笑いながら、襞をそっとなぞって、濡れた指をそのまま上に滑らせた。
小さな種子のような。
「そして、ここ。君はここを触れただろう? 私を想像して」
「……っ……や……言う……なっ」
自分で触れて最も感じた場所。
男だったときに自身を擦りたてたときと少し似た感覚の……。
「黒……鷹……!」
軽くリズムを刻んで、その場所を刺激する指に内側が蕩けるようになっていく。
「……恥ずかしがることはないよ。それで当たり前だ」
ここは男性器でいうペニスに当たるところだからね、と冷静に言葉を紡ぐ黒鷹の声が恨めしい。
自分の呼吸が乱れていくのがわかる。
腰を抱いていた腕が、何時の間にか胸に伸びて揉まれてることにも気付いたけど、与えられ続ける刺激が強くてろくに動けない。
それでいて、目は姿見の中の指から離せないでいた。
自分の身体なのに、それでいてよく知らなかった場所。
不意にその指に力が入り、軽く開かれていた場所がもっと強く左右に押し広げられた。
種子を包む薄皮が割けて、現われたさらに小さな珠。
一撫でされただけで悲鳴を上げた。
「やっ!!」
「こうすると強すぎるんだね。やっぱりこれがいいか」
「ん…………あ……」
指の力を抜いて、また覆い被さった薄皮の上から軽く擦られる。
その場所だけに集中して触れられているのがもどかしくなってきて、つい自分の手を黒鷹の手に重ねて、下のほうにずらした。
さっきよりも大きく鳴った水音。
耳元に黒鷹の低いトーンの囁きが落ちる。
「……ああ、大分濡れてきたな。指、挿れるよ」
「……ん…………」
ねだるような響きになった自分の声は気のせいだと思いたい。
それでも、鏡の中で繰り広げられる行為が事実なのは、何よりも自分の感覚が告げている。
優しく入ってきた指が内壁を擦った。
腹の奥に響くような刺激は徐々に下腹部全体に広がる。
繋がりたい、という願望を伴って。
だって知っているから。
黒鷹と繋がることで得られる悦びを。
感情と感覚の昂ぶりを共有できるあの瞬間を。
「中が凄く熱いね。興奮してるかい?」
「お前……だって…………!」
腰に当たる固く熱い感触。
先端が濡れているのだって、触れた部分から伝わる。
そもそも、黒鷹の声だってもう随分擦れてきてる。
黒鷹も限界は近いはずだ。
「当然だろう? 愛しい相手の乱れた姿に興奮しない男がいると思うかい?」
「んあっ!」
挿れられている指で内壁を、親指で前にある種子を押されて、声が抑えられなかった。
黒鷹の歯を噛み締めた音が微かに耳に届く。
「挿れていいね? 少しだけ腰を浮かせて……そうそれでいい」
「は…………っ……焦ら……さな……っ」
黒鷹が指を抜き、入り口に添わせる様に、モノを宛てて滑らせる。
入りそうで入らない、そんな状態に焦れた。
迎え入れるために内側が広がった感覚が伝わる。早くそこを満たして欲しいのに……!
「……繋がるところをちゃんと見ているんだよ」
「……ふ……あ……ああっ」
姿見の中で黒鷹自身が溶ける様に自分の中に沈みこんでいく。
体勢の所為か、当たり方がいつもと違って震えてしまいそうになる。
黒鷹の太股を掴んで、感覚に耐えて……奥まで侵入してきたところでようやく息を吐いた。
黒鷹も息を吐いて、両腕で俺を抱きしめる。
「この姿勢だと……根元までは入らないな。
でも繋がってるのがよく見えるね」
「ん……」
自分の指で繋がった部分をつ……と辿る。
露出された根元からその下に収まっている、柔らかな双玉を包んだ袋にも。
軽くその場所を捏ねると黒鷹の抱きしめる力が強くなった。
「……く…………」
「気持ち良い……か?」
「分かってて……やってるんだろうに……っ。動くよ」
「んん……っ!」
ベッドのスプリングを利用して、軽く、でもリズミカルに突き上げが始まる。
その都度、水音がして抜き差しされる黒鷹自身が濡れていく様子に、目が離せない。
強い刺激じゃないのに、身体全体が熱くなっていく。
「黒鷹……っ……!」
「なんて……目をしてるんだい、君はっ……本当に…………玄……冬っ!」
「……え、あ…………ああっ! やっ! あっ!!」
「…………っ!!」
目、と言われて、姿見の前で行為を始めてから初めて視線を上に移した。
射抜くような熱を帯びた黄金の目と視線が合った瞬間……繋がった場所で、何かがはじけたような感覚。
思わず叫びを上げた瞬間に、黒鷹が声を殺す。
蕩けたような内部でじわりと熱が下に伝っていくのがわかった。
その感触に身体が細かく震えた。
震えたような気がしただけかも知れない。
再び視線を落とすと、鏡の中で繋がった部分に白濁が滲み出ていた。
「……あ、あ…………っん!」
「……可愛くてどうしようかと思ったよ」
「馬鹿……! それ止め……っんん……!」
黒鷹が肩口に落としてくる口付けに首を振る。
男だった時と違って、達した後に興奮が治まるのに時間が掛かる。
口付け一つさえ昂ぶらせて、歯止めがきかなくなりそうで……気持ちよくないといえば嘘にはなるが、苦手ではあった。
自分一人が追い立てられるような感覚になってしまうからかも知れない。
黒鷹に言わせればその反応が可愛いから、ついしてしまうんじゃないか、ということだけど。
唇が離れた瞬間、黒鷹の身体に寄りかかって力を抜いた。
そっと髪を撫でてくれる手には素直に安らぎを得られて、ようやく興奮が下降線を辿りはじめる。
「……まだ挿れたままでいいかい?」
「ん……いい。抜けるまではそのままで……」
どうせ、この体勢なら通常の状態に戻ったら容易く抜けるだろうし。
だからそう答えると、黒鷹が微笑んだ。
力のまだあまり入らない指で黒鷹の頬に触れると、黒鷹も髪から俺の頬に手を伸ばす。
「もう少しもたせたかったんだけどね。……自分でも堪え切れなかった」
「あのくらいで良い……。こうしていて重くないか?」
「平気だよ。気持ち良い。中々楽しめたな、姿見一つで。
……びっくりしたかい?」
「……少し、な。あんな風になってたんだな」
さすがに何処が、とは言わなかったが察した黒鷹が小さく笑う。
「綺麗だろう? 花みたいで」
「どっちかというと、グロテスクだと思ったが」
「そうかねぇ。それをいうなら男性器もどうだろうかと思うけども」
「……不思議だな」
「うん?」
「そんな場所で……行為を交わすことになるというのが」
「『そんな場所だから』じゃないのかね。
そこを曝け出せるから、行為を交わす相手が特別に思うんだろう。
……嫌だとは思わなかったね?」
「……ああ」
それは確かだった。
晒されて羞恥心はあったけれども、嫌なわけではなかった。
だって、黒鷹がもう何度も抱いてくれてることに違いはない。
「……ふふふ、また使ってみようか」
「気が向いたら、な」
首を傾けて、交わした口付け。
……表情は見えなかったけど、鏡に映った姿は想像できた気がした。
- 2008/01/01 (火) 00:14
- 第一部:番外編
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