作品
好きで好きで好きで
※第二部が進んでないので、先行ネタバレになりますが、
それでも構わないと言う方だけお読み下さい。すみません。
「あー……」
「んー、桜璃。いい子だね」
「お前、一日中桜璃にひっついていないか?」
実際見るたびに黒鷹は桜璃の傍にいる。
寝ていても、直ぐ近くで本を読んでいて、起きて泣いたらすぐに抱き上げるし、起きたら起きたでずっと構っている。
「それを知ってる君だって、一日中ひっついているってことじゃないか」
「俺は母親だ」
世話をする人間が傍にいなくてどうするというと、黒鷹が拗ねたように呟いた。
「父親がずっとひっついていてはダメだと?」
「そういうわけじゃ、ないが」
見ていてくれるのは単純に助かる。
何しろ、育児面に関してはともかく、基本的な家事能力については黒鷹は有能とは言いがたい。
どうしても俺が積極的に動くことになるから、その間に桜璃を見ていてくれるのは有り難い。
嬉しいのも確かなのだが、一方でなんとなく、複雑な心境にもなる。
「ふふ、桜璃といるとね、今回の君が生まれた頃を思い出すんだよ」
「俺が?」
「そう。女の子の玄冬なんて初めてだったから。
ちょっと色々新鮮だったなぁとね。
それこそ、今は君がいて3人だけど、あの時は二人きりだったから、今以上にひっついていたね。
それにね、桜璃が笑った顔は君にそっくりなものだから、見逃したくないんだよ」
赤子の時期なんて、僅かだからね。
そんな風に黒鷹が言うのを、少し疑問に思う。
桜璃は全体的な見た目は俺に似ているかもしれないが、目元は黒鷹の方に似ている。
桜璃が笑った時の印象は、どちらかというと黒鷹に似ていると思っていた。
「俺と似てるか?」
「ああ。そっくりだ。……ほら」
「あー……」
言ってる矢先に桜璃の頬が緩んで笑みの形を取る。
つい、それが可愛くてこちらの頬まで緩む。
「ほら、そうやって。
君も桜璃につられて笑うと良くわかる。
やっぱり似ているよ。血の繋がった親子だから当たり前なんだろうけど。
まったく……可愛すぎて、どうしようかと思うよ。
君も桜璃も好きで好きでたまらない」
「え、あ」
唐突に顔を引き寄せられて、唇を重ねられる。
油断していたから、つい反応が遅れた。
「……お前、子どもの前で」
「関係ないさ。仲睦まじい両親でいいじゃないか。……不満かい?」
「そんなわけない」
好きで好きでたまらないのは、俺も一緒なのだから。
2005/06/22 up
Forbidden fruit~under ver.でやった
Kfir(閉鎖) が配布されていた
「ただひたすらに君を想う10題」、No9より。
- 2008/02/01 (金) 01:00
- 第二部:番外編
タグ:[第二部:番外編][ただひたすらに君を想う10題]