作品
君の不在
※第三部進んでないので、先行ネタバレになりますが、
それでも構わないと言う方だけお読み下さい。すみません。
「おや。……やれやれ、こんなところで寝てしまうなんて、レディ失格だね。仕方のない子だな」
なんとなく気配が静かだと思い、居間を覗いてみたところ。
桜璃がソファに寄り掛かって眠りに落ちていた。
そっと抱きあげても目を覚まさないあたり、眠りはかなり深いらしい。
そのまま部屋に連れていこうとすると、桜璃が小さい声で呟いた。
「……ママ」
僅かに目元に涙さえ浮かべて。
恋しがるようにあの子を呼ぶ声に胸が締め付けられた。
――俺を殺し続けてくれ。
遠い過去にそう願ったのは玄冬で、約束を守り続けているのは私。
でも、桜璃は。
普段はそれを納得してるかのように振る舞ってはいるけれど、本当は納得してないだろう。
私たちの娘というだけで、私たちのエゴに巻き込まれてしまった。
「すまないね」
まだ甘えたい盛りのこの子から、母親を奪う形になった。
この子がいて、本当に良かったとは思うけど。
ねぇ、玄冬。
君が今ここにいないことは、やっぱり寂しくてたまらない。
君と桜璃は違うんだ。
私はあと何回、繰り返せばいい?
何回、君との約束を守っていけば……。
2005/06/23 up
Forbidden fruit~under ver.でやった
Kfir(閉鎖) が配布されていた
「ただひたすらに君を想う10題」、No5より。
- 2008/03/01 (土) 01:00
- 第三部:番外編
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