作品
中盤(第二部)のラスト近く(救世主視点)
※第二部進んでないので、先行ネタバレになりますが、
それでも構わないと言う方だけお読み下さい。すみません。
「……どうして、そんな穏やかな顔してるの」
今から殺される人間の顔じゃない。
胸元に突きつけた刃に怯えもせず、ただ静かに。
満たされてさえいるような顔で。
「満足しているからだろうな」
「俺は今からあの優しい空間を壊そうとしているんだよ?」
幾度も見かけた幸せそうな光景。
3人それぞれがお互いを想い合っているのが、哀しいほどに伝わった空気。
「……桜璃が生まれてからの数年、十分過ぎるほど幸せだった」
どうして微笑みさえ見せるの。
「ずっと黒鷹が傍にいて、慈しんで育てられて、愛されて。
何度も繰り返してきたけど、まさか子どもまで持てるとは思わなかった」
「……」
「たった一人の娘だ。桜璃を死なせたくない」
「自分はどうなの。死にたくないとは?
子どもの傍に居たいとは思わないの?」
ほんの一瞬。
玄冬の顔が歪んだけど、直ぐに首を振った。
「この世界が滅びたら、桜璃は生きていけない。
あの子は俺達の娘だけど、『黒の鳥』でも『玄冬』でもないからな。
でも、世界が続いていくなら。
桜璃は黒鷹が守ってくれる。
あの子が……天命で死ぬまでの間は絶対に」
「……本当に……君はっ」
変わらない。
『僕』では結局、何時になっても君を変えられない。
歪んで霞んだ光景の中で、微笑んでいる玄冬に対して剣をふるった。
2005/06/29 up
言葉の欠片より。超展開ネタバレですみません。
本編進んだら、多分本編に組み込む部分です……。
- 2008/02/01 (金) 01:02
- 第二部:番外編
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