作品
ふわり
※第二部進んでないので、先行ネタバレになりますが、
それでも構わないと言う方だけお読み下さい。すみません。
「ぱーぱー、だっこー」
「はいはい。おいで、桜璃」
私を見上げて伸ばされた小さな手。
小さな我が家のお姫様を抱き上げると、ふわり、と幼い子特有の甘い香りが漂う。
食べてしまいたくなるほど可愛い、という言葉があるけれど、よくわかる。
玄冬の小さい時にも思ったけれど、本当に可愛くて可愛くてたまらないのだ。
最近は桜璃を見せびらかしたくて、この子を連れて里に買い物に行ったりするものだから、一人で鳥の姿になって飛ぶということが滅多にない。
親馬鹿もいいところだ。
ふと、横からの視線を感じて、そちらを見ると玄冬が苦笑していた。
「何だい」
「いや。緩みきった表情だな、と」
「仕方ないじゃないか。どうしても頬が緩んでしまうんだから」
「まぁ……わかるけどな。そら、桜璃。ママのとこにおいで」
「ままー!」
玄冬が差し出した腕に桜璃が手を伸ばして、あっけなく腕の中の温もりが遠のいていく。
「狡いじゃないか。今は私が抱いていたのに」
「でも、桜璃は俺のところに来た。な、桜璃ー」
「ままー」
「よしよし、可愛いな桜璃」
「少ししか抱いてなかったのに……いいよ、こうするから」
「あ……」
桜璃を抱いている玄冬を後ろから抱きすくめた。
柔らかい感触はやっぱり女の子ならではだなとくすぐったい気分になる。
「これで二人一緒に抱ける。私の勝ちだ!」
「……馬鹿」
言葉とは裏腹に、崩した表情になった玄冬と桜璃をもっと強く抱きしめて。
ふわりと伝わる温もりにただ微笑んだ。
返事の代わりに。
2005/07/01 up
Forbidden fruit~under ver.でやった
Kfir(閉鎖) が配布されていた
「ただひたすらに君を想う10題」、No8より。
普段、黒鷹の親馬鹿度の方が目立ちがちではありますが、玄冬も結構親馬鹿だったりするのです。
何しろ親馬鹿に長年育てられてますから(笑)
- 2013/08/12 (月) 17:44
- 第二部:番外編
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