作品
それが聞きたくて
※第二部進んでないので、先行ネタバレになりますが、
それでも構わないと言う方だけお読み下さい。すみません。
男だった記憶があるからか。
最初の頃はしばらく困惑ぎみだった。
「桜璃ー。パパとママだよー」
黒鷹がまだ言葉を話せない桜璃に向かって、そう呼びかけるのも、どこか違和感を感じていた。
違和感が違和感でなくなったのは、桜璃が初めて呼んでくれたときだ。
「ママ」
と。
最初に桜璃が話した言葉がそれだった。
初めての言葉が「パパ」でなかったことに黒鷹は随分拗ねたけど。
いざ呼ばれると、可愛くて可愛くて仕方がなかった。
どんどん言葉を覚えて、感情を覚えて。
甘えるように「ママ」と呼んで笑う桜璃が愛しくて。
それが聞きたくて、つい何度も桜璃を呼んだ。
「君は人のことなんて言えやしないよ」
「うん?」
「君こそ、桜璃の前でどんな顔してるか知ってるのかい?」
「お前、もしかして拗ねてるのか」
「拗ねて、何が悪いね? 君が桜璃ばっかり構っているからじゃないか!」
「……お前こそ子どもみたいだな」
それでも、そんな黒鷹の言葉を聞くのも、悪くないと言ったら。
あいつは調子に乗りそうだな。
2005/08/25 up
一日一黒玄でやった創作者さんに50未満のお題で配布されている
「溺愛10のお題」、No3でした。
- 2013/08/12 (月) 21:15
- 第二部:番外編