花帰葬-束の間の楽園に舞う花は

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♂と♀のラブバトル

※第二部進んでないので、先行ネタバレになりますが、
それでも構わないと言う方だけお読み下さい。すみません。


 
しくじった、とは思っている。
悪気は微塵もなかったのだが。
本棚を今回ほどきっちり整頓しておけば、と思ったこともない。
 
――パパー、このお姉ちゃんおっぱいおっきいねー。
――桜璃、どこからその本を……?
――うん? あそこに入ってたよ。これだとママよりおっきいよねー。
――うーん、そうだね。そういうのはね、『巨乳』というんだよ。
――きょぬー?
――きょ・にゅ・う、だよ。ママは確かに違うけどね。柔らかくてふかふかで気持ち良いんだよ。
――ふうん……桜璃もこんなおっきくなるかなぁ。
――どうだろうね? ママに似たら難しいかな。
――そっかー。あ、でも、もしおっきくなったらパパに触らせてあげるね! 気持ち良いんでしょ?
――……嬉しいけど、ママに殺されそうだなぁ。
 
子どもの口は油断できない、と。
これでも子育て暦はベテランのつもりだ。
分かっていたはずなのに、実際に被害を被ったことは案外なかったものだからうっかりしてた。
 
――そういえば、お前あれだよな。俺が桜璃を妊娠した時。大きくなった胸に喜んでたよな。
――……いや、その。それは確かにそうだが……。
――授乳中も触りたがってたし、授乳が終わって一時期反動で前より小さくなった胸に嘆いてもいた。
――それは! 否定しない、しないけど! 玄冬、私の話も……!
――……巨乳に育たなくて残念だったな。触り心地の悪い胸で悪かったな!
――待ちなさい! そんなこと言ってないから!
 
桜璃の口からそんなことを伝え聞いた玄冬は、すっかり機嫌を損ねてしまって、昨夜からまともに目もあわせてくれない。
滅多にないくらいに怒ってる。
ベッドで一緒に眠りはしていても、ずっと背中を向けられてしまっていて寂しかったのに。
半日以上経った今も怒りは継続中だ。
まいったね。小言を言われるのは珍しいことじゃない。
でも基本的にはあまり引き摺ったりはしない子だから、こんな風に長時間拒否するような空気を纏うなんて早々あることではない。
 
「パパ……パパとママ、今日変だよ……?」
 
まして、桜璃が首を傾げるほどに表面に出ているというのは。
正直なところ、結構堪える。
いつもなら何より居心地がいいはずの場所が息苦しい。
口は災いの元とはよく言ったものだ。
 
***
 
「……おやすみ」
 
一言声はかけてくれたものの、昨日と同じようにベッドで背中を向けられて。
その仕草に自分の中で何かが切れた。
後ろから抱いて、肩口に顔を押し付けて。
撥ね退けようと出された腕を掴む。
 
「っ、離せ、痛……」
「……本当に悪気はなかったんだよ」
 
これ以上ギスギスした状態なんて勘弁してほしい。
自分に否があるのはわかってる。
小さくはないけれども、大きいわけでもない胸に多少思うところがあるというのを、私は知っているはずなのに。
せめて謝るくらいさせて欲しかった。
 
「……黒鷹」
「何気なく口の端に上ってしまっただけなんだ。
そりゃ大きい胸が好きなのは否定しないけど。
君の胸に敵うほど好きなわけじゃない」
「…………」
「君が気にしてるのを知りながら、言ってしまったのは謝る。
……悪かった」
「……大人気ないのくらいはわかっているんだけどな」
「うん?」
 
掴んでいた腕から力が抜ける。柔らかくなった気配。
 
「俺はお前に触れられるのは好きだけど。
……お前に物足りない思いをさせてるかも知れないと思うと……つい、カッとなって」
「物足りなくなんかないよ」
「でもお前知ってるんだろう。……その、大きい胸の感触」
「……物凄く古い話だがね」
 
二人目の玄冬が生まれるまでは、時間潰しの気紛れに女性を抱いたこともある。
それでも、もう顔も名前もろくに思い出せない程度の相手でしかない。
玄冬と触れ合うようになって、他の人間と抱き合うのが無意味なことに気付いたから、あれから私は玄冬にしか触れていない。
例えこの子が世界にいないときでも。
それはこの子にも言ったことがあるから、知っているはずだ。
 
「わかってる。わかってるから……自分で自分が大人気ないと思ってた」
「妬いてくれていたわけだ」
「……すまない」
「君が謝る必要はないさ。……触れても?」
「ん……」
 
後ろから玄冬の胸にそのまま手を回す。
服の上ではあるけれど、眠る時には下着をつけてないから、優しく揉んでいるとやがて固くなった小さな突起の感触が布越しに伝わる。
直接触れたいと寝間着の釦に手をかけるが、後ろからだと見えない所為か上手く外せない。
 
「……待て。そっち向くから」
 
くるりとこちらを向いた玄冬の顔がほんのりと赤くなっていた。
照れなのか興奮なのか。
まぁどちらだろうと確かめればすむことか。
釦を外して、あらわれた胸。汗
ばんで吸い付くような肌の感覚を掌で楽しみながら、どちらからともなく笑みを零して口付けを交わした。

2005.12.16 up
アホネタですみまs(略を改めて書いたもの。
黒玄メールマガジン(PC版)第19回配信分から。
とりあえず、この後は黒鷹はグラビアっぽいものは纏めて処分した模様(笑)

  • 2008/01/01 (火) 01:24
  • 第二部:番外編

タグ:[第二部:番外編]

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    • 第01話:夢見る翼
    • 第02話:過去の残滓
    • 第03話:絆の上に
    • 第04話:触れる体温はどこまでも熱く(年齢制限有。無しで進めたい場合は第05話へ)
    • 第05話:小さな変化
    • 第06話:訪れたのは……
    • 第07話:一緒の夜
    • 第08話:蜜月の誘惑と理性の間
    • 第09話:それでも求める情熱の形
    • 第10話:どんな時でも愛しいから(年齢制限有。無しで進めたい場合は第11話へ)
    • 第11話:春の祝福を受け、楽園の扉は開く(前編)
    • 第12話:春の祝福を受け、楽園の扉は開く(後編)
    • 第13話:ただ優しい祈りと願いを籠めて
  • 第一部:番外編
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    • 微熱
    • できるなら何故最初から(略
    • 鼓動
    • 桜璃が生まれる直前あたり
  • 第二部:本編
    • 第14話:愛しさの種類
  • 第二部:番外編
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    • 猫かわいがり
    • 親子3人仲良し
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    • お着替えは好きですか?w
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    • Happy Halloween?
    • 女の子のヒミツ
    • little princess
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    • 中盤(第二部)のラスト近く(救世主視点)
    • 中盤(第二部)のラスト近く(玄冬視点)
  • 第三部:番外編
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