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きゃんきゃん党のとある一日<王子さまLv2・きゃんきゃん党>

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王レベ2発売直後のオンリー(発売から二日後だったはず)で出した突発本から。 

珍しくカプ要素のない話。疑似家族可愛すぎた。

初出:2004/04/18 同人誌収録:2004/04/18(タイトル忘れた)

文字数:2006文字 

 

「いいか、ころっけ。こいつらの顔をよく覚えておくんだぞ。こいつらがパパたちの敵だからな」 

とあるスパイから買い上げた写真には、某ごむたい王子と苦労性の従者が並んで写っている。 
それを指差し、きゃんきゃん党の党首ヘーゼルはそう養い子に教える。 

「パパの敵? じゃ、ころの敵?」 
「そうだ! えらいな、ころっけ! ちゃんとわかってるじゃないか!」  

ころっけの言葉に、ヘーゼルは満足そうに頷いて頭を撫でてやる。
撫でられたころっけの方も、嬉しそうに父の膝に抱きついた。 
モンスターの卵から『まねした』が孵り、きゃんきゃん党に一人(?)メンバーが増えた翌日から、党本部では党首兄弟が揃って、養い子に党の教育を徹底させ色々と教え込んだ。
モンスターは成長が早いので、そのまねした……『ころっけ』と名づけられた彼(??)は瞬く間に様々なことを覚えていく。 
その成長っぷりは、時として党首兄弟の顔を綻ばせるほどに。 
ちなみに、ころっけの名は孵った翌朝の朝食のメニューからつけられたもの。 
感動の親子の契りを交わした割には、アバウト極まりないネーミングセンスだが、彼らの周囲の人は誰一人それにつっこまなかったし、本人たちは特に疑問も抱くことなく暮らしていたのでよし、だろう。
(単純につっこみを入れる人間自体がいないと言ってしまえばそれまでだが)  

「兄者、ころっけ。朝飯出来たぜ」 
「ごくろう、弟よ」 
「ありがと、ちーパパ~」 

党首弟であるグレートが、トレイに三人分の朝食を乗せて運んできたので、揃って食事の挨拶を交わし、食べ始める。
兄がパパ、弟がちーパパ。彼らは養い子にそう呼ばせていた。 
勿論、弟側の呼び方は『ちいさいパパ』の意味である。 
年齢を考えれば確かにその通りだが、外見を考えると逆だろうというつっこみも当然ながら(以下略)。 
とにかく、二人の兄弟と一人(?)の養い子は、日々仲睦まじく過ごしているのであった。  

「ちーパパ~。ころ、これ嫌い~」 
「贅沢を言うな! 何でも食べないと大きくなれな……」  

ころっけの好き嫌いに対し、窘めるように言いかけた言葉に、兄の方から殺気を感じ、グレートは思わず口を噤んだ。  

「あ……」 
「弟よ……お前は本当にそう思っているのか? 何でも食べないと大きくなれないと?」 
「え、あ、いや……」  

しまったと失言に後悔したところで遅い。 
ヘーゼルはダン!と勢い良く椅子から立ち上がると、きっ、とグレートを睨みつけ、声高らかに演説を始めてしまった。  

「そうだろう、そうだろうとも! 事実! 我々兄弟はほぼ同じ物を食べて育ったにも関わらず、身長差は実に46cm! では、本当に摂取する食べ物が身長に影響するのか!? 答えは否! 魔法と同じく、その者の素質が身長に影響するのは最早明白! 食べ物など関係あろうはずがない!」 
「わ、悪かった、兄者! そうだよな! さっきのは言葉のアヤというやつでつい!」  

こういう場合は、素直に否(というのも些か微妙なところだが)を認めてしまった方が収束は早い。 
長年共にいるうちに、意識せず弟が身に着けた知恵である。  

「ふむ、わかればいい」  

基本的には単純思考。 
兄も直ぐにひいて椅子にかけ直した。 
食事を再開しようとしたところで、改めてころっけがヘーゼルに問いかけた。  

「パパー、じゃあこれ残していい?」 
「ダメだ」 
「ええー」 
「教えただろう、ころっけ! 食べ物は無駄にしてはいけないと! いつ何時食べられなくなるか、わからないのだぞ!?」  

言っていることは事実であり、正論。 
しかし、話の流れの持っていき方があれなので、すっかり説得力に欠けた形になっていることには気がつかない兄だった。 
さらに言うなら、兄に対しては盲信とも言えるほどに信頼を寄せている弟も、そのことには気付かないのであった。  

「……そうだね、パパ。ころ、頑張ってこれ食べる」 
「よしよし、それでこそパパの子だ」 
「えへへー」  

当然、その2人に育てられているころっけも気付く由もない。 
ああ、素晴らしき円満の秘訣。知らないことは幸せ。 
見習うべきかどうかはまた別の話だが。(笑)  

「パパ、ちーパパ。ころ、全部食べたよ」 
「よしよし、えらいぞ、ころっけ」 
「ころ、いい子?」 
「おう! いい子だぜ、ころっけ」 
「わーい」 
「よーし、朝食も食べたところで、弟よ! 例のアレを!」 
「おう、例のアレだな!」 
「アレ、アレ~」  

三人(?)は席を立つと、すっと右手を掲げた。  

「本日も、我々きゃんきゃん党は男の子モンスターの保護と!」 
「男の子モンスターを虐げる愚かな人間を撲滅する為、働くことを誓います!」 
「誓います~」  

微妙極まりない、毎朝の習慣。 
が、やはりそれに対してつっこみを入れる親切な人はいなかった。 
きゃんきゃん党は本日も平和である。

 

疑似家族大好きなので、プレイ直後突発的に書いてしまったきゃんきゃん党の話。
ここまで地の文でツッコミするのはもう今なら絶対やらないなと読み返して思いましたが、当時の勢いがうかがえるなと手は入れませんでした。
きゃんきゃん党、兄がちっちゃくて弟は大きく兄に盲目っていうのがホントたまらん……。
王レベ続編、DL専売でもいいから出ないかな……。

 

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