2020/12/19に開催されたブラキス版ワンドロ&ワンライ第2回でのお題『残り香』を使って書いた話です。
初出:2020/12/19 ※ブラッド視点は2022/09/11
文字数:3870文字
[Keith's Side]
目が覚めた時、オレの隣で寝ていたはずのブラッドは既にいなかった。
代わりにキッチンの方から微かな物音が聞こえてくる。
どうやら、朝食を用意してくれてるらしい。
オレの家に泊まった翌朝は大体そうだ。
だったら、出来たら起こしにきてくれるだろうと、もうちょっとベッドで惰眠を貪ることにした。
普段のブラッドなら、目が覚めたのならそのまま起きろ、だらけるんじゃないと小言が始まるところだが、セックスした翌朝だけはオレに負担を掛けさせたのを気に病んでいるのか、口を噤む。
とはいえ、オレも鍛えてるし、そもそもヒーローは投与されているサブスタンスによって回復能力も高いから、多少激しくセックスしたところで直後はともかく、一晩寝ちまえばどうってことはねぇが、ブラッドがあからさまに甘く接してくれるのなんて貴重だから、ブラッドが何も言わねぇのをいいことに甘えとくようにしてる。
頭を自分が使っていた枕から、ブラッドが使っていた枕に移動させると、ふわりと柔らかい香りが漂った。
自分でも使っている馴染んだシャンプーの香りに交じって、ブラッド本人の匂いがする。
ブラッドはここに泊まった時、日用品はそのまま置いてあるやつを使うが、何かこう自分で使った時とはちょっと違う匂いがするんだよな。
ブラッドに言わせりゃ、オレが酒と煙草をやるからその差だろうってことだが、そうじゃない。
それこそ、オレが酒や煙草と縁遠かったアカデミーの頃から違う。
アカデミーの寮にいた頃も、オレの部屋だったり、ブラッドの部屋だったりに泊まってシャワーを使った時はそれぞれの部屋にあるシャンプーなり、石鹸なりを使ったりしていたが、やっぱり当時も同じもん使っても匂いがちょっと違ったんだよな。
多分、元々のブラッドの体臭によるんだろうけど、それが昔から妙に落ち着く。きっと、この匂いが好きなんだろう。
うつ伏せになって、ブラッドが使っていた枕に顔を埋めて、さっきよりも強めに匂いを嗅いだら、心地良くてまた眠気が襲ってきた。
このまま、もうちょっと寝るか、なんて思っていたら、足音がこちらに近付いて来て、つい伏せていた顔をそちらに向ける。
オフの日ですっかり見慣れた眼鏡姿のブラッドが直ぐ傍まで来ていた。
「キース、そろそろ起き……なんだ、もう起きていたのか。ならば、顔を洗って冷めないうちに朝食を食え」
「んー……お前がキスしてくれたら起きる」
「キス? こうか」
せっかくだから、もうちょっと甘えようとそんな要求をしてみたところ、何の躊躇いもなくブラッドがオレの髪を掻き上げて、額に口付ける。
そりゃもうあっさりと。
それこそ、そこの紙とペンを取ってくれってのに応じて、物を渡した時と何も変わらないぐらいのニュアンスだ。
そりゃ、別に甘いやりとりや言葉を期待してたわけでもないが、あまりにあっさりとしすぎていて、しばし返す言葉を失う。
キスする時にブラッド本人の匂いを確認しようと思ったのに、その余裕もなかった。
「したぞ。起きろ」
「…………お前さぁ……もうちょっとこう何かねぇの」
「今更、そんな段階でもないだろう」
「そうだけどさ。せめて、こういう場合は唇同士でいっとくもんじゃねぇの。わかってねぇなぁ」
何気なく言ったつもりだった。
唇同士と言っても、ディープなヤツじゃなくて、ライトなヤツってイメージで。
が、ブラッドの方がその言葉に軽く溜め息を吐いた。
「…………唇、と言ったのはそっちだからな」
「え、ちょ……んっ!」
ブラッドが眼鏡を外して、ベッドのサイドテーブルに置いたと思ったら、唇を触れ合わせて――舌をつっこんできた。
朝食を作りながらコーヒーを飲んでいたのか、コーヒーの香りが口の中に広がる。
ブラッドの舌がコーヒーの名残を口内に擦り付けながら、上顎の敏感な部分を攻め立てていって、背筋にぞくぞくしたものが走った。
あ、これヤバい。ただでさえ、朝立ちで元気なモンがさらに元気になっちまう。
ブラッドの肩を叩いて、ストップをかけるとブラッドが離れたが、目元が少しだけ赤い。
「わかってないのはお前だ」
「あ?」
「昨夜の痕跡を目の当たりにして、理性で押しとどめていたのに、自分から煽る馬鹿がいるか」
「あー……」
ブラッドが指で擦ったオレの肩の辺りには、幾つかのキスマークが残ってた。
当然、それらを昨夜つけたのはコイツ。
最初のキスをあっさりしたものにしといたのは、コイツなりに制御していた結果だったらしい。
結構な年数付き合ってんのに、ブラッドは中々ポーカーフェイスを崩さねぇから、未だにこういうとこはわかりにくいんだよな。
「悪かった……その…………食う?」
自分を指差して問いかけると、ブラッドの眉間に皺が刻まれて、失敗したかと思ったが。
「……朝食後ならな。まずはエネルギーを補給してからだ。……煽ったのを後悔するなよ」
眼鏡を掛け直す直前、ブラッドの目が笑って、そんなことを口にした。
「しねぇよ。そんなの」
多分、というとこだけ、ブラッドに聞こえないように飲み込んで、先にキッチンへと戻ったブラッドに続いて、オレも服を着てからヤツの後を追った。
[Brad's Side]
平日でも、オフの日でも、起床時間にはそう大差がない。
ヒーローである以上、異常事態が発生すればオフなど関係なく出勤することになるのだし、生活リズムは崩さずにおくのが無難だ。
とはいえ、隣で気持ち良さそうに寝息を立てている男を無理に起こすこともない。
サブスタンスの効果で回復力は高いとはいえ、昨夜のセックスでの疲労が完全に回復するには少し早いだろう。
朝食の準備が終わるくらいまでは、このまま寝かせておいていい。
静かにベッドを抜けて、キッチンに向かう。
とうの昔にキースの家のどこに何が置いてあるかなど把握済みだ。
本人からも食材は何を使っても構わないと言質を取ってある。
コーヒーを淹れつつ、朝食の準備を始めた。
朝食のパンを焼いている間に、缶詰をストックしてある戸棚からコンビーフハッシュの缶を取りだし、キースが作っていたピクルスも冷蔵庫から出して、パンを置く分のスペースを空けておき、皿に並べる。
キースのように手際よく料理を作れるわけではないが、ちょっとした朝食を作るくらいなら問題ない。
パンが良い香りと共に焼き上がり、冷凍野菜を使ったスープも作ったところで、キースを起こすために寝室に戻るとキースが俺の方を向いた。
寝具からのぞいた首筋と肩に昨夜の名残が残っていて、鼓動が跳ねたのを抑え込む。
「キース、そろそろ起き……なんだ、もう起きていたのか。ならば、顔を洗って冷めないうちに朝食を食え」
「んー……お前がキスしてくれたら起きる」
「キス? こうか」
首筋や肩に残る痕を己の視界から遮るようにキースの額に軽く口付けた。
昨夜、寝る前にシャワーを浴びたのもあって、掻き上げた髪には煙草の匂いが微かに残る程度で、キース本来の匂いがする。
すっかりこの数年で煙草の匂いにも慣れてしまったが――やはりセックスの際や寝起きの際のキース本来の匂いが一番好ましく思う。
少し離れるのが惜しいが、キースが起きているのであれば、冷めないうちに朝食をとりたい。
昨夜の昂ぶりをこれ以上思い出してしまわないうちに。
「したぞ。起きろ」
「…………お前さぁ……もうちょっとこう何かねぇの」
「今更、そんな段階でもないだろう」
「そうだけどさ。せめて、こういう場合は唇同士でいっとくもんじゃねぇの。わかってねぇなぁ」
…………わかってないのはどちらだ。
恐らく、今の言葉で煽った自覚はキースにはない。
――ブラッ……ブラッド……っ!
抱いている最中に、幾度も名を呼んで口付けをねだって。
唇を重ねる都度に絡めてきた舌の感触がよみがえってしまった。
こうなる前に朝食を済ませたかったのだが。
つい、零れてしまった溜め息を自覚しながら、眼鏡を外し、サイドテーブルに置いた。
「…………唇、と言ったのはそっちだからな」
「え、ちょ……んっ!」
キースの考えていたキスとは恐らく少し違うだろうとわかっていながら、まだ煙草の味が染みついていない口内を深く貪る。
口の中も性感帯の一つだ。舌でキースの上顎を刺激するとヤツの体がびくりと跳ねた。
流石にキースもまずいと思ったのか、それ以上は止めろとの意味で肩を叩いてきたから、そこで一旦離れてやる。
何で、と言わんばかりの表情を浮かべている相手に、再び溜め息を吐きたくなってしまう。
「わかってないのはお前だ」
「あ?」
「昨夜の痕跡を目の当たりにして、理性で押しとどめていたのに、自分から煽る馬鹿がいるか」
「あー……」
昨夜、つけた痕は大分薄くなりつつあるが、それでもまだしばらくは残っているはずだ。
…………まぁ、今日は一日お互いにオフだから、この後にさらに痕をつけたとしても、明日の仕事が始まるまでには消える。
ボトムであるキースの負担は大きいが、日中のうちであれば明日の朝までには確実に回復するはずだ。
ならば、再び痕を残すようなことをしても――と思ってしまうのは仕方ないだろう。
俺とて、常に制御出来るわけではない。
ようやく、こちらの意図を察したらしいキースが困惑した表情を浮かべていた。
「悪かった……その…………食う?」
朝食の方ではなく、キースからというのも悪くはない選択だが。
「……朝食後ならな。まずはエネルギーを補給してからだ。……煽ったのを後悔するなよ」
どうせなら、ベストの状態で抱き合う方が結果長く楽しめる。
外した眼鏡を掛け直して、それだけ言い置いてからキッチンに足を向けると背後でキースがしねぇよ、と呟いたのが聞こえた。
お題は『残り香』を選択して書きました。
(というか、2021年3月でブラキス版ワンドロ&ワンライさんが活動停止されて、現在アカウントが残っていないので、もう一つのお題が何だったか思い出せない……)
ブラッド視点は1年9ヶ月近く経ってのようやくの公開です。
しばらく、余裕なさ過ぎてpixiv纏め用の表紙を作った状態から止まっていたのを、ようやく2022/09/11のブラキスWebオンリー『お迎えはお小言と共に』で公開出来た形です。
当方、キスブラでもブラキスでも、ブラッドがキースの家の状況把握してる感じになります。
あと、ブラッドはレシピあれば、まぁまぁ料理は作れるタイプだと思ってる。
キスブラのキースだと、朝食前にブラッドと一戦とか平気で持ちかけてするけど、ブラキスのブラッドだと、朝食前には絶対しないだろうなと思ってますw
ブラッド視点でも書いたけど、朝食でエネルギー補給した後に運動wした方がより楽しめると思ってる。(効率的に)
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