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Double Party Night<月刊少女野崎くん・堀鹿・R-18>

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エロ書きにとっては、ハロウィンのいたずら=性的ないたずらというのが相場(真顔)。
そんなわけで、ちょっと遅刻でUPした本来の鹿島誕話。

※二人が大学生で付き合っている前提での話です。食べ物使ったプレイが含まれるので苦手な方はご注意を。

初出:2014/11/04

文字数:21844文字 

 

[鹿島Side] 

玄関の鍵を開ける音がした途端、私はすぐにそちらへ向かい、帰ってきたであろうこの家の主に向かって、大声で告げた。

「お帰りなさーい、先輩! Trick or Treat!! お菓子をくれなきゃいたずらしちゃいますよ!」
「おう、ただい……って、何だその格好!?」

一瞬、先輩がぎょっとしたのも、まぁ無理はない。
今の私はハロウィンの仮装で、ドラキュラの格好をしている。
顔にもがっつり特殊メイクをしているので、元の顔はほとんど分からない状態だからだ。
今日は先輩が就活での企業説明会があるため、帰りが普段より遅いということだったから、帰ってくるまでの時間にばっちり宴の準備が整った。

「そりゃ、勿論ハロウィンだからですよ!」
「それにしたって、そこまでメイクすることなかったんじゃねぇの」
「だって、メイクなしだとイマイチ迫力に欠けるんですもん。というわけで、お菓子がないならいたず……」
「やる」

言いかけた言葉はあっさりと遮られ、手には小さめの箱が乗せられた。
箱のロゴと大きさから判断するに、恐らく中身はケーキ。
いや、今日ケーキを買ってきてくれたのが何でなのか、という心当たりはちゃんとあるのだけども。

「……何で、お菓子があるんですかー! 恋人同士のハロウィンって言ったら、あえてお菓子とか用意せずに、性的ないたずらをし合って、そのままいちゃいちゃに雪崩れ込みっていうのが、セオリーなんじゃないんですか!?」
「どこ情報のいかがわしいハロウィンだよ、そりゃ。ハロウィンのいたずらには性的な意味は含まれねぇぞ。仮にそうだったとしても、『Trick or Treat』は言った方が、いたずらする側になるんだが……おまえは俺にいたずらされるより、いたずらしたかったのか?」
「あ、そこまではあんまり考えてなかったです」
「おい」
「いやー、最終的にはどっちでも一緒だろうから、こだわりなくて。でも、あえていうならいたずらされる方がいいですかね」
「気合い入れて仮装した割には適当だな」

先輩がちょっと呆れたような声で言う。
それでも、ハロウィンのいたずらに乗っかってはくれるらしく、私の手から一度ケーキの箱を取り上げた。

「じゃ、これは一旦お預けってことで。お望み通り、いたずらしてやるよ。ソファに座って目を閉じろ」
「はーい」

キスでもしてくれるのかなと、目を閉じて待っていたら、胸元に先輩の手が触れて、シャツのボタンが外されていくのが分かった。
え、いきなりそっち!?とちょっと動揺するも、いたずらをされる方がいいと言ったのは私だ。
そのまま、先輩の手がブラに触れて、私のブラがフロントホックなのを確認したらしく、小さく笑った声が聞こえた。

「今日はこっちか。なるほど、いたずらされる気満々じゃねぇか」
「う……」

別にフロントホックにする基準が常にそうだとは限らないけど、今日に関しては間違っていないので、言い返せずに口をつぐんだ。
前にあるホックが外されて、胸に直に先輩の手が触れる。
そのまま撫でてくれるものかと思ったら、何もしないうちに手が離れた。

「あの、先輩?」
「ちょっとそのまま待ってろ。ああ、目は開けんなよ」

ガサゴソと何か紙が擦れるような音が近くで聞こえる。
続いて、鳴ったのは……何だろう、アルミホイルを触った時のような音?
一体、何をしているのかと思ったら、ぺしゃりと左胸に何か冷やっとした柔らかいものが当たった感触。
そして、周囲に漂い始める甘ったるい香り。
待って、これってまさか……。

「何やってるんですか!? せっかくのケーキ無駄にするとか有り得ないでしょ!?」

思わず、驚いて目を開けてしまう。
案の定、左胸には潰れたケーキが無惨にくっついてた。
元はかぼちゃのムースだろうと思われるケーキは、装飾されていた生クリームと一緒に形を崩してしまっていて、もう原型が分からない。
あああ、なんて勿体ないことを!

「目開けんなっつったろうが。無駄になんかなんねーよ。おまえごと食うんだから」
「っ……」

そういうと、ムースのついた部分に先輩の口が触れて、舌で少しずつ舐め取り始めた。
少しひんやりとしたムースの感触を、先輩の熱い舌が少しずつ消していく。
胸の中心には触れないように、周囲から焦らすように。

「…………や……んんっ」

激しくはないけど、確かな快感がじわりと胸から広がっていく。
下から上へと辿っていく舌が、時々わざと水音を立てる。
その都度、ついびくりと反応してしまうのが楽しいのか、先輩が笑っている気配を感じる。
大分、舐め取られたケーキは、残すは胸の中心部分周辺だけ。
ドキドキしながら待っていると、もう一方のケーキがついていない右胸の方に先輩の手が触れた。
温かい掌の感触が素直に気持ち良いな、と思ったら右側の突起を抓られたと同時に、左側はケーキごと強く吸われた。

「うあっ!」
「……ホント、胸弱いよなぁ、おまえ」
「あ、ちょ……待っ…………!」

右胸の方は指で捏ねられて、左胸の方は舌で弄ばれる。
目を閉じているせいか、余計にそこから流れ込んでくる快感は鋭敏だ。
まだ触れられてはいない、足の間がじわりと潤みだしてしまっている。
こうなると、もっと触られたくて仕方なくなる。
が、先輩がしてくれたのはそこまでだった。
胸につけられていたケーキが全部舐め取られたらしいところで、先輩の舌と手が離れる。
ブラの位置を直されながら、もう一度ホックをされ、シャツもボタンを上から順にかけられていく。
…………何、これ。

「よし、もう目を開けてもいいぞ」

先輩の合図で目を開けたけど、自分の顔が引き攣っているだろうことを確信した。

「……何ですか、今の」
「何っていたずら」
「あれで終わりなんですか!?」
「いたずらなんて、そんなもんだろ」
「私が胸弱いの知ってて、そんなこと言います!? そういうの生殺しって言うんですよ、先輩酷い!」

せっかく、気合いを入れて出迎えた結果が、生殺しのいたずら一つで終わってしまうなんて、切ないにも程がある。
だって、今日はハロウィンでもあるけど、同時に私の誕生日でもあるわけで。
ケーキを買ってきてくれたっていうことは、その点は分かってくれているはずなのに。
先輩が溜め息を吐いたのが聞こえる。

「遊」

ほとんど、夜以外には呼んでくれない下の名前を呼ばれてどきっとする。

「……あのな。ハロウィンもいいけど、付き合い始めて最初の誕生日くらい、普通に祝わせろよ。ちょっと、そのメイク落とすぞ」
「え、あの」
「もう一回目閉じとけ。シート貰うな」

そう言うと、先輩は洗面所にさっさと行って、普段私が使っているクレンジングシートをケースごと持ってきた。

「ほれ、目閉じろって」
「はぁ」

大人しく先輩がシートを取り出して、私の顔を拭いていくのに任せる。
顔の中心から外側へと向けて、そっと丁寧に。
片方の手で私の前髪をかき上げてくれる手も優しい。

「あー、もう、妙に落ちにくいアイシャドウ使いやがって。どこのだよ。せっかくの綺麗な肌が傷むだろうが」
「あの、先輩。もうちょっと強く擦っても、私、肌が結構頑丈だから、だいじょう……」
「ダメだ」

速攻で否定されて、黙り込むしかない。
私が自分でやるより、よっぽど慎重にメイクを落としている気がする。
シュル、と何かを擦りながら引き出すような音からすると、もう一枚新しいシートを取ったらしい。
それで仕上げるようにまた拭っていく。
シートが顔から離れた感覚に終わったかな?と思い、声をかけた。

「もういいですか?」
「あー……もうちょっと待ってろ」

また紙が擦れるような音と、ガソゴソと何かを弄るような音。
今度は何やってるのかなぁと待ちかまえていたら、小さな金属音が鳴った。
そして、首元に小さな何か冷たく硬いものが触れる。
先輩の手が私の首の後ろに回ったのも分かった。
……これ、もしかして。

「いいぞ。目開けろ」
「あ……これ」

下を向いて、首に掛けられていたネックレスのトップをちょっと持ち上げてみる。
シルバーの三日月の中に小さく輝く一点のサファイア。
裏返してみると『Yu 20xx.10.31』と文字が彫られていた。
シンプルな作りだけど、着けていて肌馴染みもいい。
結構値段するんじゃないのかな、これ。

「先輩」
「おまえ、あんまりアクセサリーつけないし、誕生石がこれじゃないのも分かっているけど、似合いそうだったから。ああ、やっぱり凄ぇ似合うな」

流石は俺の女だわ、と嬉しそうに惜しげもなく言ってのける。

「二十歳の誕生日おめでとう、遊。これで、一ヶ月弱だけ同じ歳だな」
「……先輩」

ここしばらく、就活で凄く忙しそうにしていたのは知っていたから、誕生日を忘れずにケーキを買ってきてくれただけでも嬉しかったのに。
ちゃんとこういうのを用意していてくれたんだと思うと、感動して泣けてきた。
目の前の先輩に抱きつくと、先輩も私の背に腕を回して抱き締めてくれる。

「ありがとう。先輩大好き」
「おい、泣くこたねぇだろ」
「だって、凄く嬉しいんですもん。ずっと就活で大変そうにしてたのに」
「それとこれとは別だろ。いくらなんでも、おまえの誕生日放置して平気な男じゃねぇよ」

背中をぽんぽんと宥めるように叩かれて、益々強く先輩を抱き締める。
ああ、もうホントこの人が好きで好きでたまらない。
そうやって、どの位の間。
先輩が私を抱いていてくれたのか。
ようやく、涙が止まってくれた辺りで、先輩が腕を解いて、私の顔を正面から見つめる。

「なぁ、遊」
「はい?」
「Trick or Treat!!」
「え?」

いきなりそう言われて、一瞬頭の中が疑問符だらけになった。

「今、おまえはお菓子を持っていない。そうだな?」
「え、あ、その……先輩?」
「ということで。改めてこっちからいたずらさせて貰うぞ。……あれで終わらせるなんて、本気で思っちゃいなかったよな?」

不敵に笑う先輩に、ようやく意図を理解した。

「待って、ちょっとネックレスだけ外させて下さい。貰ったばかりでチェーン切れたりしたら困るから!」
「ちゃんと俺が外してやるって。いいから、おまえ今日はもう黙っとけ」
「ん…………」

唇が重ねられたと思ったら、先輩の手が私の両耳を手で覆うように塞いできた。
唇から入り込んで来た先輩の舌が、口の中を撫でていく度に水音が頭の中を反響していく。
目も閉じてしまっているせいか、狭い空間に籠もるように響く水音が妙に淫猥に響いて聞こえる。
先輩が私の中に挿れてきて動き始める時の音に似ているような……。
そんな事を考えてしまった瞬間、身体の奥に熱が灯る。
ちょっと待って。
何これ。

「な……んですか、今の」

こんな声まで頭の中に残ってしまう。
自分の呼吸が乱れ始めているのが、響く呼吸音で嫌と言うほど分かってしまう。
ただ、耳を塞がれただけなのに、こんな――。

「……なるほど、効果あったみたいだな」

ようやく、私の耳から手を退けて、先輩が薄く笑う。
音の籠もった感じはなくなったけど、先輩が私の耳元で低く囁く声が背筋をぞくりとさせる。
「こうすると外の雑音が遮断されるから、水音が反響されて、気分が高揚するってあったから試してみた。その様子だと結構きたか?」
「ど……こで覚えてくるんですか、そんなの」
「ま、色々とな。安心しろよ。実践してるのはおまえだけだ」
「そういうのを心配してる訳じゃな……ん」

耳の縁を先輩が軽く噛むことで、甘い痺れが走ってしまい、その先の言葉が続かない。
さらに舌まで耳の中に入り込んで来て、先輩の舌の熱く濡れた感触と、かかる吐息に身体の奥深い部分から疼きが引き出されていく。
その間にマントのひもが外され、シャツとスラックスだけの姿になると、先輩もスーツのジャケットを脱いだ。
そして、私の履いてるスラックスのボタンを外し、ファスナーを下ろすとウエスト部分に手をかける。

「こっち、先に脱がすぞ」
「あ……ちょっと待って下さい! それ、下着まで一緒に掴んで……っ」
「知ってる」
「っ!!」

止める間もなく、一気に下着ごとスラックスを引きずり下ろされる。
ブラとお揃いのパステルブルーのショーツが濡れていて、脱がされる時に少し糸を引いたのまで見えてしまい動揺する。
私の方はそれがたまらなく恥ずかしいのに、先輩は嬉しそうに脱がしたショーツのクロッチに触れる。

「最初に胸弄ったときと、さっきのキスと。どっちだ?」
「し……りません」
「なるほど、両方ってことか」
「っ! 見当ついてるなら、わざわざ口にするの止めて下さいってば! 何で、そんなに嬉しそうに言うんですか……」

こういうところは本当に意地が悪い。

「そりゃ、おまえ。自分の手で感じさせたのが分かるのに、嬉しくない男がいるかよ」

バカじゃねぇの、と先輩が言いながら、自分の方もスラックスを下着ごと脱ぎ去る。
先輩の反応してるモノを明るいところで直視するのは、流石にまだ恥ずかしくて目を逸らすと、先輩が私に覆い被さって来た。
先輩のモノが自分の濡れた場所に当たって、少し慌てる。

「や、待って、まだ……っ」
「挿れねぇよ。挿れねぇけど、このまま、俺の身体に腕と足回して掴まれ」
「っと……こう、ですか?」

言われた通りに、先輩の背に腕を回し、両方の足も腰に絡めてみる。

「ああ。このまま運ぶから、しっかり掴まってろよ……っと」
「わっ」

私のお尻と背中を先輩が支えるようにして立ち上がった。
ぐちゅ、と先輩の性器と私の性器が擦れ合って、走った刺激に足が緩みそうになる。

「……あんま、動くなよ。流石に動かれると運ぶのキツくなる」
「ん……」

そうは言うけど、一歩歩くごとに触れてる部分が擦れて、そのたびにじわりと刺激が来る。
決して強くはないんだけど、続けば興奮度合いも上がってしまう。

「は……っ」
「…………っ」

多分、先輩もそうなんだろう。
声は出さないようにしているけど、シャツ越しにもさっきより汗ばんでるのは分かるし、呼吸が荒くなってるのは伝わる。
ぎゅっと、先輩に抱きついている手と足の力を強くしたら、先輩の方もより身体を密着させて、強く支えてきた。
ようやく寝室に到着して、ベッドの上に身体を放り出された。
その拍子に、まだつけたままのネックレスのチェーンが首筋を軽く擦る。

「あ、これ外さなきゃ」
「やるから待てっての。こっちも脱がすぞ」
「ん」

シャツを脱がされて、ブラも取られ、ネックレスも外して、ようやく何も身につけてない状態になる。
続けて、先輩も自分のネクタイを外して、先程ネックレスを置いたサイドテーブルに一緒に置こうとしたところで、少し何かを考え込んだのか、外したネクタイと私を交互に見てる。

「あの、どうかしたんですか」
「遊、ちょっと手を上に上げろ。ああ、両方の掌合わせるような感じで」
「こう?」

言われた通りにして、手を上に上げると、先輩が私の両手首をさっと纏めて、外したばかりのネクタイで縛り上げる。

「ちょ……何するんですか!?」
「いたずらの一環。おまえ、もう少し言われたことそのまま実行する前に、少し位疑えよ」

先輩がシャツを脱いで、私の喉元に口付ける。
軽く吸われて、背が撓った。

「このネクタイ、私がバレンタインにあげた……」
「分かってる。……だからこそ、誕生日にこんなことしたら、忘れられなくなるだろ?」

熱を秘めた目が真っ直ぐに私を射貫く。

「な……!」

忘れられなくなる、なんてどうしてそんな事を言うんだろう。
言われなくたって忘れたりなんてしないのに。
そして、口ではそんなことを言う癖に、身体中に触れてくる唇と指の感触は凄く優しい。
首筋、肩、腕、胸、お腹とゆっくり、じっくり触れてくれる。
時々は、足にも触りながら。
縛られている手に痛みはないけど、身体を巡る快感を逃せないのがキツい。
手で相手を掴んだり、シーツを掴んだりするだけで、随分感覚が違うものだったのだと思い知らされる。
強い快感ではないのに、いや、だからこそかも知れない。
もっと、強い快感の方がいっそ楽になれそうだ――と直感が告げている。

「せ……んぱ…………っ!」
「……まだ、そんなに触ってねぇぞ?」

何を言いたいかは分かっているらしい。
私を見上げてくる目がどことなく笑っている。

「でも……っ、さっきここに、来るまで、だっ……て!」
「あー、確かに気持ち良かったよな。運んでる最中、おまえ、随分ここ濡れてたし」
「あっ……ふ、あ」

足の間に先輩の指が触れる。
でも、動かすわけでもなく、本当にただ触れているだけ。

「もう少し強い刺激が欲しいか?」
「っ……」
「遊。言えよ。言って欲しい」
「その……少し、強めにそこ触っ……んっ!!」
「こうか?」

軽くめり込むくらいの勢いで先輩が其処を擦り始めた。
先輩を受け入れる場所から、一番敏感な部分の付け根あたりまで、指が前後する。

「はっ、あ、あ、やっ……」
「クリ、大分大きくなったな。……これ、どうだ?」
「ひっ!!」

付け根を抓むように挟まれると、そのまま先の方へと向けて擦られる。
つい、身体が跳ねてしまうのを先輩が軽く押さえてはくれたけど、刺激を止める気はないらしく、指の動きはそのままだ。

「や、せん、ぱ……あっ、あ! ダメっ……それダメ……っ!!」

一度、敏感な場所にキスされたかと思うと、指の動き方が変わった。
付け根の辺りで円を描くように、指が踊る。
身体の奥深くを埋めて欲しい感覚に襲われて、身体が細かく震え出す。

「何が、どうダメだって?」
「も、それ以上はいい……ですか、ら。お願い……」
「お願い、の続きは?」
「……意地悪、しないで。誕生日、なんですから……偶には察してくれてもいいじゃ……ないです、かっ……」
「…………それも、そうだな」

先輩が苦笑いを浮かべながら、顔を上げて、唇を重ねてきた。
目を閉じて、それを受け入れていると、びり、と小さな何かを破く音が聞こえる。
ああ、今ゴムを取り出して着けてるんだな、と思ったら、唇が離れた。
ちらりと下に視線を送ると、やっぱりゴムを着け終わった後。
ゴムを着けた状態の先輩のモノが、軽く私の入り口を擦る。

「ん……んんっ!」
「挿れても大丈夫そうか?」
「は……い」
「力、抜いてろよ」
「ふ……っ…………あ」

先輩が、一方の手で私の縛られたままの手を握りながら、中に挿れてくる。
ぐち、と水音がして、ゴム越しでも十分に熱さが分かるモノが、そのまま一番奥まで辿り着いた。

「は…………あっ」
「…………っ……く」

しばし、お互い動かずに呼吸音だけが寝室に響く。

「遊」
「……はい?」
「……最近、挿れる時に痛いって言わなくなったな」
「ん……実際、ほとんど痛く、ないです、し」

確かに初めてセックスしてから、しばらくは痛みもあったけど、今はもう、こうやって挿れられても気持ち良さが勝る。
先輩もちゃんと段階を踏んでくれたからだと思う。
口ではわざわざ私の羞恥心を煽ろうとしてるとしか思えない、意地の悪いことも言ったりするけど、本当に嫌なことはまだされてないし、無理にもしてこない。
先輩のこういうところが誠実で好きだなぁと思う。

「もしかして……気にしてた、んですか」
「こっちは最初から気持ち良かったからな。……慣れたんなら安心した」
「だって……先輩がそうしたんでしょう?」
「違いねぇ」

二人で笑い合ってキスを交わす。
キスしているのは唇でなのに、どうしてだか下で繋がっている方も、一緒に快感が広がっていく気がする。

「なぁ、痛くないなら試してみてくれないか?」
「何を……ですか」
「俺が突くのに合わせて、おまえも俺の方に腰を押しつけるようにして動いてみろ。で、俺が引いたら、おまえも引く。そんな感じで。手ぇ縛ってても腰動かせるだろ?」
「ん……やって、みます」

弱く動き始めた先輩に合わせて、こちらも動いてみる。
最初は軽くぶつかっていただけなのに、それが思いのほか快感を引き出して、どんどん強さを増していく。
肉と肉がぶつかり合う音が淫らに響いて、その音でまた煽られる。
かなり強くぶつけあっているはずなのに、痛みどころか気持ち良さで壊れそうだった。
腰が動いてしまうのが止まらない。

「……く……っ」
「せ……んぱ…………これっ……」
「ああっ、やべぇ、な……凄ぇくる……っ」
「あっ、んんっ! ふあっ!!」

自分でも繋がった場所が蕩けているのが分かる。
身体中が熱くて、どうにかなりそう。
でも、同時に先輩も凄く感じてるのが伝わって、どうしようもないくらい満たされる。
でも、何か物足りない――と気付いて、ネクタイで縛られたままの手の存在を思い出す。
触れない、というのがどうにも切ない。
いや、縛ったままの手を先輩は握っていてくれてはいるんだけど、どうせだったら、先輩の背中に縋りたい。

「せんぱ……手……」

それだけ言うと、分かってくれたらしい先輩が、一旦動きを止める。
そして、縛られた手に一度キスしてくれた。

「遊。ネクタイ解いたら俺の身体に掴まれ。触ってて欲しい」
「んっ……」

頷くと、先輩が手早く私の手首からネクタイを解く。
手が自由に動かせるようになった途端、先輩の背に腕を回した。
汗ばんで熱い背中が興奮度合いを示しているようで嬉しい。
再び動き始めて、また強い衝撃が背筋の方に抜けていく。
こんな風に自分から腰を動かすなんて、淫らだと思われないだろうかと何処かで気にしながらも、動いてしまうのを止められない。

「ダメ……っ、腰……止まらな……っ」
「それで……っ、いい。続けろ……求めろよ……っ!!」
「あっ、や、せんぱ……あああっ!」

――俺だけを求めろ。

頭の中が白くなった瞬間、そんな言葉が聞こえた気がした。

***

「ケーキ……せめて、冷蔵庫に入れれば良かったですね」

しばらく後。

二人でお風呂も入って、一休みした後にふと先輩が買ってきてくれたケーキを思い出し食べてみれば、保冷剤もすっかり融けてしまっていて、どこか生ぬるい感触のムースを味わうはめになってしまった。
先輩がどこかバツの悪そうな顔をしてる。

「悪い。明日買い直してくるわ」
「もう、それはいいんですってば。そういう意味で言ったんじゃないです。生ぬるくても、ちゃんと美味しいですから」
「けどなぁ」
「ネックレスだって貰ったし、気持ち良い思い沢山させて貰ったし。誕生日プレゼントはもう十分です」

どうせ、来月は先輩の誕生日があるんだし、一ヶ月しないうちにまたケーキが食べられる。
だから、そう言ったのは本心だったのだけど。

「……おまえ、もう一度襲われたいのか? わざと煽ってんじゃねぇだろうな」
「え? は? えーと」

ケーキを食べ終わって、お皿をテーブルに置いた途端、先輩が私の手を掴んだ。
まだ少しネクタイで縛った跡が残っている手首にキスをされる。

「『気持ち良い思い』でいいんだったら、日付変わる前にもう一度させてやれるぞ」
「あ。…………えっと、その、いいです、よ」
「え」

先輩が自分で言っておいて、面食らった顔をしていた。
数秒くらい揃って黙り込んでしまったけど、先輩が真顔になって、今度は手首の縛った跡に舌を這わせ始めた。
唇で触れてきた時とは違う気持ち良さに、顔が熱くなってくる。

「冗談だった、なんて言わねぇよな?」
「言いませんよ。……その」
「「Trick or Treat」」

そう言ったのは二人同時だった。
あまりのタイミングの良さに、お互いに顔を見合わせて吹き出してしまう。

「今ケーキ食べちゃったから、もうこの家にお菓子の類は、本当に何もありませんね」
「だな。じゃ、もう一度『Trick』といくか」

今度は私が先輩の耳を塞いでみると、そっちかよ、と笑いながらも先輩もまた私の耳を塞いで、そのまま唇を重ねたのだった。

[堀Side]

日が沈む時間が早くなり、日没後の気温に冷え込みを感じることも増えてきた。
そろそろコートをクローゼットの奥から出しておいてもいいよな、なんてことを考えながら家路を急ぐ。
アパートに近づくと、自分の部屋の明かりがついていたのが確認出来て、少しだけ口元が緩む。
さっき、鹿島が住んでいる方のアパートを通りがかった時には、部屋が暗かったから、恐らく俺の家の方で待っているだろうという予想は当たっていた。
鹿島とお互いのアパートの合い鍵を交換してから、既に半年以上。
あいつは、こうやって週の半分くらいは俺の家に来ているし、俺も鹿島の家に行っていることがある。
鹿島は通い妻ってやつですね、なんて言ったりするが、こうも一緒に過ごす時間が多ければ、いっそ同居しちまった方が早いんじゃないかと思わなくもない。
何となく予想もついていたが、鹿島と過ごす時間は居心地が良かった。
味覚や金銭感覚、生活習慣等が意外に合っていて、一緒に生活していくのが不思議なくらいにしっくりくる。
ただ、流石に学生のうちにそれはなぁと躊躇うのも事実だった。
お互い、まだしばらくは親懸かりの身では踏み切れない。
せめて、俺が就職して落ち着いてからだよなぁ。
今日は就活で企業説明会に行ってたが、あの会社は中々良さそうな気がした。
福利厚生もしっかりしていそうだったし、明るい雰囲気の働きやすそうなところだった。
もう少し、あの会社について調べておこう、なんて思っているうちに、自室の玄関に辿り着いた。
一瞬、チャイムを鳴らそうかと思ったのは止めて、カバンから玄関の鍵を取り出す。
玄関の鍵を開け、家の中に入った途端に少し弾んだような足音が聞こえる。
靴を脱ごうと下を向いたら、鹿島の声が頭上から勢い良く響いてきた。

「お帰りなさーい、先輩! Trick or Treat!! お菓子をくれなきゃいたずらしちゃいますよ!」
「おう、ただい……って、何だその格好!?」

何気なく見上げた瞬間、鹿島の格好に気付いて驚いた。
いつもの顔が特殊メイクで全くと言って良いほど分からない。
流石に声や背丈で鹿島だとは分かるが、ドラキュラの仮装は予想以上にハマっている。
元が端正な顔立ちをしているだけに全体的に凄みが出てる部分もあるんだろうが、唇の端から滴り落ちる血を模したメイクは、かなりリアルさを演出している出来だった。
意外に怖いものがダメなところのあるこいつが、よくここまで出来たな、流石は鹿島と誇らしく思う一方で、せっかくの誕生日にそれなのかよ、と突っ込みたくもなる。
ハロウィンの日に誕生日とくれば、仕方ないかも知れないが、家に帰る途中で引き取ってきた、プレゼントの中身を思ってほんの少しだけがっくりくる。
出来れば、こういう格好じゃないときに渡したかったのが本音だ。

「そりゃ、勿論ハロウィンだからですよ!」
「それにしたって、そこまでメイクすることなかったんじゃねぇの」

似合ってないとは言わない。ハマっているからこそ、心底複雑だ。

「だって、メイクなしだとイマイチ迫力に欠けるんですもん。というわけで、お菓子がないならいたず……」
「やる」

誕生日祝いにと買ってきたケーキの箱を手渡す。
これだってお菓子には違いないし、どうせいたずらするならこっちからしたいから、鹿島からの誘いかけは『Treat』で返してしまおうと。
なのに。

「……何で、お菓子があるんですかー! 恋人同士のハロウィンって言ったら、あえてお菓子とか用意せずに、性的ないたずらをし合って、そのままいちゃいちゃに雪崩れ込みっていうのが、セオリーなんじゃないんですか!?」

返ってきたのはそんな理不尽な台詞。
一体どこで覚えたハロウィン情報なんだ。

「どこ情報のいかがわしいハロウィンだよ、そりゃ。ハロウィンのいたずらには性的な意味は含まれねぇぞ。仮にそうだったとしても、『Trick or Treat』は言った方が、いたずらする側になるんだが……おまえは俺にいたずらされるより、いたずらしたかったのか?」
「あ、そこまではあんまり考えてなかったです」
「おい」

ドラキュラの仮装でハロウィンに凝っているかと思いきや、こういうところは案外適当だ。

「いやー、最終的にはどっちでも一緒だろうから、こだわりなくて。でも、あえていうならいたずらされる方がいいですかね」
「気合い入れて仮装した割には適当だな」

そのぐらいなら、わざわざ仮装まで凝らなくても良かったのに、と危うく言いそうになったが、それは黙っておくことにする。
一度は手渡したケーキの箱を、再度鹿島から取り上げた。

「じゃ、これは一旦お預けってことで。お望み通り、いたずらしてやるよ。ソファに座って目を閉じろ」
「はーい」

流石にここまでメイクしている状態で、キスするのは少し躊躇われる。
なら、いたずらとしても丁度良いかと、ドラキュラのマントだけを背中側に回し、シャツの襟元にある蝶ネクタイを外して、ボタンを外していく。
鹿島がおそらくは動揺から軽く震えたのには気付いたが、それは無視して全てのボタンを外し、シャツの前身頃を左右に広げた。
相変わらず肌理の細かい白い肌が、シャツの下から現れる。
パステルブルーのブラとか珍しいなと触ってみると、いつものように後ろにホックがついているものではなかった。
前から外せるようになっている。
あまり着けない色のブラとか、フロントホックとか、こいつはこいつなりに『特別な』心境でいたんだろうと思うと、むちゃくちゃ愛おしい。

「今日はこっちか。なるほど、いたずらされる気満々じゃねぇか」
「う……」

照れて、言い淀んでいるあたりがまた可愛い。
左側の胸に手を置くと、少し早くなった鼓動を感じる。
このまま抱いてしまいたくもあるが、せっかくのいたずらだ。
元来、ハロウィンのいたずらってのは結構えげつないし。
偶にはいいだろう、と一旦胸から手を退けた。

「あの、先輩?」
「ちょっとそのまま待ってろ。ああ、目は開けんなよ」

買ってきたケーキの箱を開けて、ケーキを一つ取り出す。
ハロウィンだからと期間限定で販売されていたカボチャのムース。
周囲に巻かれていたフィルムを外し、底に敷かれていたホイルを剥がして、さっき触れた胸に押しつけた。
一応、シャツとブラは汚さないように避けたが、もし汚してしまっても鹿島の着替えはこの家にも少し置いてあるし、洗濯すればいい話だ。
指に残ったクリームとムースを舐めていると、どうされたのか気付いたらしい鹿島が、目を開けて抗議する。

「何やってるんですか!? せっかくのケーキ無駄にするとか有り得ないでしょ!?」
「目開けんなっつったろうが。無駄になんかなんねーよ。おまえごと食うんだから」
「っ……」

胸に張り付いたケーキに舌を伸ばし、ゆっくりと吸い上げる。
口の中で溶けていくムースと、舌先で感じる鹿島の肌の甘さが心地良い。
この甘さはケーキのせいだけではない。
何で、こいつの肌こんな甘くなるんだろうなぁ。
日によっては、シャンプーやボディーソープを同じものを使っていることがあるのに、互いの体臭等と混じり合うからなのか、意外に香りがほんの少し違ってきたりする。
味にしてもそうだ。
不思議なもんだと思う。
下から上へと焦らすようにしながら舐めあげていくと、時々切なさを籠めた喘ぎと共に身体が震えるのも気分が良い。

「…………や……んんっ」

零す声をもっと聞きたくて、わざと水音を立ててみたりなんかする。
残すケーキは乳首と乳輪の部分を覆っているだけになった。
このまま、舐めていってもいいが、右側もちゃんと触らないとな。
ケーキの付いていない右胸に手を当てる。
左胸の乳首を、ケーキごと思いっきり吸い取りながら、右側の乳首を抓ると、鹿島が悲鳴を上げる。

「うあっ!」
「……ホント、胸弱いよなぁ、おまえ」
「あ、ちょ……待っ…………!」

ボリュームは確かにないし、寝てしまえばほぼ真っ平らにはなってしまうような胸だが、感度は抜群だ。
こうして、一方を指で捏ねて、もう一方を舌先で撫でてやると、凄ぇ可愛い反応をしてくれる。
微かに震えた身体に、先を続けたくなる欲求に駆られるが――まだだ。
胸のケーキが全て無くなった時点で、一旦弄るのを止める。
ブラを元通りにし、シャツもさっきのように上からボタンを全部かけておく。
流石に蝶ネクタイは戻さなかったが、ほぼ弄る前の状態にした。

「よし、もう目を開けてもいいぞ」

そう、声をかけると鹿島が目を開けた。
特殊メイクと合わさって、ちょっと引くぐらいの怖い顔になっている。

「……何ですか、今の」

声も不機嫌さを隠していない。

「何っていたずら」
「あれで終わりなんですか!?」
「いたずらなんて、そんなもんだろ」
「私が胸弱いの知ってて、そんなこと言います!? そういうの生殺しって言うんですよ、先輩酷い!」

酷い、と言いたいのはこっちだ。
いくら、ハロウィンと誕生日が同日だからって、俺が祝いたいのはどっちだと思っているんだ、こいつは。

「遊……あのな。ハロウィンもいいけど、付き合い始めて最初の誕生日くらい、普通に祝わせろよ。ちょっと、そのメイク落とすぞ」
「え、あの」
「もう一回目閉じとけ。シート貰うな」

何だかんだで泊まった時用に、鹿島の化粧品は一通り置いてある。
洗面所に置いてある、いつもこいつが使っているクレンジングシートをケースごと取ってきて、シートを取り出した。

「ほれ、目閉じろって」
「はぁ」

出来るだけ力加減を優しくしながら、鹿島の顔を拭いていく。
ファンデーションは容易に落ちたが、問題はしっかりやっているアイシャドウと滴り落ちる血を模したメイクだ。
特に、アイシャドウがやたらと落ちにくい。

「あー、もう、妙に落ちにくいアイシャドウ使いやがって。どこのだよ。せっかくの綺麗な肌が傷むだろうが」
「あの、先輩。もうちょっと強く擦っても、私、肌が結構頑丈だから、だいじょう……」
「ダメだ」

目の周りなんて、皮膚薄いんだし、強く擦って良いわけが無い。
何とか粗方落としたところで、念の為にもう一枚新しくシートを取り出して拭く。
……よし、ようやくいつもの鹿島の顔になった。
やっぱり、何もしない状態の顔が一番いいよな、こいつ。

「もういいですか?」
「あー……もうちょっと待ってろ」

目を閉じたままのついでに、プレゼントも首につけてしまうことにする。
包装ごと手渡してやった方がいいのかな、とも思ったが、俺が今これを身に付けた鹿島を見たい。
包装を取り去り、箱を開け、中に入っていたネックレスを取り出す。
今日、遅くなった理由の半分はこれを引き取りに行っていたからだ。
あまり早く引き取ってしまうと、何かの拍子にこいつが気付いてしまう可能性もあったから、誕生日当日の引き取りにしておいた。
鹿島の首に手を回し、ネックレスをつけてみる。

「いいぞ。目開けろ」
「あ……これ」

鹿島が下を向いて、ネックレスを確認していた。
シルバーの三日月の中に、鹿島と同じ目の色をした、小さなサファイア。
裏側には記念にと『Yu 20xx.10.31』と印字して貰ってある。
気に入って貰えるといいんだが。

「先輩」
「おまえ、あんまりアクセサリーつけないし、誕生石がこれじゃないのも分かっているけど、似合いそうだったから。ああ、やっぱり凄ぇ似合うな。流石は俺の女だわ」

このデザインなら、鹿島の持っている大抵の服には似合うはずだ。
覚えている服との組み合わせを考えると、選択は間違っていなかった。

「二十歳の誕生日おめでとう、遊。これで、一ヶ月弱だけ同じ歳だな」
「……先輩」

鹿島の目が潤んだかと思うと、俺に手を伸ばして抱きついてきた。
こっちからもそのまま鹿島を抱き締めてやる。大分、馴染んできた鹿島の匂いが心地良い。

「ありがとう。先輩大好き」
「おい、泣くこたねぇだろ」
「だって、凄く嬉しいんですもん。ずっと就活で大変そうにしてたのに」
「それとこれとは別だろ。いくらなんでも、おまえの誕生日放置して平気な男じゃねぇよ」

子どもをあやすかのように鹿島の背中を叩くと、一層強く抱き締められる。
アクセサリー一つでこれだけ喜んでくれるとか、可愛いにも程があるよなぁ。
ああ、今すぐめちゃくちゃに可愛がりたい。
我ながらバカだとは思うが、鹿島の――遊の隅々まで、触って抱き締めたい。
こうして、抱き締めて体温を感じていると直接欲しくなる。
遊の嗚咽が収まったのを感じて、抱き締めていた腕を解き、顔を上げさせた。

「なぁ、遊」
「はい?」
「Trick or Treat!!」

最初に性的ないたずらをし合って、なんてぬかしたのはこいつだしな。
下着見てても、その気はちゃんとあったんだろうし、嫌だなんて言わないだろう。

「え?」
「今、おまえはお菓子を持っていない。そうだな?」
「え、あ、その……先輩?」

まだ、イマイチ状況をつかめていないらしいので、ちゃんと説明しておく。

「ということで。改めてこっちからいたずらさせて貰うぞ。……あれで終わらせるなんて、本気で思っちゃいなかったよな?」

遊の顔が嬉しそうに輝いた後、直ぐに赤くなる。
こういうところは分かりやすくていい。
拒まれていないことを実感できるのがたまらない。

「待って、ちょっとネックレスだけ外させて下さい。貰ったばかりでチェーン切れたりしたら困るから!」
「ちゃんと俺が外してやるって。いいから、おまえ今日はもう黙っとけ」
「ん…………」

唇を重ねながら、手を伸ばして遊の両耳を覆って塞ぐ。

――相手の耳を塞ぎながら、キスするってエロティックな効果があるみたいですよ。

つい先日、野崎のところで臨時のアシスタントに入った時に、ふとそんな話になった。

――何だ、そりゃ。資料か? おまえの漫画、清純派じゃねぇのかよ。そんなシーン見たことねぇぞ。
――ああ、これはいつか資料にはなるかも知れませんが、実践の経……。
――ちょっと、何の話してるの、野崎くーん!!??

全員分の眠気覚ましのコーヒーをキッチンで淹れていた佐倉が、慌てたような声を上げたし、何より仕事の手も休めるわけにはいかなかったから、それ以上の追求はしなかったが。
ちょっと、自分の中で引っかかっていて、試してみたくはあった。

舌を入れて、いつものように遊の口の中の色んなところを辿らせてみる。
耳を塞いでいる以外は、本当に普段と変わらないキス。
だが、歯列を辿って、舌を絡めた辺りで、遊の表情に変化が現れた。
ほんのり赤いという程度に染まっていた遊の顔が、あからさまに真っ赤になってきた。
零れる呼吸音にも色っぽい喘ぎが混じる。
……へぇ、こりゃ悪くねぇな。
手は離さないままで、唇だけ遊から離す。
開いた目がちょっと潤んでいるのは、さっきまで泣いていたアレとはまた違う理由だろう。

「な……んですか、今の」

声も擦れて、艶が混じっている。
微かに遊が足をすり合わせたのは見逃さなかった。

「……なるほど、効果あったみたいだな」

離した手のかわりに、遊の耳元で囁く。わざと低めのトーンに落として。
遊には俺が低く囁く声は狡いと言われたりなんかもするが、自分で武器になると理解しているものを、効果的に扱うことの何が狡いんだか。
遊が身体をびくりと震わせたことに、気分が高揚する。
効果を上げちまえば、こっちのもんだ。

「こうすると外の雑音が遮断されるから、水音が反響されて、気分が高揚するってあったから試してみた。その様子だと結構きたか?」
「ど……こで覚えてくるんですか、そんなの」
「ま、色々とな。安心しろよ。実践してるのはおまえだけだ」
「そういうのを心配してる訳じゃな……ん」

形の良い耳の縁を跡が付かないぐらいに軽く噛む。
舌も耳の中に忍ばせて、舌で触れられる範囲を舐めていく。
飲み会のネタで、耳の形と女性器が似ているなんて俗説を聞いたことがあるが、それは流石に都市伝説だと思う。
が、興奮してると、遊の場合耳に結構出る気はする。
綺麗に赤く染まるんだよなぁ。……今みたいに。
それを確認したくて、遊のマントのひもを外し、自分のスーツも上を脱いだ時点で、遊のスラックスに手を伸ばして、ウエストのボタンを外し、ファスナーを下ろす。

「こっち、先に脱がすぞ」

下着ごとスラックスに手をかけると、慌てた声が聞こえた。

「あ……ちょっと待って下さい! それ、下着まで一緒に掴んで……っ」
「知ってる」
「っ!!」

最初から一緒に脱がす気だったから、止められたりなんかしないうちにさっさと脱がせておく。
ブラと同じ色をしていた下着がしっかり濡れて、脱がせる時に遊の身体との間に糸を引いた。
いつ見ても綺麗なラインをした遊の足が、微かに震える。
羞恥ですっかり赤くなった顔をさらに煽ろうと、濡れた下着にわざと触る。
遊の息を飲む音が聞こえた。

「最初に胸弄ったときと、さっきのキスと。どっちだ?」
「し……りません」
「なるほど、両方ってことか」
「っ! 見当ついてるなら、わざわざ口にするの止めて下さいってば! 何で、そんなに嬉しそうに言うんですか……」
「そりゃ、おまえ。自分の手で感じさせたのが分かるのに、嬉しくない男がいるかよ。バカじゃねぇの」

そんな風に応じながら、俺も自分のスラックスを下着ごと脱ぐ。
こっちも興奮してきっちり勃ち上がってしまっているモノを、明るい部屋で曝け出すには、まだ気恥ずかしさは感じるんだが、それ以上に遊がこれを直視出来ずに目を逸らしてしまうのが可愛い。
遊の濡れた場所に触れたくて、そのまま覆い被さる。
温かく濡れたひだが、俺のモノに纏わり付く感触が気持ち良い。

「や、待って、まだ……っ」
「挿れねぇよ。挿れねぇけど、このまま、俺の身体に腕と足回して掴まれ」
「っと……こう、ですか?」

遊が素直に、俺の背に腕を回し、両方の足も腰に絡めた。
温かい体温にこのまま動きたくなりそうな意識を押しやって、遊の背中と尻に手を回して、支える。

「ああ。このまま運ぶから、しっかり掴まってろよ……っと」
「わっ」

寝室じゃないとゴムもないし、続けるならやっぱベッドだろうと運ぶことにしたが、擦れ合う性器からの刺激がちょっとくるものがある。

「……あんま、動くなよ。流石に動かれると運ぶのキツくなる」
「ん……」

何でもないように言ってみるものの、歩く度に触れてる部分が擦れて快感をもたらす。
強くはないし、抑えが効かないほどでもないが、予想していたよりは興奮した。
これ、挿れた状態で歩いたら、それこそ一歩ごとに奥を突き上げて、たまんねぇことになりそうだ。

「は……っ」
「…………っ」

また、遊が熱っぽい吐息を零す上に、歩くたびにより濡れていってるのも触れてる場所から分かってしまう。
シャツを今すぐ脱いで、挿れてしまいたいくらいだ。
身体中が熱い。
遊がさっきよりも興奮しているからなのか、絡みついている腕と足の力が強くなっている。
こっちも強く身体を押しつけると、小さな悲鳴が上がった。
……我慢出来なくなりそうだ。

ようやく寝室に辿り着いて、遊をベッドの上に投げ出す。
着けているネックレスが軽く跳ねる。

「あ、これ外さなきゃ」
「やるから待てっての。こっちも脱がすぞ」
「ん」

ちょっとだけ、ネックレスを着けたまま抱いてみたい気もしたが、そこは堪えて、シャツを脱がし、ブラも外し、ネックレスも結局外して、ベッドのサイドテーブルに置いた。
俺も脱ごうと、まだ外していなかったネクタイを外して、サイドテーブルに……と思った瞬間、これがバレンタインに遊から贈られたものだったのを思い出す。

――先輩、来年就活ですし、社会人になっても使うでしょうし。

そんな言葉と共に贈られた青いピンストライプのネクタイ。
遊の髪と目にも良く似合う色の――。
しばし、遊とネクタイとを見比べ、考えてみる。
ネックレスを外したんだし、こっちを使ってみるのはどうか。

「あの、どうかしたんですか」
「遊、ちょっと手を上げろ。ああ、両方の掌合わせるような感じで」
「こう?」

俺の言葉に何の疑問も持たないのか、素直に遊が手を上にする。
抵抗されないうちに、さっさと遊の手首を纏め上げ、外したばかりのネクタイで縛る。

「ちょ……何するんですか!?」
「いたずらの一環。おまえ、もう少し言われたことそのまま実行する前に、少し位疑えよ」

こんなところも可愛い面ではあるんだが、俺以外の相手にこんなところを出されたら、と思うと不安にもなる。
こいつは、人の言うことを素直に受け取り過ぎだ。
自分のシャツも脱ぎ、先程までネックレスをつけていた遊の喉元にキスして、軽く吸い上げる。
遊が背中を撓らせて反応するのが愉しい。

「このネクタイ、私がバレンタインにあげた……」
「分かってる。……だからこそ、誕生日にこんなことしたら、忘れられなくなるだろ?」

――ネクタイ、私が結びますね。えーと、人のやるのって初めてだから、中々難しいですね。

バレンタインの時は、こいつと付き合い始めてはいたけど、まだ手は出せてなくて。
ネクタイを結ぶためにと、至近距離で触れてきた遊に、内心動揺して理性が崩壊しそうだったのを思い出す。
おかげでセックスして、ある程度その関係性に慣れるまでは、中々このネクタイを使えなかった。
そんなことは、きっと目の前のこいつは想像しちゃいないんだろうけども。

「な……!」

そうやって、俺の中に遊が深く刻み込まれていっているように、遊の中にも俺が根深く刻み込まれてしまえばいい。
このネクタイを見るたびに、そして、贈ったネックレスを見るたびに、俺との行為を思い出してしまえばいい。
ゆっくりと首筋、肩、腕、胸、腹へと、唇と指で辿りながら、時々もう一方の手で足を触る。
今の状態で、下手に挿れてしまったりしたら、暴発しかねないが、誕生日にそんなことしたくもない。
自分の欲望はどうにか抑え込んで、遊を感じさせることに集中する。

「せ……んぱ…………っ!」
「……まだ、そんなに触ってねぇぞ?」

けど、こいつも結構追い上げられているんだろう。
まだ、性器にまで触れていないうちに、ねだるようなことを言ってくる。
それほどまでに感じてくれているのが、たまらなく嬉しい。

「でも……っ、さっきここに、来るまで、だっ……て!」
「あー、確かに気持ち良かったよな。運んでる最中、おまえ、随分ここ濡れてたし」
「あっ……ふ、あ」

自分でも指で触りたかった場所。
濡れた柔らかい場所に指を沈めてしまいたくなるが、ただ触れるだけに留める。

「もう少し強い刺激が欲しいか?」
「っ……」
「遊。言えよ。言って欲しい」
「その……少し、強めにそこ触っ……んっ!!」
「こうか?」

クリトリスの付け根から、膣口までの辺りを希望のままに指で擦る。
時々は指の腹だけ、軽く膣口にめり込ませて。
遊の腹や足が快感で震えてる。

「はっ、あ、あ、やっ……」
「クリ、大分大きくなったな。……これ、どうだ?」
「ひっ!!」

クリトリスの付け根を指で挟むようにして、皮に包まれた部分だけを刺激するように付け根から先端近くまでを擦る。
男でいうとペニスに近いものだから、力加減は全く違うとはいえど、付け根から先へと擦ってやるのがやっぱり感じるらしい。
遊が可愛い声を上げながら、身体をびくつかせる。

「や、せん、ぱ……あっ、あ! ダメっ……それダメ……っ!!」

こういうトーンで言うダメ、なんて聞いてやらない。
これはダメと言いつつ、本当にダメな方ではないのはもう分かっている。
まだ触れてなかった、クリトリスの露出された部分にキスしながら、その付け根部分に円を描くように刺激する。
断続的に上がる切ない喘ぎにもうそろそろか、と指の力を少し弱める。

「何が、どうダメだって?」
「も、それ以上はいい……ですか、ら。お願い……」
「お願い、の続きは?」

自分でもどうかとは思うが、ギリギリのところで言葉を言わせようとした時の遊の顔は絶品だ。
泣きそうになる一歩手前の顔で俺を求める。
が、今日は。

「……意地悪、しないで。誕生日、なんですから……偶には察してくれてもいいじゃ……ないです、かっ……」
「…………それも、そうだな」

どうやら、少しやりすぎたようだ。
確かに『特別な日』に責めすぎるのも可哀想かと、遊にキスをする。
キスしながら、手探りで枕の下に忍ばせてあるゴムを取り出し、袋を破いて、自分のモノに着ける。
着け終わったところで、唇を離し、先っぽでそっと膣口を擦った。

「ん……んんっ!」
「挿れても大丈夫そうか?」

擦った感じだと、十分に濡れている。

「は……い」
「力、抜いてろよ」
「ふ……っ…………あ」

右手で遊の縛ってある手を握り、左手はモノに添えながら、遊の中に挿れる。
然程、抵抗のなかった内部は難なく俺を受け入れてくれたから、そのまま付け根まで進める。
ごつ、と少しだけ周囲より固めの子宮口に、先っぽが触れたのを確認したところで、息を吐く。
ゴム越しでも伝わる遊の熱とうねりが気持ち良い。

「は…………あっ」
「…………っ……く」

しばらく、中の感触を楽しんでいると、ある事に気付いた。

「遊」
「……はい?」
「……最近、挿れる時に痛いって言わなくなったな」

初めてセックスしてから、しばらくの間は挿れる時に結構痛がっていた。
最初の時、結構出血もしてたし、慣れるまでキツい思いさせるかと思うと申し訳なさもあったが、そういえば最近は痛いとも言わないし、挿入時に感じていた入り口近くの強ばりも大分無くなった気がする。

「ん……実際、ほとんど痛く、ないです、し。もしかして……気にしてた、んですか」
「こっちは最初から気持ち良かったからな。……慣れたんなら安心した」
「だって……先輩がそうしたんでしょう?」
「違いねぇ」

笑って遊とキスし合うと、繋がっている部分が軽く収縮して、動かしていないのに、そっちまでもが気持ち良い。
今なら、少し激しくしてみても大丈夫そうか。

「なぁ、痛くないなら試してみてくれないか?」
「何を……ですか」
「俺が突くのに合わせて、おまえも俺の方に腰を押しつけるようにして動いてみろ。で、俺が引いたら、おまえも引く。そんな感じで。手ぇ縛ってても腰動かせるだろ?」
「ん……やって、みます」

俺一人が動くだけでなく、遊にも動いて貰いたい。
最初は弱く。
動けそうだと判断出来たところで、少しずつ強めに動いてみる。
動きに合わせてぶつかる性器が、予想していたよりもずっと強い快感を引き出してくる。
無理はしないようにしようと思っていたのに、腰が勝手に動いてしまう。
かなり強い衝撃になっているはずなのに、遊の秘唇はちゃんと俺を受け止めてくれている。

「……く……っ」
「せ……んぱ…………これっ……」

遊も動きを止めない。
ってことは、相当こいつも感じてくれているってことで。

「ああっ、やべぇ、な……凄ぇくる……っ」
「あっ、んんっ! ふあっ!!」

縛ったままの遊の手が、俺の手を指先で軽く引っ掻く。
何か、違うと思ったらこれのせいもあったか。
いつもなら、強い衝撃が来ると俺の身体に回される遊の腕は、縛ってしまっているから、俺に触れないでいる。

「せんぱ……手……」

一瞬、このままでもと思ったが、すぐにこいつが誕生日だったのを思い出して、動きを止めて、縛ってある手を取る。
縛ってあるネクタイの際の肌が、少し赤くなっていた。
ちょっと、手首に跡が残ったかもな。
軽く、その手首にキスを落とす。

「遊。ネクタイ解いたら俺の身体に掴まれ。触ってて欲しい」
「んっ……」

頷いたのを確認して、素早く手首のネクタイを解く。
やっぱりところどころが擦れて赤くなっていたが、解いた途端に遊が俺の背に腕を回す。
俺も遊を抱きかかえて、最後に向けての動きを開始した。
言葉にしなくても、腰のぶつかり合うタイミングはぴったりで、ああ、身体の相性がいいって、こういうのもいうのかと何処かで感じながら、律動を繰り返す。
いや、相性が良いのは、身体だけの話じゃない。

「ダメ……っ、腰……止まらな……っ」
「それで……っ、いい。続けろ……求めろよ……っ!!」

何から何まで。存在の全てが欲しい。
こいつでなければ意味が無い。
俺の何もかも全部をやるから、おまえの全部が欲しい。

「あっ、や、せんぱ……あああっ!」
「………………っ、俺だけを……」

求めろ。
吐き出した熱と、包まれる熱の中で、そんな事を願った。

***

「ケーキ……せめて、冷蔵庫に入れれば良かったですね」

あからさまではないが、がっかりした様子の鹿島が、ムースを口にしながらそんな事を言った。
うかつだった、と自分でも思う。
ついケーキのことは忘れて、セックスになだれ込んでしまったために、セックスの間、そして風呂に入っている間と、常温で放置されていたケーキは保冷剤も完全に融けてしまっていた。
流石に、ケーキに関しては申し訳なさが先立つ。

「悪い。明日買い直してくるわ」
「もう、それはいいんですってば。そういう意味で言ったんじゃないです。生ぬるくても、ちゃんと美味しいですから」
「けどなぁ」
「ネックレスだって貰ったし、気持ち良い思い沢山させて貰ったし。誕生日プレゼントはもう十分です」

さらっとそんな事を口にされて、戸惑った。
……こいつ、自分が俺を煽ることを言ってる自覚ないのかよ。

「……おまえ、もう一度襲われたいのか? わざと煽ってんじゃねぇだろうな」
「え? は? えーと」

ああ、こりゃ自覚ない方か。
鹿島が空になった皿をテーブルに置くと、その手を取って、さっきネクタイで縛った跡のところに唇を押しつける。

「『気持ち良い思い』でいいんだったら、日付変わる前にもう一度させてやれるぞ」
「あ。…………えっと、その、いいです、よ」
「え」

今のいいですよ、は了解の意味でいいんだよな?
遠慮しますの意味じゃないよな?
……俺としては、鹿島が痛い思いをせずにすんで、本当に気持ち良くなってくれているのなら、それこそ何度だってしたいわけで。
確認の意味も含めて、唇を触れていた場所に今度は舌を辿らせる。
一瞬だけ、鹿島の指がぴくりと動いたが止めてきたりはしなかった。
目元も心なしか赤くなっている。

「冗談だった、なんて言わねぇよな?」
「言いませんよ。……その」
「「Trick or Treat」」

ハロウィンの、そしてこいつの誕生日が終わる前にもう一度、と言った台詞は綺麗にハモる。
あまりのタイミングの良さに笑うしかない。
ああ、もう、こんなところがたまんねぇよなぁ。

「今ケーキ食べちゃったから、もうこの家にお菓子の類は、本当に何もありませんね」
「だな。じゃ、もう一度『Trick』といくか」

顔を寄せようと手を伸ばしかけたら、先に鹿島の手に俺の両耳を塞がれた。

「……そっちかよ」

そうだな、お互いに『Trick』を実行するんだもんな。
それでも、一方的にされるのは癪だから、俺も鹿島の耳に手を重ねて、キスをした。

 

色々詰め込んじゃった感がありつつも、耳塞いでのキスが当時好評でニヤリとしました(*´∀`*)
本人としては鹿島くんのメイクを丁寧に落としていく堀先輩が気に入っていたりします。ネクタイ縛りは浪漫♡
堀先輩が大学三年、鹿島くんが大学二年で、付き合うようになってから最初の誕生日という流れ。

 

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