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浪漫学園の人魚姫<月刊少女野崎くん・堀鹿>

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Twitterでのタグによるお題募集から。
浪漫学園の人魚姫と堀鹿をどう絡めるかがちょっと難航しました。

初出:2015/04/16  

文字数:1575文字 

 

「鹿島。おまえ『浪漫学園の人魚姫』って知ってるか?」
「は!?」

部活の帰り道。
いきなり、堀先輩からそんな言葉が出てきてびっくりした。
そう言われている当人を私はよく知っているからだ。

――あいつ、コンクール仕様ってなると、結構見た目化けるのな。他校からは浪漫学園の人魚姫って呼ばれてるらしいぜ。

つい先日。
他校生に告白された御子柴が、その相手に付き合っている人がいるからと断るために、結局は結月に彼女のフリをして貰うことになったんだけど、それについて御子柴がそんな呼ばれ方をされているらしいと教えてくれた。
けど、先輩からその話題が出るのは予想外だ。

「話だけならほんのちらっとは。どうしたんですか?」
「いや、別の高校行ってる弟がさ、何かそんな噂を聞いたことがあるんだと。会話してるのは見たことないけど、口を開いたら物凄く歌が上手い美人が声楽部にいるんだとさ」
「へぇ、そうなんですか」

先輩の口から物凄く歌が上手い美人、なんて言葉が出て、ほんのちょっとだけもやもやした。
……あれ、何だろう、今の。

「あ、ちなみにおまえも結構有名らしいぞ、『浪漫学園の王子様』って。そっちは知ってるけど、本当にイケメンの後輩だって言っておいた」
「ありがとうございます! そこに可愛いも付け加えておいて貰えるともっと嬉し……」
「そこまでは言ってねぇ」

バッサリと断言されてしまうのがちょっと切ない。
いつになったら、先輩の中で私は『可愛い後輩』になれるんだろうか。

「まぁ、人魚姫とやらの方は話でしか知らないから、真偽の程は何とも言えねぇけど、それ聞いて、定番の人魚姫ってまだ演目でやったことなかったよなと思って」
「ああ、そういえばそうですね」
「いっそ、その人魚姫とやらを探して、ミュージカルでやってみるってのは……」
「やめましょうよ!」

ミュージカルなんて、冗談じゃない!
先輩の前で万が一にも歌う事なんて、少なくとも今は全力で避けたい。
まして、結月と歌を比べられたりなんてしたら、それこそ最悪だ。
結月と舞台に立つなんてのは、面白そうではあるけど、それに歌が絡んでくるなら話は別。

「……何だ、珍しいな。おまえがそんな風に演目の候補を否定してくるなんて」
「え、あ、その、人魚姫さんとやらが、劇に出てくれるとも限りませんし、ミュージカルってやっぱり大がかりになっちゃうじゃないですか。準備とかも大変そうですし……」

我ながら歯切れの悪い言い方になってしまう。
けど、せめて、もう少し歌が上手くなるまでは、ミュージカルは保留にしたい。

「ふーん……ま、王子様演じるのはおまえだし、おまえが嫌なら強引にやったりはしねぇけど」
「そ、そうですか」

あー……良かった。
流石にミュージカルなんかになって、先輩に私の歌を聞かせるわけにはいかない。
先輩の言葉に、ほっと胸をなで下ろすと先輩が私に向かってニヤリと笑いかける。

「鹿島」
「何ですか?」
「……安心しろよ。人魚姫だろうが、誰だろうが、この学校の中でおまえより舞台映えするやつなんて、まずいねぇから。おまえが一番だ」

何せ、うちの鹿島は最高に……からな、と語尾の一部、潜められた声が聞こえて耳を疑った。

「は!? え、ちょっと、先輩。今、何て言っ……」
「さて。ちょっと遅くなったしラーメンでも食って帰るか。おまえも一緒にどうだ?」
「ラーメン!? 行きます!」

ん? 何か巧妙にはぐらかされたような気がするのは気のせい?
……いや、でも、今の空耳かなぁ。

――うちの鹿島は最高に可愛いからな。

…………私の願望なのか、本当に先輩がそう言ってくれたのか。
問い質しても、多分先輩は教えてくれない気がしたから、とりあえずは自分の都合の良いように解釈することにして、一緒にラーメン屋さんへと歩き始めた。
出来れば、いつかちゃんと先輩が私に可愛いって言ってくれるのを聞きたい、なんて思いながら。

 

割りとくっついてる堀鹿ばかり書いてる気がするから、私にしては珍しい方向になったかも。
お題募集とかだとこういうことがあるから面白い。

 

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