2015/09/05のフリーワンライ(第61回)から『真夜中の秘密』。
開催日をすっかり忘れていたので、遅刻で夜中にひっそり書いたw
堀鹿未来捏造夫婦設定で晩酌する話。
初出:2015/09/05
文字数:1502文字
「政ちゃーん……子どもたちは全員寝たみたい」
「おう、じゃそろそろいいか」
深夜二時過ぎ。
子ども部屋に様子を見に行っていた遊が、寝室に戻ってきたところで、俺もベッドから身体を起こして、遊と一緒にキッチンへと向かった。
「おつまみ、何か作る?」
「あー、頼むわ」
遊が冷蔵庫から、きのこを数種と調味料等出しているのを横目に、俺は先にグラスを二人分用意し、遊が冷蔵庫の前から離れたところで、冷蔵庫の奥に隠してあるビールとカクテル、そして冷凍庫からは氷を取り出した。
結婚前から二人で晩酌っていうのは時々やっていたし、結婚後もそこそこやってはいたが、少し前から子どもたちが酒に興味を示すようになったので、飲むときはあいつらの目につかないように飲むようになった。
あいつらがちゃんと酒が飲める年齢になるまでは、飲ませるつもりはねぇから、この二人での晩酌はちょっとした夫婦の秘密のようなものになっている。
遊がつまみを作ってくれている間に、俺はグラスに氷を入れながら問いかける。
「先にビールでいいか?」
「はーい」
きのこを炒めている良い匂いが漂うから、余計に腹が減ってきた。
が、そんなにしないうちに出来上がったらしく、俺が氷入りのグラスにビールを注いだタイミングで、遊が出来たつまみを皿に入れて持ってきた。
「じゃ、今週もお疲れ様でした」
「おう、お疲れ」
心持ち声を抑え気味にして、二人で席につき、グラスを合わせて鳴らす。
冷えたビールが、喉を爽快感と共に滑り落ちていく。
やっぱり、大人ならではの至福の一時だよなぁ、これ。
「あー……美味しい。お酒飲めるようになった頃はあんまりビールって好きじゃなかったんだけど、いつの間にか最初の一口がすっごく美味しく感じるようになったなぁ」
「あー、最初の一口目って凄ぇいいよな。何だろうな、これ」
つまみにも手を出しながら、俺も遊の意見に同意する。
きのこをにんにく、ごま油、鷹の爪を使って炒めたつまみが、これまたビールによく合う。
深夜に食い過ぎるのもよくないんだろうが、ぴりっとした辛さが美味くて、つい手が伸び、どんどん皿のつまみがなくなっていく。
「ちょっと、あまり食べ過ぎちゃダメだってば」
「美味いんだから、仕方ねぇだろ。多分足りなくなるから、もう一品何か欲しい」
「こんな時間なのに、もう。ちょっと待って。お豆腐あるから、冷や奴でいい?」
「ああ」
遊が席を立つと、手早く用意してくれて、俺がビールのグラスを飲み干した頃合いで冷や奴も出してくれた。
山形だしの乗った冷や奴は、きのこの炒め物とは違う美味さで、これまた箸が進む。
つくづく、こいつの料理の上手さに感謝だ。
単純に上手いってだけでなく、バランスがいいっていうか、センスがあるんだよな。
味や食感が偏らなくて、食いでがある。
「政ちゃん」
「ん?」
双方の空いたグラスに、今度はカクテルを注ぐと、早くもアルコールで頬を染めつつある遊が、嬉しそうな顔をして笑った。
「子どもたちが独立したら、時間気にしないで飲んだりも出来るだろうけど、私、結構この深夜にこっそり飲む感じが好き」
「そりゃ、奇遇だな。俺もだ」
カクテルを注ぎ終わったところで、何となくもう一度グラスを合わせる。
子どもたちは子どもたちで、勿論大事な家族であるのには違いないけど、最終的には遊とまた二人で過ごして行くことを考えると、こういう夫婦二人きりでの秘密の時間を持っておくって、円満な関係を続けていく為にも必要だって思う。
グラスをテーブルに置いて、席を立ち、向かいに座っている遊に手を伸ばすと、意図を察してくれた遊も椅子から立ち上がって、上半身を寄せ合うようにしながら、テーブル越しにキスを交わした。
露骨なパターンの秘密も考えたけど、ひねりなさすぎだなって思った結果、夫婦での健全な晩酌に。
お酒そこまで好きな方ではないけど、推しカプに家飲みさせるシチュは昔から凄く好きなんだよな……なんだろ。
タグ:月刊少女野崎くん, 堀鹿, サイトのみ, 未来捏造夫婦設定, ワンライ, 500~3000文字, 堀視点, 2015年