『終演と新たな幕開けに』のifルート。いわゆるメリーバッドエンド。
病んでいる感じの堀鹿二人や、無理矢理するような展開が苦手な方はご注意を。
元は2014/11/15のワンライから『縺れた鎖』。
加筆修正して改めました。
初出:2014/11/15
文字数:6809文字
[鹿島Side]
どうして、こういうことになったんだろうか。
ベッドの上で足を絡めながら、相変わらず私の肌のあちこちを貪るように噛んでいく先輩は、少し前から無言でそれを繰り返すだけだ。
空間には二人分の乱れた呼吸が響く。
獰猛な獣を思わせる目が、時折、私の様子を窺うように射貫いてくる。
怒りとも、哀しみとも、その目からは読み取る事が出来ない。
「は……っ、あ、ふっ」
「…………っ」
『秘密の演目』で何度も身体を重ねて、よく知っていたはずの先輩の身体に、どこか違和感を感じてしまう。
私に触れている手は熱いのに、どうしてだか冷ややかさも伝わった。
何かがいつもと違う。
私の全く知らない目をした先輩がいる。
「っ!」
私の左側の鎖骨に先輩が噛みついた。
一瞬だけ鋭い痛みが走るけど、それは直ぐにじわりとした快感に変わる。
噛むというのは、甘噛みじゃない。
皮膚を破って、血が出る程の噛みつき方だ。
胸やお腹は勿論、腕や足もあちこち噛まれて、傷が残り、肌の所々に血がこびりついている。
かろうじて身に付けている制服のシャツブラウスは、もう誤魔化しようのないくらいに汚れていた。
ここから逃げ出そうにも、手首は上の方で纏めてネクタイで縛られてしまっている。
いや、手首だけじゃない。
片方の足首は、鎖がついた足枷を使うことでベッドの足にくくりつけられていた。
さらに言うなら――身体も繋がったままだ。
薬でも使っているのかどうか分からないけど、身体を繋げてから結構な時間が経っているように思う。
最低でも三回は先輩が私の中で達したのを覚えている。
なのに、そのまま私の中に留まっている先輩は、一向に萎える気配さえない。
もう、快感なのか痛みなのかも分からない何かが、先輩が動く度に足の間から身体全体に広がっていくことで、かろうじて意識を保っている。
繋がった場所に目をやると、白く微かに泡立っているものが身体の繋ぎ目を濡らしている。
時折、鼻をつく精液と血と汗のにおいが妙に生々しい。
荒めの呼吸音と水音、ベッドの軋む音も耳の奥に貼り付いて離れない。
意識を手放せてしまえたら、どれほど楽だろうかと思う一方で、そうなったら先輩を失望させてしまうのだろうかという点が気になった。
……こんな風に扱われても、私は先輩を嫌いになれないんだな、と自分に苦笑するしかない。
思考が霞み始めてしまっている頭で、事の始まりを考えていた。
御子柴が他校生に告白されて、どうしても付き合う気にはなれないから、告白を断るためにちょっとだけ彼女のフリをして欲しいと言ってきたのが始まりだった。
御子柴は親友だし、単に彼女のフリだからと特に深く考えもせずに引き受けたのだけど、その事を知った先輩が目の色を変えた。
――ふざけんじゃねぇよ。
部活が終わるや否や、部室の奥にある倉庫に連れ込まれて。
いきなりされたのは、食らいつくようなキス。
唇の端を噛まれた瞬間は、何が起こったのかわからなかった。
続いて、感じた痛みと鋭い目をした先輩に、出会ってから初めての恐怖を感じ、咄嗟に逃げようとしたのが、多分余計に煽ってしまったんだと思う。
私の手首を掴んだ手には力の加減が全然なくて、身体を強く抱き締められた後、みぞおちに鈍い痛みを感じて――気付いたら、ベストは脱がされ、シャツはボタンが引きちぎられて全開になり、スカートと下着、靴下は纏めて脱がされていた上に、この有様になっていた。
――俺はおまえが思っているより、ずっと独占欲が強いんだよ、鹿島。
気付いて早々、私の上に覆い被さるようにのしかかっていた先輩が低い声で笑った。
――知らねぇだろう? 誰かの彼女役とか冗談じゃねぇよ。
それだけ私に告げると、まだあまり濡れてなかった場所に先輩が強引に押し入って来た。
最初にセックスした時と同じくらいの痛みに、身体が硬直してしまったけれど、それは結局最初だけ。
律動が始まると、先輩を覚えている身体はちゃんと濡れて、痛みは遠のいていった。
身体を繋いでいる場所が気持ち良くなり始めたところで、胸元の肌を噛まれて、悲鳴を上げたのも覚えている。
その後、首に手が掛けられて、軽く絞められ、その拍子に先輩が呻いた声も耳に残っていた。
そして。
――他の誰にもやらない。フリだけでもさせたりなんかしない。
――おまえは俺だけのものだ。
こんな目に遭わされているのに、その言葉に感じたのは確かに『嬉しさ』と『喜び』だった。
俺だけのもの、という言葉が、身体の奥深くに刻まれる。
欲望を曝け出して、独占欲を剥き出しにして。
全身で求められているということに、お腹の奥が熱く疼いた。
私だけが誰も知らない先輩を知っている。
何も演じていない、素の先輩。
先輩だけのものになれるのなら、いくらでも傷つけて構いません。
でも、先輩も他の人なんて絶対に見ないで。
私だけのものになって下さい。
私の中を先輩の色で染めて下さい。
離れられなくなるように繋ぎ止めて。
そう返したら、先輩は本当に嬉しそうに笑った。
――おまえに逢ってから、他の女なんてろくに目に入ったことねぇよ。
そんな風に。
そうだった。こうなることを望んだのは、結局私。
気怠さを押し込めて、足枷のついていない方の足を先輩の腰に絡めると、先輩が耳元で言ってくれた。
「おまえは最高の『女』だ。流石は俺の自慢の『女』」
おまえだけが欲しい、と。
快感に足の間が一層潤んでいったのが分かった。
先輩が私の『女』を望むのなら、『王子様』なんてもうどうだっていい。
もっと、先輩を中に下さいとねだって、腰を動かすとようやくいつもの先輩の表情を見た気がした。
顔を寄せてきた先輩の唇の端を噛んだら、先輩が中で震えたのが分かる。
ああ、何て可愛い人なんだろう。
この人の全てが自分のものだと思うと、愛おしさが募る。
私の唇の端にも舌が這わされ、そのまま口内に入って来て舌と舌を絡め合う。
感じた血の味がどちらのものかなんて、些細なことだ。
再び動き出した先輩に動きを合わせて、いつ終わるとも知れない交わりに没頭した。
[堀Side]
鹿島の形のいい足が細かく震える。
膝の裏から尻の方へと向かって撫であげると、小さな悲鳴が上がった。
俺が好きで散々触って、感じさせて来たからか、最初の頃よりも楽しい反応を返すようになった鹿島の足。
その内股には、身体を繋げる前につけた、いくつもの噛み傷とキスマークが散らばっている。
染み一つなかった綺麗な白い肌に、俺がこうしてつけていったのだと思うとたまらない。
噛み傷やキスマークは足だけでなく、腕にも胸にも腹にもつけたし、首筋にも跡を残している。
俺しか見ないような場所も、誰もが見られるような場所もまんべんなく。
強引に鹿島の中に突っ込んだ割には、今やすっかり蕩けた膣内は肌に跡を残す度に優しく震えて俺を包んだ。
「は……っ、あ、ふっ」
「…………っ」
舞台の上で鹿島が演じてきたどんな声よりも、こうして熱を帯びて、切なげに零れる声が好きだ。
俺以外には誰も知らない声だと、考えるだけで興奮する。
二人きりの『秘密の演目』の時にだけ、聞くことが出来る声。
他の誰にも聞かせたりなんかしない。
いや、させやしない。
「っ!」
骨が浮いている鹿島の左側の鎖骨を狙って、容赦なく歯を立てる。
肉が薄い部分だから痛いだろうなと、分かっているけどやめられなかった。
口の中に広がる鹿島の血の味に興奮を煽られる。
俺が噛んだ拍子にまた鹿島の中が締まって、身体を繋げた場所から快感が広がった。
噛みついた場所に傷が出来て、そこに鹿島のシャツブラウスが触れ血で汚れたことに、もっとこいつを汚したいという欲望が抑えられない。
シャツブラウスの袖を軽く捲って、柔らかい二の腕の内側の肌に吸い付きながら、こうなった経緯を思い出す。
何でも、御子柴が他校生に告白されたが、応じられないからと告白を断るために、鹿島が一時的に御子柴の彼女のフリをしようとしたって話だった。
あくまでも一時的な彼女役。
分かっている。
鹿島にとっては御子柴は親友なんだし、そんな相手の頼みなら容易に引き受けるだろうっていう、こいつの性格も分かっている。
それでも、我慢ならなかった。
誰かが耳にした、二人とも背丈近いから、腕を絡ませてもそんなに様になんねーよ、と聞こえた瞬間、ついその場に踏み込んで鹿島の胸ぐらを掴み上げてしまった。
流石にやべぇと気付いて取り繕ったものの、部活が終わって、他の部員が全員いなくなったところで、部室の鍵をかけ、奥の倉庫に連れ込んでキスをした。
柔らかい唇の端に噛みついて、傷をつけたと瞬時に鹿島の顔色が変わったのが分かった。
たちまち怯えを含んだ目が、俺から逃げようとしたところを捕まえて、抱き締めて――一切の遠慮なしに、鹿島のみぞおちに一発入れた。
俺の腕の中であっさり力を失って、崩れ落ちた鹿島を抱えて、ベッドに連れて行って寝かせる。
ベストを剥ぎ取り、ネクタイを解いて、鹿島の手首を縛ると、スカート、下着、靴下を一気に脱がす。
シャツブラウスはボタンを外すのももどかしくなって、一気に引きちぎるようにして前を開けた。
透き通るような白い肌に触っていっても、鹿島が気を失ったままなのをいいことに、片方の足にいつだったかの劇で使った鎖つきの足枷を付け、ベッドの足にもう一方を巻き付けて、外れないようにする。
これで、鹿島が目が覚めても逃げられない。
俺も自分の服をほとんど脱いでから、鹿島に覆い被さり、ちゃんと息をしてるのを確かめてから、鹿島の肌のあちこちに噛みついたり、吸い付いたりして跡を残していく。
白い肌に次々と付いていく跡に、もっと早くこうしておけば良かった、なんて思いながら。
誰が見ても、鹿島が俺のものだと分かるようにしておけば、男つきの女を相手に偽りだろうと彼女役なんてさせないだろう。
鹿島は御子柴を異性として認識してない。
あくまでも親友として接している。
だから、肩を組もうと、腕を組もうと、一向に気にする様子がない。
だが、俺はそれだって気に入らない。
御子柴と背丈が近かろうが、鹿島の身体はちゃんと隅々まで『女』のものだ。
肩を組んだり、腕を組んだりしたら、男よりも華奢な作りをしている身体なのは服の上からだって分かる。
他にもしっとり吸い付くような白い肌。
細いけど腰から尻にかけては綺麗な曲線を描いているし、滑らかな肌触りのすらっとした足も男では有り得ない。
胸にしたってないのは確かだが、かなり敏感だし、綺麗なピンク色の乳首と乳輪だって、ちゃんと女の胸なのを示している。
いくら普段『王子様』を演じてたって、一皮剥けば『女』でしかない。
そして、俺はこいつが演じる『王子様』は最高だと思っているが、『女』の部分だって最高だと思っている。
ただし、後者については誰にも教えてやる気はない。
俺だけが知っていればいい。
互いに決定的な性別の違いを表わしている、性器同士をそっと擦り合わせる。
すっかり興奮状態で臨戦態勢になっている俺のモノとは違って、気を失ったままの鹿島の方はほとんど濡れていないし、押しつけたペニスから感じるクリトリスの感触も、いつもより柔らかい。
ペニスの先っぽで、足の間の溝を辿り、クリトリスを突いて。
クリトリスが刺激で少し固くなってきた、と思ったところで鹿島が目を覚ました。
――……せ、んぱ……い?
まだ、良く状況を把握できていないらしい鹿島は、とろんとした目つきで無邪気に俺に向かって首を傾げる。
その無邪気さが可愛らしくもあり、残酷でもあり。
めちゃくちゃにしてやりたいという欲望を抑えられなくなった。
――俺はおまえが思っているより、ずっと独占欲が強いんだよ、鹿島。
声を潜めて意地の悪い笑いを向けてやると、ようやく気を失う前の流れと、今の状況が分かったのか、鹿島の顔が青ざめた。
――知らねぇだろう? 誰かの彼女役とか冗談じゃねぇよ。
吐き捨てるように言って、大して濡れてなかった鹿島の中に無理矢理突っ込んだ。
――いっ! 痛い、先ぱ……痛いっ……やっ!
こっちでさえ、入れるときに擦れて痛かったくらいだから、当然だ。
濡れてないとこうなるのか、と実感しながら腰を動かす。
最初は強ばっていた膣内が、しばらく動いていると大分こなれて、濡れだし、優しい収縮を始めた。
痛いと訴えていた言葉も消えて、艶めいた吐息が耳に届く。
鹿島の中はしっかりと俺の身体を覚えている。
水音が随分派手になってきたところで、一度動きを止めて、鹿島の胸元を噛んだ。
再び血の味が口の中に絡んで、鹿島が悲鳴を上げる。
俺が与えた痛みで、こんな悲鳴を上げたんだと嬉しくなった。
顔を上げると、潤んだ青い目がどうして、と問いかけているように見えた。
だから、教えてやることにする。
鹿島の首に手を掛けて、軽く絞めると、繋がった場所も締まって、快感が背を駆け抜けた。
首を絞めると下の口も締まるってマジなんだな。
首から手を離して、その手で顔を両側から捉えて告げた。
――他の誰にもやらない。フリだけでもさせたりなんかしない。
――おまえは俺だけのものだ。
その瞬間に鹿島が見せた顔は、間違いなく幸せな顔をした『女』の表情。
身体を繋げた部分もまるで喜びに戦慄いたかのように強く震えて――耐えきれずに、鹿島の中に熱をぶちまけた。
それから、どれだけ時間が経ったのかはよく分からない。
すっかり日が落ちただろうってのは、かろうじて倉庫の上部にある小窓から確認出来るが、わざわざスマホを取り出して時間を確認する気にもなれなかった。
自分でも不思議なものだと思う。
鹿島の中が気持ち良すぎて、離れられない。
いい加減飽きても良さそうなものなのに、そんな気にはなれなかった。
確か、三、四回はイッたはずだが、賢者タイムって何処行ったよという勢いで、俺のモノは萎える気配が全然感じられない。
「ふ……あ…………っ……」
ちょっと動くだけでも水音が大きく響く。
繋がった部分を見ると二人分の体液が溢れ出て、互いの毛の部分にも絡みついている。
ちょっと身体を引いて、俺を受け入れている鹿島の秘唇を見ると、
すっかり充血して赤くなってはいるものの、痛そうな感じではなかった。
ひだに沿うように指で刺激してやると、鹿島の背が跳ねる。
「う、あ、せんぱ……っ。はなれ、ちゃ、や……っ」
「……離れねぇよ」
「んんっ!」
指を離して、再び、一番奥に叩きつけるように突き上げる。
手前の方と奥の方と、両方からそれぞれ濁った水音がした。
繋がったままだから、鹿島の中は見られないけど、ピンクの肉が精液で白くドロドロに染まっていたりするんだろうかと考えると、気分が昂揚する。
……離れたりなんかしねぇよ。
おまえだって言っただろう?
――先輩だけのものになれるのなら、いくらでも傷つけて構いません。
――でも、先輩も他の人なんて絶対に見ないで。
こいつにも、そんな嫉妬の感情があったのかと、驚いて嬉しくなった。
一定の線引きはしているらしいとはいえ、常に上手く立ち振る舞い、来るもの拒まずでお姫様たちの相手をこなしていたこいつが見せた、そんな一面が愛おしくて堪らなくなった。
――私だけのものになって下さい。
――私の中を先輩の色で染めて下さい。
――離れられなくなるように繋ぎ止めて。
勿論、拒む選択肢なんてない。
おまえは俺だけのもので、俺はおまえだけのもの。
求めて、求められて。
曝け出して、受け止められる。
二人でいられるなら、他の何もかもがどうでもよくなった気がした。
実際、鹿島に逢ってから、他の女なんてろくに意識してなかったことを今更ながらに実感する。
不意に、鎖の動く音がしたかと思うと、鹿島が足枷をつけていない方の足を俺の腰に絡めた。
足枷のつけてある方の足も、出来るだけ俺の身体に寄り添わせている。
そんな仕草が可愛くて、鹿島の耳元でこいつが喜んでくれるだろう言葉を囁く。
「おまえは最高の『女』だ。流石は俺の自慢の『女』。……おまえだけが欲しい」
その一言で、鹿島が一層蕩けた顔になり、繋がった部分に潤みが増した。
温かく濡れた場所が、また快感の頂きへと押し上げる。
軽く揺するように動いて、鹿島に顔を寄せると、鹿島の方から唇を重ねてきて――俺の唇の端を噛んだ。
その瞬間、流れ込んできた快感には逆らわずに、また鹿島の中に熱を放つ。
ただ、熱を解き放ってもまだ足りない。まだ飢えている。
どこまでも貪欲に鹿島が欲しい。
揃いになった唇の端の傷。
鹿島の唇の端に舌を這わせて、傷を舐めたあと、そのままの勢いで鹿島の口の中に舌を入れる。
舌を絡めると血の味がした。
どっちの傷からの血かは分からないが、まぁそれもどうでもいい。
ここには、何せ二人しかいない。
鹿島の中を擦り始めると、鹿島も俺の動きに合わせて腰を揺する。
また、二人で快感を共有する行動に身を委ねた。
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