『Cool&Hot』の後日談的な話。いちゃいちゃ後の一幕。
初出:2015/06/17(多分)
文字数:1398文字
自分が『女』だってことは物心ついた時点でちゃんと知っていた。
父様に拾われた時点で、それが分からないほどには幼くなかったけど、かといって、『男』と周囲には言っておけと言われた時にも、特に疑問も持たずに受け入れた。
父様にとって都合がいいなら、それで構わないと思ったし、父様の傍にいられるなら性別なんてどっちでも良かったからだ。
ただ、自分の身体が『女』なんだと強く意識したのは、私に初潮が訪れた時。
自分の股間から流れる血に、何か悪い病気なのかと父様に尋ねたら、慌てた父様がミヤコ姐のところに私を連れて行ってくれた。
あんなに慌てた父様は初めて見たってくらいの勢いだったなぁ。
私が父様を押し倒した時よりも慌てていたんじゃないかって気がする。
――なるほど、あなた女の子だったのね、カシマ。……おめでとう。これはね、あなたの身体が赤ちゃんを産めるようになったって印なのよ。
――赤ちゃん!? 私にも産めるの?
――ええ。男性と子どもを作ったらね。
――男性……父様でも?
――そりゃあ、ホリとでも作れるでしょうけど……一般的には親子では作らないわねぇ。
ミヤコ姐は少し困ったような顔はしてたけど、私の中には父様とでも子どもは作れるんだってことは深く刻み込まれた。
そして、あれから数年。
父様――ホリと子どもを作るような行為をするようになって、今夜もホリは私の隣で眠っている。
ホリとこんな関係になれたのは嬉しい。
もし、子どもを作るのなら、他の誰でもなくこの人がいいって思っていた。
ホリに拾われたあの時から、私の世界はホリが常に中心にいたし、いつまでも、それこそ死ぬ時まで一緒にいたいと願っていたから、こうしていられるのは幸せだ。
まだ、私達に子どもは出来ていないけど、いつか出来ればもっと幸せだろうな。
――命を奪う仕事をしている以上、いつか奪われる可能性もあることは覚悟しているし、そんな立場で子どもを軽率に持って良いとは思えない。……が、子どもってのは授かり物とも言うからな。子どもが出来たら、それはそれでありってことなんだろう。
ホリも私も、生みの親の記憶はほとんどない。
血の繋がりはなくても、ホリにとってはケン爺様が親だし、私にとってはホリが親で、良かったって思っている。
……思っているけど、自分たちの血の繋がった子どもがいたら、どうなんだろうとも同時に考えてしまうのも止められない。
ホリとの子どもなんて、きっと可愛くて仕方がないだろうって思うから。
「……どうした? 眠れねぇのか? どっか痛むのか?」
色々とホリとの子どもについて想像を巡らせていたところで、ふいに声を掛けられて我に返った。
少し心配そうな顔をしたホリがいつの間にか目を覚ましていて、私をじっと見ていた。
「大丈夫です。少し考え事をしていただけなんで」
「考え事?」
「……ホリに似た子ども出来たら、凄く可愛いだろうなって」
「…………俺はおまえに似た子どもが欲しいけどな、どうせなら」
ホリが笑いながら私の方に手を伸ばしてきたから、そのまま引き寄せられるのに身を任せる。
「明日、仕事の下見に行くんだから、もう寝とけ。子守唄でも歌ってやろうか?」
「あ、そういえば、昔よく聴かせてくれましたね、父様。……久し振りに聴きたいです」
「……一曲だけだぞ」
そう言いながら、優しい声で歌い始めた子守唄に聞き入りつつ、いつかこれを子どもと一緒に聴けますようにと願いながら目を閉じた。
多分、将来的にはカシマが(音痴で)子どもに子守唄を聴かせられない分、ホリが色々歌ってくれると思う、と当時書いてたんだけど、多分ホリは音痴だからって意に介さず歌わすな……w
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