くっつきそうな堀鹿と鹿島くんに対して御子柴が一方通行恋慕な話。
2014/12/20のワンライから『今夜だけは君を』で、もう一つ考えていたネタの方。
初出:2014/12/21
文字数:1033文字
「御子柴、腕離して」
「嫌だ」
後ろから、鹿島を抱きかかえていると困惑が伝わった。
でも、無理に振りほどいたりしねぇのをいいことに、腕は離さない。
だって、この腕を離したら、こいつは堀先輩のとこに行ってしまう。
鹿島から堀先輩への好意なんて、昔からあからさまだったし、堀先輩から鹿島への好意も端から見ていたら分かりやすかった。
が、その割りには当の本人達は微妙なすれ違いが続いていて、この二人がくっついていなかったところに安心もしていた。
これなら、まだ俺にもチャンスはあるって、そう思っていたんだ。
堀先輩が卒業して、二人が会う機会はぐんと減った。
鹿島とクラスが一緒だってのもあるけど、俺と過ごしている時間がぐんと増えて、俺の方が鹿島との距離が近づいたなんて思ったりもした。
さらに大学も俺たちは一緒のところになったし、ずっとこのままいられるような気がしていたんだ。
なのに、今日。あっさりとそんな想いは覆された。
――あのね、御子柴。先輩を来週のクリスマスに誘ったらいいって言って貰えたよ!
鹿島のこんな輝くような笑顔を久しぶりにみたと思った瞬間に、結局堀先輩には勝てないのかということに打ちのめされた。
俺の中では、鹿島との距離は堀先輩より近いなんて、勝手に思っていたけど、鹿島の中では、堀先輩との距離なんて、俺よりも近いままだったんだ。
「どうしたのさ、御子柴。……らしくないじゃん」
「そんなことねぇよ」
鹿島が俺の頭に手を伸ばして、撫でてきてくれた。
その手が心地良くて、益々腕を離したくない。
このまま、鹿島を行かせたくない。
先輩へのクリスマスプレゼント何にしようかなぁ、なんて顔を輝かせて言っているのを聞くのもキツいけど、行かせるのはもっとキツい。
間隔が空いたからっていうだけじゃなくて、今までのとは何か違うと直感が告げていた。
多分、今。堀先輩と鹿島が会ったら、一気に距離が縮まる予感がしている。
そして、きっと予感は的中するだろう。
嫌なくらいに、こんな時のカンは外れてくれない。
……こんなことなら、もっと早く告げておけば良かった。
言えなかったのは、俺が鹿島との関係を壊してしまうのが怖かったからだ。
今のままでも心地良くて、それでいいなんて思っていた自分の意気地のなさを悔やみながら、せめて今夜だけは側にいてくれと。
理由も何も告げずにそれだけ言うと、仕方ないなぁと応じてくれた鹿島が身体の力を抜いた。
哀しいくらいに警戒されてねぇなと切なくなったが、それをいいことに腕の力を籠めた。
裏話